古事記 下つ巻 現代語訳 四十四
古事記 下つ巻
葛城の山の大猪
書き下し文
また、一時、天皇葛城の山の上に登り幸でましき。尓して大き猪出づ。天皇鳴鏑を以ち其の猪を射たまふ時に、其の猪怒りて、宇多岐依り來。故天皇、其の宇多岐を畏み、榛の上に登り坐せり。尓して歌ひ曰りたまはく、やすみしし 我が大君の遊ばしし 猪の病み猪の うたき畏み我が逃げ登りし あり丘の榛の木の枝
現代語訳
また、一時(あるとき)、天皇は葛城の山の上に登り幸(い)でました。尓して、大きい猪が出(い)でました。天皇は、鳴鏑(なるかぶら)を以ち、その猪を射ちになられた時に、その猪は怒って、宇多岐(うたき)して依り來ました。故、天皇は、その宇多岐を畏(かしこ)み、榛(はりのき)の上に登り坐(いま)した。尓して、歌い、仰せになられて、
やすみしし 我が大君の
遊ばしし 猪の
病み猪の うたき畏み
我が逃げ登りし あり丘の
榛の木の枝
・鳴鏑(なるかぶら)
先のほうに鏑をつけ、先端に鏃(やじり)をつけた矢。飛ぶ時に鏑の穴から空気がはいって大きな音響を発する。鏑矢。鳴矢。なるかぶら。めいてき
・宇多岐(うたき)
怒ってうなること。また、その声
・榛(はりのき)
カバノキ科ハンノキ属の落葉高木。水辺を好み、低地の湿地や水田のあぜなどに見られ、早春に尾状に垂れ下がった花をつける。古名を榛(はり)。
・やすみしし
国のすみずみまで知らす(治める)意、または安らかに知ろしめす意から、「わが大君」「わご大君」にかかる枕詞
現代語訳(ゆる~っと訳)
また、ある時、雄略天皇は葛城の山の上に登って行きました。
すると、大きい猪が現れでました。
天皇は、鏑矢でその猪を射ちになられた時に、その猪は怒って、唸り声をあげて向かってきました。
それで、天皇は、その唸り声をあげて向かってくる猪を恐れて、ハンノキの上に登っていきました。
そこで、歌って、
(国の隅々まで統治する)
我が大君が
狩をした
猪が
傷つき病んだ猪が
唸り声をあげて向かってくるのが恐ろしくて
私が逃げて登った
あの丘の
榛の木の枝よ
続きます。
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