ポコアポコヤ

食べ物、お菓子、旅行、小説、漫画、映画、音楽など色々気軽にお話したいです(^○^)

「十字架」感想 重松清

2010-06-06 | 小説・漫画他

イジメを書いた本はとても多い。でも、自殺した後の、傍観者だった子に焦点を当てて書かれた本は今まで読んだことはありませんでした。
しかも20年以上という長きに渡って、自殺した子の家族、クラスメートがどんな風に生きて来たか、その事件がどういう影響を与えたか、などが書かれていて、重くずっしりと来る内容でした。4つ★~4つ★半

悲惨なイジメの状況とかシーンとかは辛すぎて読むに耐えないし、読みたいとは正直思わない。でも、この本は、そういうイジメ本とは、違っているので、イジメ描写が苦手な方にもお薦め出来ます。
前半は、すごく引き込まれて読んだのですが、中盤で、なんだかちょっと違った方向というか、なんかす~っと入って来なかったというか。でも最後の方(大人になってから)は凄く良かったです。

私は、遺書に名前を書かれてしまったユウ君とサユちゃんの2人が、なんだかちょっと可哀想になってしまったんですよ・・・。確かに傍観者でいた・・というはあります。でも、ここまで長年に渡って、フジシュン君の家に頻繁に通うとか・・・なんだか、彼ら2人にのしかかった重圧の凄さには、気の毒というか・・・。
名前を書かれなかった大多数のクラスメートはどうなんだ?って思うところもあったんですよね。もうちょっと本を分厚くして、名前を書かれなかったクラスメートの人たちの高校以後から大人になってからのフジシュンの自殺事件に対しての思いや、気持ちの変化等も、もうちょっと書いて欲しかったな・・・。

きっと彼らの中には、忘れてしまった人もいるだろうし、もし忘れていたとしても、後に結婚相手が昔イジメに遭って辛い思いをしたとか、彼らの子供がイジメる側になった、イジメられる側になった・・って経験を経て、あの自殺事件に対しての思いが変化したり・・・って事があるんじゃないかな、って思ったので(そこまで重松さんに書いて欲しいなんて、注文多すぎですよね この小説の視点がとても良かったので、重松さんならガッツリ書ける人だし、ついつい欲が・・・
もしこれ以上分厚く出来ないのだったらば、ユウ君とサユちゃんの高校~東京の大学に行く間の、恋愛(と一言では言えない関係だけど)の部分より、そういったクラスメートの方を書いて欲しかったかな~って

★以下ネタバレ 白文字で書いています★
あと、いじめる側だった凶暴な男子2人と、それにくっついてた情けない男の3名も、もっと詳しく読みたかったのに、あっけなく凶暴な男子1名はバイク事故で死に、偶然にももう片方とバイクに同乗していて・・・という展開が、ちょっと安易かな(スイマセン)って、がっかりしたんです。そもそも、いじめる男子2人が典型的な不良タイプだったし・・・
以上

そういえば、小説に出て来た、丘の上の十字架(1994年に世界遺産にも登録されたアスプルンドとレヴェレンツの「森の墓地・森の火葬場」1940年建築)は、どんな処で、どんな風景なのか、検索してしまいました。HP

特に印象に残った部分
241頁 人間って死にたくなるほど辛い目に遭った時に絶望するのかな。それとも、死にたくなるほどつらい目に遭って、それを誰にも助けてもらえないときに、絶望するのかな。

292~296頁
34才になった自分が息子を見て、色々思うところ。

兄が自殺した後、弟の健介君が両親を必死で支えたり、後の人生にも多大な影響が出ちゃった処なんかは、うるっと来ました。

十字架 (100周年書き下ろし) 重松清 2009-12-15


「トワイライト」「カカシの夏休み」
「青い鳥」
きみの友だち、流星ワゴン
「ブルーベリー」「うちのパパが言うことには」
「カシオペアの丘で」重松清 重すぎました・・・。

コメント (8)    この記事についてブログを書く
« 「かのこちゃんとマドレーヌ... | トップ | ネタバレ「光媒の花」感想 道... »

8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown ()
2010-06-06 22:37:24
いじめによる影響が、こんなにも長く続くものだと感じたお話でした。
いじめていたわけでもないユウ君とサユちゃんが、ずっと、引きずっていることが、気の毒に思いました。
返信する
花さん☆ (latifa)
2010-06-07 09:57:09
こんにちは~花さん
実際にこれ書くために、重松さんは、こういう事件にかかわった人に会いに行ったり、話を聞いたりしたんじゃないかな・・・って勝手にそう思いました。

普段、自殺しちゃった・・って処で終わってしまって、その後しばらくは問題になったり、取り上げられたりするものの、10年後とか20年後まで追ったレポとかって聞いた事が無いので・・・。

ユウ君とサユちゃん、、いじめてたわけじゃないけれど、傍観者にも責任がある!ってのを、重松さんは書きたかったので、ちょっとああいう辛口な風になったのかな・・・って思ったりしました。
返信する
静かな傑作。 (時折)
2010-06-07 12:56:18
TBさせていただきました。
latifaさんのご不満を読んでいて・・・ひょっとしたら・・・遺書に名前を書かれた二人に、理不尽なほどの重みが加わるというのは、イジメという出来事が、誰にとっても客観的にとらえることができないという性質をもっていることを露呈させるためのひとつの仕掛けだったのかなと感じました。
返信する
Unknown (みみこ)
2010-06-07 14:58:27
お邪魔します~~
今回は今までない
ところに焦点を当てていて、これもまた
考えさせられること多かったよね。
重松さんってやっぱり、いいところいつも
目をつけているって思うよ。
確かに加害者は典型的な不良だよね・・・。
実際は成績優秀で、そんなことしそうもないような子が陰でコッソリ・・というのも
多いと思うのよね。
たまたま、名前を遺書に載せられた二人。
そうだよね・・・彼らにとってはどうして
僕たちなんだ・・・って思ったはずだよね。
逆に誰でもこういった苦しみ背負う
可能性はあるってことだよね。
私はね、フジシュンが彼らのこときっと
すっごく気に入っていたと思うのに
それが一方的な思いでしかなかったというのが
よりつらく感じたわ。
あの女の子を好きな気持ちは。。。一方的でも
しょうがないけど(だって、彼女だって
好きじゃあなければ応えられないしね)
男の子を友だちだと思っていたこと。
あれって、なんか寂しいな・・って感じたよ。
フジシュンの中ではいつまでも
小学校の時に遊んだいいやつのままだっていうこと。
フジシュン、自殺なんか考えないで
親にでも言って、学校辞めちゃえばいいのに
と思ったけれど、
そんな簡単なことでことはすまないのが現実
なんだろうね。
だけどやっぱり、自殺は最悪な結果だと
思うよ。
返信する
時折さん☆ (latifa)
2010-06-07 17:07:58
こんにちは、時折さん
確かに重松さんは、そのあたりのこと、確信犯というか、仕掛けだったんでしょうね。
凄く読み応えのある小説でした。
この本を読んだ後、偶然、重松さんのではないイジメ描写の多い小説を途中まで読んだのですが、挫折してしまいました・・・。
返信する
みみこさん☆ (latifa)
2010-06-07 17:20:46
みみこさん、こんにちは
重松さんは、書きたいことが一杯あるんだろうね。バイタリティに溢れていて凄いわー。

>確かに加害者は典型的な不良だよね・・・。
実際は成績優秀で、そんなことしそうもないような子が陰でコッソリ・・というのも
多いと思うのよね。

私もそう思うんだ~。確かにこの小説に出てきた様なタイプのイジメっこもいるけど、私が現実に良く聞くのは、まさにみみこさんが言う様な成績優秀な評判の良い子が、実は裏で・・ってのなんだ。

>逆に誰でもこういった苦しみ背負う可能性はあるってことだよね。
 ここだよね。きっと、重松さんは、傍観者の誰もがこの2人になりうる・・って事もふまえて、あえてそういう風に書いたのかもしれないよね。

>フジシュンが彼らのこときっとすっごく気に入っていたと思うのにそれが一方的な思いでしかなかったというのがよりつらく感じたわ。
 そうそう!そうなんだよね。
最後の方で、お父さんになったユウ君が、奥さんから聞かされる「息子がある友達を一方的に好いていて、でも相手は別にそれほどには思ってくれてなくて・・」ってので、はっ!とするシーンがあるじゃない? フジシュンはユウ君の事好きだったんだよね。ユウ君はもう小学校時代に仲良かった事なんて凄い過去のことで、今は何とも思ってないけど、フジシュンの中では、ずっとユウ君は特別だったのよね
男女だけじゃなくて、同性の友達の間でも、やっぱり片思いみたいなのってあるよね・・。

ほんとにね・・自殺するくらいなら、学校行かなくて良いよね・・・
私たちが学生時代の頃は、不登校とか学校行かないっていうのは、滅多に無い事で、それを選択するのはなかなか難しかったから、自殺を選んじゃったのかもしれないね。(時代設定的にも、ユウ君やフジシュン達の中学時代は現在じゃなくて、昔だもんね)
今は学校に行かない・・ってのも選べる様になりつつあると思うんだけど、それでさえ、自殺しちゃう子がいるでしょう(学校行かなくてもネットイジメとかで、そういう学校外にまでイジメが拡大して、学校休んで終わるって感じじゃなくなってるのかもしれないね・・・
返信する
Unknown (アクアマリン1号)
2014-01-21 18:41:08
さっき読み終えたばかりです。
ページ数も内容も、ボリューミーでしたが、なんだか読み終えた達成感というよりはもうこの登場人物たちに会えない寂しさでせつなくなりました。

個人的に、健介くんの態度の変わりように感動しました。
森の墓地ってこんなところなんですね。イメージと似ていました。

すごく読み応えのある、答えのない、深いお話でした。
返信する
アクアマリン1号さん☆ (latifa)
2014-01-26 16:13:54
アクアマリン1号さん、こんにちは!
コメントありがとうございました

だいぶ前に読んだので、恥ずかしながら、ほとんど忘れてしまい、健介君のこととか、思い出せず・・・反応できなくて、申し訳ないです・・。
でも、凄く良かったことは覚えています。

そういえば、最近、少々似た内容の小説を読んだんです(イジメにあっていた少年が亡くなり、その加害者側の子供らに焦点を当てた作品) それが、残念ながら、私にはいまいちで・・・、そして、この「十字架」の事が頭に浮かんでいました。断然、こちらの作品の方が私はガツンと来ました・・
返信する

コメントを投稿

小説・漫画他」カテゴリの最新記事