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リートリンの覚書

古事記 中つ巻 現代語訳 九十四


古事記 中つ巻 現代語訳 九十四


古事記 中つ巻

大山守命の死


書き下し文


 是に河の辺に伏し隠れたる兵、彼廂此廂、一時共に興り、矢刺して流す。故訶和羅前に到りて沈み入る。故鉤を以ち、其の沈める処を探れば、其の衣の中の甲に繋かりて、訶和羅と鳴る。故其地を号けて訶和羅の前と謂ふなり。尓して其の骨を掛き出だす時に、弟王、歌ひ曰りたまはく、 

ちはや人 宇治の渡に
渡り瀬に 立てる 梓弓檀
い伐らむと 心は思へど
い取らむと 心は思へど
本方は 君を思ひ出
末方は 妹を思ひ出
いらなけく そこに思ひ出
愛しけく ここに思ひ出
い伐らずそ来る 梓弓檀 

 故其の大山守命の骨は、那良山に葬る。是の大山守命は、土形君、幣岐君、榛原君等が祖。



現代語訳


 ここに河の辺に伏(ふ)せて隠れていた兵が、彼廂(そなた)此廂(こなた)から、一時共(もろとも)に興(お)り、矢を刺して流しました。故、訶和羅前(かわらのさき)に到って沈み入りました。故、鉤(かぎ)を以ち、その沈んだ処を探れば、その衣の中の甲(よろい)が繋かり、訶和羅と鳴りました。故に、其地(そこ)を号(なづ)けて訶和羅前と謂います。尓して、その骨(かばね)を掛(か)き出だす時に、弟王が、歌い、仰せになられて、 

ちはや人 宇治の渡に
渡り瀬に 立てる 梓弓(あずさゆみ)檀(まゆみ)
い伐らむと 心は思へど
い取らむと 心は思へど
本方(もとへ)は 君を思ひ出
末方(すゑへ)は 妹を思ひ出
いらなけく そこに思ひ出
愛しけく ここに思ひ出
い伐らずそ来る 梓弓檀 

 故、その大山守命(おおやまもりのみこと)の骨は、那良山(ならやま)に葬(はぶ)りました。この大山守命は、土形君(ひじかたのきみ)、幣岐君(へきのきみ)、榛原君(はりはらのきみ)等が祖。



・訶和羅前(かわらのさき)
京都府京田辺市河原里には古戦場跡を伝える石碑がある
・鉤(かぎ)
先の曲がった物をいう
・ちはや人
宇治にかかる枕詞
・梓弓(あずさゆみ)
梓の木で作った弓
・檀(まゆみ)
マユミの木
・興(おこ)る
大勢の人が集団をなして立ち上がる。大挙する
・苛く(いらなけく)
心痛く。いたましく
・那良山(ならやま)
奈良県奈良市法蓮町にある境目谷古墳


現代語訳(ゆる~っと訳)


 すると、川辺に伏せて隠れていた弟・宇遅能和紀郎子の兵士が、あちらこちらから、一斉に立ち上がり、矢を撃ち、大山守命を流しました。

そして、流された大山守命は、訶和羅前まで流され、そして、沈んでしまいました。

そこで、先の曲がった棒で沈んだ所を探してみると、大山守命の衣の中の鎧が引っかかり、カワラと鳴りました。こういうわけで、その土地を名付けて訶和羅前といいます。

そして、その遺体を引き上げた時に、弟王が、歌って、 

(勢いが激しい)
宇治の渡に
渡し場の岸辺に
生えている
(梓弓)檀の木
切ってしまおうと
心では思うけれども
取ってしまおうと
心では思うけれども
根元の方を見ては
君を思い出し
木の先端を見ては
妹を思い出す
いたましく
そこで思い出す
愛おしいことを
ここに思い出す
切らずに来た
(梓弓)檀の木 

 そして、大山守命の遺体は、那良山に葬りました。この大山守命は、土形君、幣岐君、榛原君たちの祖先です。



続きます。

読んでいただき
ありがとうございました。







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