ポコアポコヤ

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妊娠カレンダー、貴婦人Aの蘇生、寡黙な死骸 みだらな弔い

2007-01-16 | 小説・漫画他

小川洋子さんの本は、「ブラフマンの埋葬」「薬指の標本」に続き、「妊娠カレンダー」が3冊目。彼女の書く文章や雰囲気に引き込まれてしまって、続けて「貴婦人Aの蘇生」、「寡黙な死骸 みだらな弔い」と読んでしまいました。それぞれの感想を書きます。

妊娠カレンダー 
実は、私も、妊娠して出産に至る間、小川さんが書いた様な、どこか不思議な感覚で、不思議な物体が・・・って感じで、たまに考えていた事があったな~って蘇って来ました。
★ネタバレです★文字反転して下さい
でも、妹が、アメリカ産のグレープフルーツを選んで買って、ジャムを作っては姉に食べさせていたってのは、怖いっ!!と震え上がりました。
昔、ニッポン放送の夜11時頃、「夜のドラマハウス」っていうラジオ番組があって、そこで紹介するちょっとブラックが効いた小説のラストの落ち?みたいな雰囲気、小川さんの小説にも、ちらっと感じることがある。
ちなみに、丁度私も去年の初夏あたりに、サンフルーツでジャムを作ったことがあったので、それもなんだか生々しくリアルに蘇って来た。確かに妊娠中とか、つわりの頃とかって、普通のその人じゃなくなる?感じがありますよね。

ドミトリイ
かつて自分がいた学生寮に、いとこを住まわせる様にする。そこには、両手と片足がないが、片方の足と肩を上手に使って優雅な動きで身の回りの事がらをこなせる「先生」が住んでいた。先生は長年の不自然な姿勢の無理がたたって肋骨が内臓を圧迫して、具合が悪くなっていた・・・。
最初訪ねた時から、気になっていた、天井のシミが、訪ねるごとにどんどん大きくなってきて、ラスト、ついに何かの液体がしたたり落ちて来る。一体それは何なんだろう?!って、ドキドキ。

夕暮れの給食室と、雨のプール
これは、ギャー!私も同じ風に思ったことがある!!ざわっと、何十年ぶりに記憶がフラッシュバックして焦りました。私も小学校の頃、ふと見た、給食を作っているおばさんたちの姿や、その給食作成中のむっとする匂いとかに、ものすごい圧倒された事があるんですよ。あと、水泳が苦手な子がかぶらされる赤い帽子、そしてその場をやり過ごすこと「誰でも一度は、集団の中に自分をうまく溶け込ませる為のある種の通過儀礼を経験すると思うけれど、僕の場合、たまたま、それに手間取ってしまった・・」の部分とかも、私もそういうの、あったな~とか思い出したりして。この不思議な親子が、夕暮れの中、給食室をじーっと見ているという、シチュエーションといい、凄く何か物哀しいような、不思議な感じがする小説でした。

この「妊娠カレンダー」は1991年に芥川賞受賞しているんですね!
妊娠カレンダー、ドミトリイ、夕暮れの給食室と、雨のプールの3つのうち、全部面白かったのだけれど、一番印象的だったのは、「夕暮れの給食室と雨のプール」かな。
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貴婦人Aの蘇生(2002年1月出版)

読み始めて、すぐに、これは面白い!って思って、グイグイ一気読みをしてしまいました。妊娠カレンダーもそうでしたが、これも引き込まれて楽しく読めました。妊娠カレンダーと比較すると、こちらの方が、みんなの心根が優しいな~って、突拍子もない現実離れしている話しながらも、心があったかくなるような、後味が良いですね。

(内容・あらすじ)
剥製コレクションをしている叔父さんと、彼が晩年結婚した相手である年上のロシア人のユーリ叔母さん。
その叔母さんと主人公は、一緒に、その剥製屋敷で、2人で暮らすことになる。叔母さんの趣味といえば、コレクションにAというイニシャルを刺繍すること。そのうち、物語は、「ユーリ叔母さんは、実は、ロマノフ王朝アナスタシアなのか?」という謎解きのような方向へ向かう。

まず、このニコという彼氏の悲しいサガというか、一種の病気の部分。
ニコがアルファベットの文字AとかqとかPとかの囲まれた部分がある文字の中を綺麗に塗りつぶさなければ気が済まないという処や、扉を通るための儀式で苦労する部分が、最初笑っちゃったのですが、途中で笑えなくなり、可哀想になって行ったのだけれど、そんなニコを、気長に、そして大きな愛で受け入れている、この主人公と叔母さんは、良い人だなぁ~って思った。この舞台となる、剥製屋敷自体に、そして、動物の剥製が趣味?っていうのも、産まれて初めて読んだし、もうそれだけで、凄い圧倒的なムードをかもし出してますよね。
それプラス後半は、ロシア皇帝最後の?ロマノフ王朝のアナスタシアですよ!!もう、なんか、ぶっとんだ世界に飛ばさせて頂いて、すっごく楽しかった!少々ホラーの入った外国舞台の少女漫画を読んでる気分になった。それにしても、このロマノフ王朝についても、小川洋子さんは、入念なリサーチや調査をされたんだろうな~って事が伝わって来ました。こういう「悲劇なんとか王朝の謎」とか、この手の話しって大好きだな。

★ネタバレです★文字反転して下さい。
主人公とニコの心の寛容さ優しさよ!叔母さんが、アナスタシアじゃないよなあ・・・と殆ど疑いながらも、叔母さんを助けようとする2人、そして、かつて盗みを計った信用出来ないやつであるオハラなのにもかかわらず、叔母さんが死んだ後、オハラにお任せして、その上、あのピューマをプレゼント。
最後ニコが扉を超える儀式もすっとばして主人公の元へやって来てくれたところは、なんだかとても嬉しかった。
それにしても、本に埋もれて死んだ父、北極熊の口の中で死んだ叔父さん、2階から落ちて、インパラに刺さって死んだ叔母、なんか、壮絶な死に様・・・合掌。
以上
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寡黙な死骸 みだらな弔い

今まで読んだ小川洋子作品の中で、最もグロテスクで、怖い、気持ち悪い度が強かった作品。
他の作品は、プチグロでも、どこかひっそりと静かで透明感ある(使い古された表現だけど、ほんとうにそんな感じがするからしょうがない)感じだったのだけど、この小説は、生々しさやオドロオドロしい、赤いドクドクしい色や、ねっとり感があるようで、ちょっとここまで来ちゃうとタジタジっとなっちゃいました。ザクロを切った中身みたいな感じな小説?というか。
もちろん、怖いもん見たさで、読むのを辞められないし、どうなるの・・?って読みましたが・・・

「洋菓子屋の午後」「果汁」「老婆J」「眠りの精」「白衣」「心臓の仮縫い」「拷問博物館へようこそ」「ギブスを売る人」「ベンガル虎の臨終」「トマトと満月」「毒草」全11編の短編集
一番面白かったのが、手の形をした人参のエピソード関係。
ああいう畑で取れた不思議な形の野菜って、何か底知れないモノを感じます。何かあるに違いない!みたいな^^(偶然だけど)

「心臓の仮縫い」「拷問博物館へようこそ」
これだけは、ちょっとグロ系が苦手な私の限度範囲を超えていました。読みながら、ちょっと気持ち悪くて、楽しめる範囲じゃなかった。
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小川洋子さんの小説は、風景とか色合いとかが画像として浮かび上がって来るような文章だな~。貴婦人Aの蘇生、映画化しないかな?映像として見てみたいな。結構映像化しても面白そうな気がするんだけど・・・。
彼女の本には、古い病院、シーンと静まりかえった古い屋敷、中庭、こんなかんじの設定が多いですよね。それらの独特の空気感といい、静かなグロテスク感や、ちょっと怖いもの見たさが、私も凄く惹かれてしまうところ。
何度か出て来るモノとして、キウィ等のフルーツや野菜、腐りかけの動物の死体。それと、体のパーツが欠損・切断されている表現も結構出て来ますね。

今まで5冊読んで来て、浮かび上がる小川さんの人生?って、(以下、勝手な私の空想です!)

いいとこのお金持ちのお嬢さんとして産まれ、大人しくて控えめな少女だった。もしかしたら、小川さんは、お医者さんの娘or孫だったか、もしくは、旦那さんがお医者さんorかつての彼氏が年上のお医者さんだった気がする。何故か小川さんとお医者さんはかなり深い関係の気がしてならない。 
 そして彼女の、おじいさま(おばあさまかも)の暮らしているお家は、古い洋館で、凄くシーンとしたお屋敷で、不思議なお部屋があり、そこをこっそり覗くのがたまらない楽しみであった。もちろん、中庭があるし、おじいさまのお家には、剥製がある。
小川洋子 薬指の標本 5つ☆ +ブラフマンの埋葬

「おとぎ話の忘れ物」と、「凍りついた香り」、「海」


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6 コメント

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小川洋子さん♬ (チュウ)
2007-01-16 14:13:09
はじめまして。『チュウとチビのセカンドはうす』のチュウです。Yahoo以外の方のコメントは、はじめてだったので、うれしくてきてしまいました。が…はたして、ちゃんと投稿できるのでしょうか?不安です…ともあれ、『博士~』から、小川洋子さんを読み始めたので、このちょっと怖い雰囲気はビックリしましたね♬
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チュウさん☆ (latifa)
2007-01-16 18:38:13
チュウさん~、こんばんは!
しっかりコメント投稿・TB出来ております
ありがとうございます☆

チュウさんには小さなお子様がいらっしゃるんですね。ということは、この妊娠カレンダーも色々なことを、頭で思い巡らせながら読まれたことでしょう^^

今さっき、拝見させて頂いたら、「こぐまちゃん」シリーズが色々並んでいて、嬉しくなりました。我が家も子供がまだ小さい時こぐまちゃんシリーズを愛用してました。特にこぐまちゃんとホットケーキっていうのが一番お気に入りでした
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まぶたにもご注意を・・(汗) (きたあかり)
2007-02-11 22:19:53
「心臓の仮縫い」ホントにグロかったですね・・(汗)『まぶた』という短編集はその3倍グロいから気をつけてくださいませ(笑)

ブログ内拝見しました。。

小林聡美さんの「すいか」私もハマってました。あの空気感がたまらなく好きでした。 そういえばもたいまさこさんも出てましたよね!
「かもめ食堂」は足しげくレンタルショップに通っていますが、いつも「貸し出し中」でまだ観ていません。

資生堂・シャワーコロンですが、懐かしくて泣きそうになりました。 私も中学時代買いましたよぉ~(笑)

事後承諾で恐縮ですが、ブログの「BOOKMARK」に入れさせていただきました。 今後ともよろしくお願いします♪

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きたあかりさん☆ (latifa)
2007-02-11 22:37:13
こんばんは~きたあかりさん
今さっき、「ミーナの行進」を読み終わった処です。
とても面白かったのだけれど、グロさとか不気味さが少なくて、ほんの少しだけ物足りなかったかな(爆)
私は、ちょいグロ小川さんの小説の方が、ゾクゾクして、より好きかも・・・・です。
この後、きたあかりさんちで、レビュー拝見させて頂くのが楽しみです!!

ところで、色々ブログ内の記事を見て下さったようで、凄く嬉しいですが、ちょっと恥ずかしい様な・・・(^^;) 下らないことも一杯書いてるし・・・でも、ありがとうございました!!

すいか、シャワーコロン、かもめ食堂・・など、共通のポイントが色々あるだなんて、とっても嬉しいです!!ブックマークに入れて下さったなんて、ありがとうございます!私も、こちらのgooは事情あってリンクは入れない様にしているので、映画倉庫の方にリンクさせて頂きますね☆
これからも、仲良くして下さい
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選考委員 (存在する音楽)
2007-06-28 00:03:21
どこにコメントしようか迷ったんですが

川上弘美さんと小川洋子さん
二人とも芥川賞の選考委員に正式に決まったようですね。
今後、どのような作品が評価されるようになるのかが楽しみです。
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存在する音楽さん☆ (latifa)
2007-06-28 08:41:35
>川上弘美さんと小川洋子さん 二人とも芥川賞の選考委員に正式に決まったようですね

そうなんですかー!
私、全然うといのですが、それでも噂によく聞くには、最近の芥川賞の選出が、ちょっと・・・って話しも聞くことがあるんです。
選考委員に、その2名様が加わるというのは、きっと選ばれる作品にも、大きく影響しそうですね
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