「モップの精は深夜に現れる」「天使はモップを持って」感想

なにげなく、「モップの精は深夜に現れる」を最初に読んで、清掃人探偵のキリコシリーズと呼ばれている小説があると知って、面白かったので、次に「天使はモップを持って」も読んでみました。出版年月日からすると、読む順番は逆だったんですけれども。
どの話もミステリー部分とは無関係な処が私は凄～く面白かったです。でも、オチが納得行かないというか、え～っ？そんな理由で、そんな事までしないでしょう？って思う処も・・・。
私は「モップの精は～」の方が好きでした。短編とはいえ、一話のボリュームが多めで、じっくり読めたので。

「モップの精は深夜に現れる」／2005-02　　４つ☆～４つ☆半

悪い芽
ソフトウェア会社の課長さんは、娘とこのところ上手く行っていない。
昼休みに偶然遭遇した、不思議なお掃除人キリコと出会い、段々うち解けて行き、娘との関係も段々良くなっていく。若干問題有りの新入社員２人は、最近移動してきた凄腕上司と繋がりがあるだろう事を、キリコがゴミから察知する。

42頁に、久しぶりに娘の方から挨拶してきた、と喜ぶ課長さんに、キリコが言う「固い蓋の瓶があって、なかなか開かないと、回しているうちに、誰かの処に来たとたん、いきなり開く。その人が凄く力があったわけじゃなくて、それまでのみんなの力で少しづつ緩んで来ていて、たまたまそこで開いただけなのよ」っていうセリフが、とても良いな～って思いました。

鍵のない扉
ごく小さな会社で編集の仕事をしているくるみ。ある日、会社の女社長が突然病死したと聞く。どうやら、猫アレルギーが原因の様だ。キリコから、ゴミの中に大量の猫の家が捨てられていた事を聞く。一緒に働いている同僚の内、誰かが犯人！
薬品会社の月齢小冊子に載せる記事の為に、数人の著名人をリストアップし、全ての人にアポを取り取材の了解を得た後、一人以外はお断りするという、あり得ない様な辛い仕事を毎月やっているというのには、絶句・・・。

オーバー・ザ・レインボウ
モデルの葵は、彼氏のケンゾーが実は人気モデルのサーシャともつき合っていて、しかも、できちゃった婚をすると知り、ショックを受ける。
葵に嫌がらせをする謎の人物が・・。その人物とは？

203頁に　キリコが葵に「自分の仕事の代わりなんて一杯いる。でも私は自分が好きだから、ここにいるの」と言い切る姿が、潔くまっすぐで素敵。
自分の仕事に対する姿勢というかを、こういう風に思って働けば良いんだ、って思いました。

きみに会いたいと思うこと
キリコが、一ヵ月ほど旅行に行ってしまう。キリコは家事と介護と、大好きなお掃除の仕事を３つやっていたのだが・・・。
キリコ、可哀想・・・。
う～ん、おばあちゃんの介護を時々ヘルパーさんに来てもらって、その時間をキリコはお掃除のバイトをする、ってのを後ろ指刺す親戚がいる、って処。確かにそう思われてしまうのかもしれないなあ・・・って思いました。でも、そういう息抜きみたいのは絶対必要だと思うな。介護疲れやストレスでボロボロになってしまう人も多い今日このごろ、色々考えさせられるお話でした。

この話では、既にキリコと大介は結婚していますが、「天使はモップを持って」では、キリコと大介の出会いのシーンから、結婚する前の関係が描かれていました。
・・・・・・・・・・・・
天使はモップを持って / 2003-03 　４つ☆

オペレータールームの怪
社会人になった大介。配属された職場でがんばるも、ファイルが紛失したり、誰かが嫌がらせを・・・。そのファイルが捨てられていたのをキリコが拾ってくれて、犯人が判明、解決する。意外な人が犯人でビックリ。

ピクルスが見ていた
ピクルスとはキリコのお気に入りのぬいぐるみの名前。ある晩、保険のおばちゃんがビルから落ちて死ぬという事件が起きる。保険のおばちゃんは、いつも星占いを会社の人たちに配っていた・・。
そんな事で人を殺すか・・？

心のしまい場所
マルチ商法の勧誘話

ダイエット狂想曲
摂食障害の妹を姉は自分の会社に勤めさせたが・・・

ロッカールームのひよこ
セクハラされてる女子社員・・・
これは・・・凄い話だった・・。このお話で１本の長編を読んでみたかった。ラストもぞわっとします。いや～ほんとに凄いわ・・。

桃色のパンダ
何故手作りのパンダ人形が裂かれていたのか・・？

シンデレラ
キリコの事を好きになったイケメンの社員
215頁で、好きな女の子にはお姫様でいて欲しいタイプの男子・・・。好きな女子がトイレ掃除の仕事をしているのは嫌だ・・という。
これは、実は凄く深いテーマですよね・・・。色々考えてしまいました。
キリコは自分が好きで便所掃除を含めて、お掃除の仕事をしている。
残念ながら世間一般には、素敵な仕事とは思われない仕事でも、本人がその仕事が好きで誇りを持って働いていれば良いわけですよね。そういった事を理解出来る大介。

最終話　史上最悪のヒーロー
なんと、大介とキリコは結婚しちゃっていた！　しかも大介の母が突然亡くなり、母が一手に祖母の介護を担っていたから、そのまんま、その仕事を嫁のキリコが引き継ぐ様になっていた。お弁当作りやお家の料理はじめ、家事もちゃんとしつつ、介護も丁寧にやっているキリコちゃんが、可哀想で見てられませんでした。そんなキリコを手伝うわけでもなく、キリコと目を合わせられないと、わざと帰宅を遅らせる大介には、頭に来ました！！！
酷い、酷すぎる！！！！キリコが可哀想過ぎます。

あとがきに書かれていたけれど、近藤史恵さんがかつて清掃業をしていた事があるそうで、凄く納得が行きました。
それにしても近藤史恵さんって、本当に色々なジャンルの小説が書ける、多方面にアンテナが行きわたっている凄い方なんだなぁ～と感心してしまいました。
今まで読んだ事があるのは、「サクリファイス」の自転車競技、「桜姫」「二人道成寺」などの歌舞伎のお話、「タルト・タタンの夢」等のフランス料理話などです。

近藤 史恵
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砂漠の悪魔
エデン
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