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「津軽」太宰治ネタバレ感想 タケとのシーンは事実じゃなかった?!

2022-01-26 | 小説・漫画他

1月21日放送の「あさイチ」で原田マハさんがおすすめする本として「津軽」をあげていたのを見て興味が湧いて読んでみました。その時一緒におすすめされていた東山魁夷さんの「風景との対話」もこの後読む予定です。

太宰治の本は若い頃「人間失格」とか「走れメロス」を読んで、その後「グッドバイ」「ヴィヨンの妻」も確か読んだはずだけれど、もう全然覚えていません。
という事で、太宰の本を久しぶりに読んだのですが、結構面白かったです。

津軽愛、故郷の友達や知人とのやり取り等、微笑ましかったです。
昭和19年頃と戦争中なのに、そこまで切羽つまった感じじゃないのが少々驚きました。
お酒を結構飲んだり、カニとかご馳走してくれたり・・・。
津軽に行ってみたくなりますね。行くなら5、6月か、桜の時期の弘前城ですね。

そしてなんと言ってもラストのタケさんとのシーンが素晴らしくて、ぐっと来ました・・・。
が! 
私が読んだのが2004年岩波文庫版だったのですが、巻末の「解説 長部日出雄」を読んで衝撃・・・。
この本のタケさんとの部分は本当じゃなくて、フィクションだった様なのです。

以下、本より一部抜粋

たけとの再会シーンですが、太宰研究者の方の調べによれば、現実には、亡き弟の礼治と青森中学の同級生だった住職をともなっており、彼と2人だけの思い出話をしていて、たけさんや運動会もそっちのけだった。

その後、長部さんご自身もタケさんに会ってお話を聞いたそうで、小説の中では運動会のあと一緒に桜を見に行って、たけがせきを切った様に語り出すシーンでしたが、実際にはそこでも2人の間には何の会話もなかったそうです。

そして、その夜、自分の本当の母親は叔母のきゑなのではないか?と、タケさんにたずね、明確に否定されても、まだ完全には納得しない様子だったとのこと。
(小説では、五所川原の家を訪ねたが、きゑさんは不在中で、入院した孫の付き添いで弘前の病院に行っていた)

太宰が母のごとく慕っていたのがきゑさんで、タケさんに本を読むことを教えられる前に、毎晩昔話を話してくれたのは、きゑさんでした。
文壇的処女作「思い出」にも彼女について描かれているそうで、長部さんの想像では、もしかしたら太宰は小説のラストに、きゑのことを・・という計画だったけれど、それがかなわなかったので、フィクションを入れてタケさんとの再会シーンに変えたのではないだろうか?と・・・

そして、この津軽への旅の2年後、実家に疎開していた太宰に、たけが会いに行ってるんですね。そこでの太宰の対応があまりにも、そっけないんです。
この時の様子を「回想の太宰治」で津島美和子さんがこう書かれているそうです。

たけさんと私が廊下で立ったまま挨拶していると、傍らの障子をあけて、書斎にいた太宰が出て来た。そして私にほんの二言か三言言葉をかけると、早々に母屋の方に立ち去った。たけさんに「よくきたな」ともいわず、笑顔も見せず
意外に思っていると、たけさんは太宰の後ろ姿を目で追いながら、「修治さんは心の狭いのが欠点だ」と、これまた突拍子もないことを言い・・。

まあ、小説と事実が同じだとは思わないけれども、そうなのか・・・と、複雑な心境になったのでした。
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