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歴史に残す!映画「クライマーズ・ハイ」2009-01-13

2016-10-25 | 本・映画・ドラマのレビュー&気になる作品

歴史に残す!
映画「クライマーズ・ハイ」
2009-01-13
堤真一さんへのインタビューはここから



映画「クライマーズ・ハイ」予告編




1985年8月12日、群馬県御巣鷹山にJAL123便が墜落、
死者520人の大惨事が起こった。
前橋にある北関東新聞社では、白河社長の鶴の一声により、
一匹狼の遊軍記者・悠木和雅が全権デスクに任命される。
そして未曽有の大事故を報道する紙面作り―闘いの日々が幕を開けた。
さっそく悠木は県警キャップの佐山らを事故現場へ向かわせる。
そんな時、販売部の同僚で無二の親友・安西がクモ膜下出血で
倒れたとの知らせが届く…。

事故当時、地元紙の社会部記者として取材に奔走した経験を持つ
作家・横山秀夫(「半落ち」など)が、17年の時をかけて書き上げた
同名小説を映画化。確固たる信念を持ち、冷静沈着に、時に激昂しながら
報道人としての使命感で任務を遂行していく主人公を堤真一が好演、
脇を固める俳優たちの報道人“なりきり”ぶりも注目だ。
混乱する現場、苛立ちから感情を昂らせる記者とその上司たち、
そして加熱する報道合戦を臨場感あふれる映像で一気に見せる。
登場人物の緊張や感情の機微をスリリングに描き出したのは、
『突入せよ!「あさま山荘」事件』の原田眞人監督。
セリフのぶつかり合い、めまぐるしいカット割―
原田監督持ち前の集団シーンは見ものだ。   (映画生活)


日本アカデミー賞までにどうしても観たかった映画
「クライマーズハイ」をやっと観ました。

なんていうんだろう、圧巻でした、
そうとしか言いようのない映画です。

私が特に印象に残っているのは、
苦心して現場に上った佐山(堺雅人りん♪)ともひとりの記者の、
第一報の現場雑感が締め切りに間に合わず使ってもらえないところ。
悠木(堤真一)が改めて紙面を用意するからと書かせた雑感に、
自衛隊員が少女の遺体を抱え、見つからない片方の腕をさがしている・・
その描写がありました。
突き抜けるように青い空と白い雲と少女を抱えた自衛隊員が無音で画面に刻まれ、
その雑感を読み進める悠木の周囲は殺伐とした熱気と怒号と音に満ちていました。
新聞社から音が消える日はないのだろうなと、ふと、思ったのです。

新聞社にはきなくさい暗部があり、そして社長はひとくせもふたくせもある
人物であり、山崎努氏が好演されていました。
何十人もの役者さんがひとつのカチンコでいっせいに演技を始める、
その瞬間はすごかっただろうと思います。

社会部部長である遠藤憲一さんと堤真一さんの議論は沸騰して、
ものすごい迫力があります。
映画化の前には岸辺一徳さんと佐藤浩市さんが歴史に残る名演技を
NHKドラマでなさり、話題になったそうですが、
新聞社のなかの、イデオロギーやニーズやプライドを賭けた議論は
怒号にしか聞こえないやり取りのなかでも、圧倒的な白熱したリアリティーを
もって、観るものに迫りました。

あの、凄まじい日航機事故からの1週間を、遺族のワンショットも入れず
描ききった故に、もうひとつの視線というものを可能にしたような気がします。
こういう映画で描かれることがなければ、
ともすれば私たちは遺族側にたった目線しか持ち得ないからです。
そこではどんなことが起こっていたのか、遺体のまわりではなくて、
あの墜落現場を取り囲む世界として。

それぞれの人間が新聞社のなかに張り付いている状況で、しっかりと
描き分けられていました。
悠木の親子関係にまつわる話が描かれており、最後の場面もそのことを
結ぶかたちで終わっていますが、その一点については論議のあるところ
かもしれません。ただ、新聞記者の、個としての存在を浮かび上がらせる
ためには、しかたなかったのではないか、その程度にうけとめました。

堺雅人りん♪が工夫したと言う、小銭をちゃらちゃら言わせる神経質な
くせ、あれはたしかにいらつきました(笑)
彼が冷静でいるときと、怒りを爆発させるときの対比が素晴らしくはっきり
していて、堤真一さんひとりでは支えきれなかったかもしれない、
大きな大きな主題を、側面から見事にアシストしておられたと思います。

もちろん、堤真一さんの熱演、名演は見事というほかありません。
主演男優賞をすべて獲得してもらいたいくらいです。
でも、≪おくりびと≫を観ていないので、
あ、それから松山ケンイチくんの主演男優としての見事さもあるので、
それはやっぱり発言を撤回します(すみません・笑)



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10 コメント

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伝える映画 (アオイ)
2009-01-13 13:09:26
とっても価値ある作品の一つだと思います。
緊迫感が伝わり、まるでドキュメンタリーを観ているような気がしました。映画で愛の夢を見るのもコメディーで疲れた日常から離れ思い切り笑い、心を楽にさせるのもとっても大事ですが自分の身にふりかかる可能性がある現実物を味わうのも時には心構えとして必要でないかと思えます。
社長を初めメインの役者さんたちがいいですね^^実力者勢揃い。地方新聞社の雰囲気見事に出てました^^重い映画ですが見ていて仕事しているな~と気持ちよく感じました(東京のメイン局,もう少しやわらかいですが^^;災害時は映画のような雰囲気になるのかな?)

悲しい惨劇の中に伝える者の使命感と組織人としての役割やしがらみ中で戦った彼らの知られざるもう一つの真実を伝えてくれた監督に感謝します。本当にいい映画でした。
樹さん^^とりあげて下さり有難うございます
Unknown (まろうさぎ)
2009-01-13 18:05:25
確かに去年は(松山さん出演映画以外では)「クライマーズ・ハイ」と「おくりびと」でした。あ、「アフター・スクール」も。

「クライマーズ・ハイ」は原作も素晴らしいですが、より立体的になって、迫力が出て、堺さんのひじょうにキリっとした面が見られて
映画化されて成功したと思います。
2度目です (ホワイトネイル)
2009-01-13 22:15:44
こんばんは。
前回お邪魔したときは
慣れずにお手数おかけして
すみませんでした。

「クライマーズ・ハイ」は
原作もTVドラマも大好きなんですが
映画もそれを期待を上回るくらい
素晴らしい作品だったと思います。

佐山と悠木のやりとりは圧巻でした。
堺さんの目が凄かったです。
TVでは佐山が大森南朋さんでしたね。

松山くんにもいつか
佐山のように命を賭して
仕事に向う大人の熱い男を
演じてもらいたいものです。

樹さん
いつも心をわしづかみにされるような
素敵な記事をありがとうございます。

またお邪魔させていただきます。
Unknown (うらら)
2009-01-13 23:15:35
樹さん、こんばんは☆

新聞は毎日手にとって読んでるのに、
それが作られる過程は私が全く知らない世界で、
その勢いに終始圧倒されながら観た作品でした。
堤慎一さんや堺雅人さん演じる記者たちが、
自分の仕事に情熱と誇りを持って取り組む姿に惚れ惚れしました♪
新聞記者に限らずですが、真剣に仕事に打ち込む姿ってカッコイイですよね!

私もホワイトネイルさんと同じく、
いつか松山くんにもこういう作品に出てほしいなと思います☆
アオイさんへ ()
2009-01-14 00:09:54
こんばんは。

ようやく観ることができました。
新聞社という過酷な職場を、垣間見た気がしましたね。
本当に自分が新聞社の喧騒に放り込まれたような気がしました。
アオイさんはお立場上、リアルにご存知の部分も多かったかと思いますが、
どうでしょう、現実と遜色はなかったでしょうか。

我々が護らなければならないと考えるもの、
新聞社が護らなければならないと考えるもの、
それは嫉妬とか見栄とかプライドもあって、
新聞社が聖域ではないということも、
今更ながらに再確認した気がします。
にんげんが関わる場所に、聖域など求めるのが愚行なのかもしれませんね。

そういう意味でも、そしてそういうことをこえて、
悠木や佐山があそこにはいるんだということを信じさせてくれる、
素晴らしい映画でしたね。
堤さんや堺さんの熱演があったればこそ、
いえ、あまたの役者さんたちもですね・・
彼らの熱演があったればこその名作でした。
後の世にきちんと伝えてゆきたいですね。
まろうさぎさんへ ()
2009-01-14 00:18:00
こんばんは。

今日、先輩とこの映画について話していたのですが、
何が印象的だったかと考えて、
ふたりで
「チェック、ダブルチェック!」でした。
私たちの場合は仕事のミスを防ぐため、
だったのですが(笑)
悠木の場合はスクープを出すか、出さないかの
最終チェックです。
チェックののち、記事を出さずにやりすごす無念、
堤さんのひいた演技に圧倒されました。
そして、堺さんの押しの演技にも。

この映画はやはり、このふたりの存在感でぐいぐいひっぱりますね。
もちろん、大部屋のように詰めていらした俳優さんがたの
熱演が、
まろうさぎさんの言われるように、
立体化を際立たせ、迫力あるものにしたのだと思います。
ホワイトネイルさんへ ()
2009-01-14 06:33:31
おはようございます。
2回目ですか、そんなこと、
数え切れないくらい、
遊びに来てくださいね^^
よろしくです。

わあ、原作を読んで、NHKドラマもごらんになったのですか?
それぞれ味わい深かったことでしょうね。
歴史に残る名ドラマだったと、
映画の解説にもありましたよ。
そのドラマに拮抗する出来と思えるでしょうか?
あるいは映画のほうが、丹念にひとと時間と空間を使えて
より重層的になっているかもしれませんね。

>映画もそれを期待を上回るくらい
素晴らしい作品だったと思います。

おお、やっぱりそうですか。
でも、ホワイトネイルさんは比較できて素晴らしいです。
この主題をしっかりと受け止めていらっしゃるからですね。

>松山くんにもいつか
佐山のように命を賭して
仕事に向う大人の熱い男を
演じてもらいたいものです。

松山くんはいつも期待を軽々超える、
素晴らしい演技で圧倒してくれるから、
骨太のドラマは楽しみですよね。
社会派の映画にも出てほしいです。
共演者にはどなたを希望なさいますか?

うららさんへ ()
2009-01-14 07:08:52
おはようございます。

うららさんがいち早くこの映画のレビューをブログに書いてくださって、
見たいなあとずっと思っていたんです。
やっとこさ、見ました。

うららさんが言われるように、
ほんとに新聞社の内情なんかわからないですよね。
悠木が傷つき、怒りながらも、上司に掛け合い、
部下のために奔走する姿に、
なんだろう、真剣に働く一瞬一瞬を心に刻まれた気がしました。

>新聞記者に限らずですが、真剣に仕事に打ち込む姿ってカッコイイですよね!

本当にそうですよね。必死になるひとほど、まわりのひとを
どうこう非難したり中傷したりしないものだと、
教えられた気がしました。
堤さん、堺さんに加えて、山崎努さんもさすがの存在感でしたね。

私もうららさんやホワイトネイルさんのように、
松山くんに、こういう社会派作品に出てもらいたいと思います。
なんかその日が早い気がするんですよね、
自分がしたことのない役を
選んでいく松山くんだから・・。
楽しみですね。





Unknown (ホワイトネイル)
2009-01-14 23:45:51
こんばんは。
またまたお邪魔します。

共演者の希望は多々ありますが
渡辺謙さんとの共演はぜひみてみたいです。
松山くんの若さをガッツリ受け止めてくれそうです。

前にどなたか書かれていたと思うんですが
「沈まぬ太陽」はスケジュール的に
難しいですかね。

でも今は「銭ゲバ」「ウルミラ」「カムイ」の
波状攻撃に息も絶え絶えなので
もうちょっと先でもいいかもしれません。
ホワイトネイルさんへ ()
2009-01-15 21:35:36
こんばんは。

再訪感謝です、ようお越し~♪

渡辺謙さん、いいですよね。
池袋ウエストゲートパークで、ひとり、
大人としての存在感を放っていらっしゃいました。
もう7,8年前くらいのドラマですかね?
すごい贅沢なドラマだったですね。

沈まぬ太陽、主演なさるんですよね。
クライマーズハイでは描かれなかった、
遺族との接触・・きついでしょうね。
今年からかかるのでしょうか、あの作品?
忘れちゃった、ひええ。

でも渡辺謙さんとだったら、時代劇もいいですね。
すっごい経験になるでしょうね、
そうそう、ホワイトネイルさんが言われるように、
もうちょっと先でも楽しみですね!!

個人的にはCMだけじゃなくて、映画でも堤真一さんと絡んでほしいな。

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