恒川さんファンなのに、2年前に本作、去年「真夜中のたずねびと」を出していたことを知らずにいました。
本作「白昼夢の森の少女」は過去に発表された短編を集めた単行本とのこと。
昔の恒川さんらしい味わいの内容もあって嬉しくなりました。4つ★
あとがきに、どういう趣旨で依頼を受けたのか?がそれぞれ書かれているので、なるほどー!だからこういう内容なんだなーと解って面白かったです。
私がこの中で面白かったのは、タイトル作と、「平成最後のおとしあな」と「布団窟」です。
★注意 以下、完全ネタバレであらすじ・感想を書いています★
「古入道きたりて」2014
和菓子のアンソロジーというテーマだったそうで、だからとっても美味しそうな「おはぎ」が出て来るんだなーと。
戦地で知り合った男(その後死んでしまったと思われます)から聞いた、かつて男が体験した山中で一人暮らしていたおばあさんの処に泊めてもらった時に出た美味しい食事の話。
無事日本に帰れたらそこを訪ねて行こうと思っていた。
「焼け野原コンティニュー」2013
マダさんは記憶を失っては何度も蘇生する男。世界が何かで突然ダメージを受けて崩壊した世界にいる。
「白昼夢の森の少女」2013
14歳の時に植物に侵食された。同じ様に植物に浸食された人間同士は意識や感情等を共有できる。
緑人になると食事も排泄もなく、働かなくても良いし痛みもなく、ずっとそこでまったり生き続けられるということで志願する人もいて、そこに殺人事件を起こした男性が自ら浸食されにやって来る。
最後の方で火をつけられ、沢山の人で森化した9割部分が焼けてしまうが、主人公は運よく焼けずに残り、残った部分はまた活性化し、150年もが過ぎて・・・
「銀の船」2012
最初にその船を目撃したのは小2の時だった。その後、中1でイジメに遭い不登校になり、サマープログラムで親しくなった札幌出身のまっさん。彼女もその船を見た事があるという。
学校に戻り一般的な生活を送っていたが、望まぬ妊娠をしてしまい途方に暮れていた時、船に乗ってしまう。
船が見える人は限られていて、それに乗ると不死で年も取らないが、一旦地上に降りると形が変わる事も有り、そのままの人間の姿で生活できるかどうかも解らないし、時代や場所を前もって選ぶ事は出来ないので、ほとんど自殺みたいな風に思われている。
彼女はそこで知り合った男と結婚するも破綻し、その後男は先にどこかで降り、そして彼女も結局降りる事にした。時代は2999年でスコットランドだった。
「海辺の別荘で」2010
とても短い短編。自分は椰子の実だという女性。生まれ変わり。
「オレンジボール」2009 ホームレスの人が配るBIG ISSUEという薄い雑誌に掲載された
こちらも生まれ変わりの短編。毬になってしまった僕は、学校で蹴られたり乱暴に扱われるのが嫌だったが、とある眼鏡の少女に拾われ、彼女の部屋に5年間飾られたが、一人暮らしをする際に捨てられる。そこから自発的に転がり、どこかへまた行く処で終わっています。
「傀儡の路地」2017
ドールジェンヌという人形を持つ謎の女のお告げを聞くと、その行動を取ってしまう・・・。
最初は野津さんが少し遠い処で散歩している最中、偶然通りかかった家で、何やら事件が起こったらしく・・その犯人を好奇心で尾行して、香川という男だと突き止める。彼にmailを送り、なんでそういう事をしてしまったのか?を聞くと、ドールジェンヌのせいだと言っていた。(その時はそれが何を意味する言葉なのかが解らなかった)。 野津さんが警察に間違って捕まるも、その後香川が自首して開放される。
野津さんはネットでドールジェンヌ被害の会を作り、同胞を募り、集まって情報交換していたら、彼女が現れて一騒動が起きる。
それから12年が経ち、あれから彼女は野津さんの前に現れる事はなかったし、仲間の面々も何故か記憶がなくなっていた。
「平成最後のおとしあな」2018 雑誌幽
最初変な電話に真面目に付き合ってあげてるのが、なんで?って思っていたら、最後まで行くとオチがあって、凄く面白かった!
改めて、平成ってどういう時代だったのか?を考察するのも、なるほどーと思ったし。
わたしは、元夫の不倫を調査した経験から、友人から尾行や調査を請け負う事をしていた。今回ミッコから頼まれ、植野という男を調べる事になった。長野のとある家で大金を隠しているかもしれない事を突き止め、その家に入れたものの、ゴキブリホイホイの様に入ったら最後、出られない仕掛けに捕まってしまう。そこにかかってきた電話だったのでした。
最後、なんとか大音声で助けを呼んで脱出を試みる処で終わっていたけど、あの後彼女はどうなったのかな・・
布団窟」2012 ダヴィンチ
なんと!実体験とのこと。
80年頃のゲームセンター、大人びてみえた同級生、その子だと思ってついて行った謎の場所。その子に似た別の少年だった! 布団にハマって出られなくなって恐怖・・・。とても面白いお話でした。
これ読んで、私も自分の凄く昔の忘れていた記憶が蘇りました。昔って布団が沢山押入れに入ってるとか、あったんですよね、私も沢山の布団や敷布団を部屋に出して遊ぶのが大好きでした。そうそう、通っていた習い事の教室が、公民館的な建物で、なぜかその部屋には押入れがあって、その中に沢山の布団や座布団がぎゅうぎゅうにしまわれているんです。その狭いスペースに友達と入り込んで遊ぶのが最高に楽しかった。(今思えばけしからんガキです)
「夕闇地蔵」2008
地蔵助と呼ばれる主人公。個々の人の光が見える能力を持っています。
2個年上の兄貴分で優しい冬次郎。妹が急死してから、おかしくなったのか・・・年頃になってから、女性や男性を誘っては殺して、深い穴(海蛇さまの巣穴)に捨てる様になってしまった。
地蔵助は真っ暗な中でも見える能力で、その現場でこっそり見る楽しみがあったが、ついに死体が人目について刑事事件になってしまう。
村には謎の洞窟があって、そこをずっと下って行くと、地獄か天国か・・・・先に行ったら戻って来れないような、怖いので行けない処に、冬次郎が行ってしまい、それを追って行くと、巨大な海蛇がいて、冬次郎は飲み込まれてしまう。
はっと目を覚ますと、すっかり容貌が変わってしまい、会話も出来なくなっていた。
恒川光太郎さんの他の本の感想
「滅びの園」
「金色機械」
「無貌の神」
「スタープレイヤー」
私はフーイー
「金色の獣、彼方に向かう」
南の子供が夜いくところ
恒川光太郎「夜行の冬」
草祭
「秋の牢獄」「夜市」
本作「白昼夢の森の少女」は過去に発表された短編を集めた単行本とのこと。
昔の恒川さんらしい味わいの内容もあって嬉しくなりました。4つ★
あとがきに、どういう趣旨で依頼を受けたのか?がそれぞれ書かれているので、なるほどー!だからこういう内容なんだなーと解って面白かったです。
私がこの中で面白かったのは、タイトル作と、「平成最後のおとしあな」と「布団窟」です。
★注意 以下、完全ネタバレであらすじ・感想を書いています★
「古入道きたりて」2014
和菓子のアンソロジーというテーマだったそうで、だからとっても美味しそうな「おはぎ」が出て来るんだなーと。
戦地で知り合った男(その後死んでしまったと思われます)から聞いた、かつて男が体験した山中で一人暮らしていたおばあさんの処に泊めてもらった時に出た美味しい食事の話。
無事日本に帰れたらそこを訪ねて行こうと思っていた。
「焼け野原コンティニュー」2013
マダさんは記憶を失っては何度も蘇生する男。世界が何かで突然ダメージを受けて崩壊した世界にいる。
「白昼夢の森の少女」2013
14歳の時に植物に侵食された。同じ様に植物に浸食された人間同士は意識や感情等を共有できる。
緑人になると食事も排泄もなく、働かなくても良いし痛みもなく、ずっとそこでまったり生き続けられるということで志願する人もいて、そこに殺人事件を起こした男性が自ら浸食されにやって来る。
最後の方で火をつけられ、沢山の人で森化した9割部分が焼けてしまうが、主人公は運よく焼けずに残り、残った部分はまた活性化し、150年もが過ぎて・・・
「銀の船」2012
最初にその船を目撃したのは小2の時だった。その後、中1でイジメに遭い不登校になり、サマープログラムで親しくなった札幌出身のまっさん。彼女もその船を見た事があるという。
学校に戻り一般的な生活を送っていたが、望まぬ妊娠をしてしまい途方に暮れていた時、船に乗ってしまう。
船が見える人は限られていて、それに乗ると不死で年も取らないが、一旦地上に降りると形が変わる事も有り、そのままの人間の姿で生活できるかどうかも解らないし、時代や場所を前もって選ぶ事は出来ないので、ほとんど自殺みたいな風に思われている。
彼女はそこで知り合った男と結婚するも破綻し、その後男は先にどこかで降り、そして彼女も結局降りる事にした。時代は2999年でスコットランドだった。
「海辺の別荘で」2010
とても短い短編。自分は椰子の実だという女性。生まれ変わり。
「オレンジボール」2009 ホームレスの人が配るBIG ISSUEという薄い雑誌に掲載された
こちらも生まれ変わりの短編。毬になってしまった僕は、学校で蹴られたり乱暴に扱われるのが嫌だったが、とある眼鏡の少女に拾われ、彼女の部屋に5年間飾られたが、一人暮らしをする際に捨てられる。そこから自発的に転がり、どこかへまた行く処で終わっています。
「傀儡の路地」2017
ドールジェンヌという人形を持つ謎の女のお告げを聞くと、その行動を取ってしまう・・・。
最初は野津さんが少し遠い処で散歩している最中、偶然通りかかった家で、何やら事件が起こったらしく・・その犯人を好奇心で尾行して、香川という男だと突き止める。彼にmailを送り、なんでそういう事をしてしまったのか?を聞くと、ドールジェンヌのせいだと言っていた。(その時はそれが何を意味する言葉なのかが解らなかった)。 野津さんが警察に間違って捕まるも、その後香川が自首して開放される。
野津さんはネットでドールジェンヌ被害の会を作り、同胞を募り、集まって情報交換していたら、彼女が現れて一騒動が起きる。
それから12年が経ち、あれから彼女は野津さんの前に現れる事はなかったし、仲間の面々も何故か記憶がなくなっていた。
「平成最後のおとしあな」2018 雑誌幽
最初変な電話に真面目に付き合ってあげてるのが、なんで?って思っていたら、最後まで行くとオチがあって、凄く面白かった!
改めて、平成ってどういう時代だったのか?を考察するのも、なるほどーと思ったし。
わたしは、元夫の不倫を調査した経験から、友人から尾行や調査を請け負う事をしていた。今回ミッコから頼まれ、植野という男を調べる事になった。長野のとある家で大金を隠しているかもしれない事を突き止め、その家に入れたものの、ゴキブリホイホイの様に入ったら最後、出られない仕掛けに捕まってしまう。そこにかかってきた電話だったのでした。
最後、なんとか大音声で助けを呼んで脱出を試みる処で終わっていたけど、あの後彼女はどうなったのかな・・
布団窟」2012 ダヴィンチ
なんと!実体験とのこと。
80年頃のゲームセンター、大人びてみえた同級生、その子だと思ってついて行った謎の場所。その子に似た別の少年だった! 布団にハマって出られなくなって恐怖・・・。とても面白いお話でした。
これ読んで、私も自分の凄く昔の忘れていた記憶が蘇りました。昔って布団が沢山押入れに入ってるとか、あったんですよね、私も沢山の布団や敷布団を部屋に出して遊ぶのが大好きでした。そうそう、通っていた習い事の教室が、公民館的な建物で、なぜかその部屋には押入れがあって、その中に沢山の布団や座布団がぎゅうぎゅうにしまわれているんです。その狭いスペースに友達と入り込んで遊ぶのが最高に楽しかった。(今思えばけしからんガキです)
「夕闇地蔵」2008
地蔵助と呼ばれる主人公。個々の人の光が見える能力を持っています。
2個年上の兄貴分で優しい冬次郎。妹が急死してから、おかしくなったのか・・・年頃になってから、女性や男性を誘っては殺して、深い穴(海蛇さまの巣穴)に捨てる様になってしまった。
地蔵助は真っ暗な中でも見える能力で、その現場でこっそり見る楽しみがあったが、ついに死体が人目について刑事事件になってしまう。
村には謎の洞窟があって、そこをずっと下って行くと、地獄か天国か・・・・先に行ったら戻って来れないような、怖いので行けない処に、冬次郎が行ってしまい、それを追って行くと、巨大な海蛇がいて、冬次郎は飲み込まれてしまう。
はっと目を覚ますと、すっかり容貌が変わってしまい、会話も出来なくなっていた。
恒川光太郎さんの他の本の感想
「滅びの園」
「金色機械」
「無貌の神」
「スタープレイヤー」
私はフーイー
「金色の獣、彼方に向かう」
南の子供が夜いくところ
恒川光太郎「夜行の冬」
草祭
「秋の牢獄」「夜市」
「平成最後の~」の語り手は、どうなったんでしょうねぇ。気になります。
助かったとしても、不法侵入罪には問われますね(^_^;)。
「白昼夢~」で、緑人たちが意識共有して長生きして・・・という描写に、もしかしたら、人はこういう進化もできたのかもなぁ・・・なんて思ってしまいました。そうなったら、世の中はきっと全く違ったものになってたでしょうね。
https://mina-r.at.webry.info/202110/article_4.html
平成最後の~は、あまり恒川さんっぽくないお話かもしれないけど、面白かったです。
最初の電話のシーンがどういう状態なのか見えないから、小説ならでは!の作品でした。
確かに不法侵入罪にはなっちゃいますね。
白日夢~は、表紙にもなっているとおり、一番インパクトもあって、ユニークな発想でしたよね。