風の遊子(ゆうし)の楽がきノート

楽書き雑記「豊田市美術館のゲルハルト・リヒター展へ」

豊田市美術館で開催(2023年1月29日まで)されているドイツ最高峰の画家、ゲルハルト・リヒターの回顧展を鑑賞してきました。1932年、旧東ドイツ領に生まれ、今年90歳。自国の分裂と統合の歴史の中で探求してきたフォト・ペインティング、巨大なカラーチャート、抽象画など約140点が展示されています。

パンフなどによると、壁画を描いていたリヒターは自由に惹かれ、61年の壁建設の直前に西ドイツへ移住、本格的な絵画制作の道に入りました。
新聞や雑誌の写真を正確にうつしとる主体性のない描き方から始め、やがてそれを逆説的に描くことに専念。灰色を塗り込んだキャンバスに、絵具をローラーで塗ったり、細いへらで伸ばしたり、鏡の活用など、抽象的な表現を探求したようです。

探求心は海や山の風景画、花や頭蓋骨などの静物画にも及び、写真やガラス板に絵具を載せたりもしています。
とりわけ、代表作である「ビルケナウ」は、第2次世界大戦時のアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所で密かに撮られた写真をイメージして、黒、白、赤、緑の絵具を塗り込んで表現してあり、しばらく足が止まりました。

65歳になって絵画の世界に迷い込んだ私には、抽象画や現代アートに対する理解力は乏しく、展覧会に出かけても作品の前を素通りすることが少なくありません。しかし、今回のリヒター展では幾つもの作品の前で足が止まり、見入る自分に気づきました。どのような鑑賞者をもひきつける。リヒター作品のすごさでしょう。

理解を深めようと鑑賞後、美術館のショップに並んだリヒター関連の書籍の中から購入した一冊(林寿美著 ゲルハルト・リヒター 絵画の未来へ=水声社)の表紙カバーの帯に、こう書かれていました。
「優れた画家には、わたしたちには見えないものが、見えているのだ」
なるほど。だとしたら、未来の優れた画家はどのようなものを見て、どのような表現をしていくのでしょう。

(追記)
豊田市美術館では常設展だけでなく、今回のゲルハルト・リヒター展も、営業目的などでなければ、展示作品のごく一部を除いて写真撮影は自由になっています。パンフレットの写真も加えて掲載しました。


画家ゲルハルト・リヒター


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