兵庫県精神障害者連絡会・代表のブログ

1995年に設立された兵庫県精神障害者連絡会の設立時メンバーであり,20年間代表を務めているメンバーのブログです

レーニン絶対化の誤り

2024-03-22 | 日記

レーニンの「民族自決権」をウクライナに適用することは誤りです。レーニンの「民族自決権」論は、スルタン・ガリエフが活躍した旧ロシア帝国内のムスリム諸国では有効だったのかもしれません。ムスリムがその国家の多数を占めていたと想像されるからです。OECD・経済協力開発機構の定義では、特定の民族のみで95%以上の人口をしめる国家を「単一民族国家」と呼びます。それら諸国では、少数民族には保護的政策を取ればいいのだろうし、それらの国での「民族自決権」が誤りだとは言えないだろうと思います。(ちなみに日本では大和民族が96%を占めますが「日本は単一民族国家だ」という言説は批判されています。)

 ところが旧ロシア帝国領内でも東欧諸国は多民族国家であり「民族自決」という場合どの民族の自決を認めるのかという問題が生じてしまい、問題は単純ではありません。問題のウクライナでは、ウクライナ人77.8%、ロシア人17.3%、ベラルーシ人0.6%、モルドバ人、クリミア・タタール人、ユダヤ人がいました。(2001年ウクライナ国勢調査)。国勢調査には反映されていませんがロマもいます。(なお、2021年7月1日にウクライナ国会で採択された「ウクライナの先住民」法で認められた先住民はクリミア・タタール人、カライム人、クリムチャック人であり、スラブ系民族は後からやってきた人たちです。)

 多民族国家に単純に「民族自決権」を適用することは、比較少数派民族(少数民族ではない)の主権をどう認めるのかという問題が生じます。実際ウクライナでは「地方自決権」を求めた東部住民に対して、2014年から2021年までに、死者14000人を出す内戦が仕掛けられていました。(内東部住民の死者は約10000人。)(日経新聞2021年8月24日付け。内戦は2022年まで続いていましたが2021年8月以降の死者数は不明。)

 このレーニンの「民族自決権」論の欠点については、当時ポーランド出身のユダヤ人であったローザ・ルクセンブルクが指摘していました。2022年にウクライナに対するロシアの侵略戦争が開始された時に、左翼党派内では「ウクライナ人の民族自決権」を主張する人が主流を占めました。彼らが無視していたのは2014年からの東部紛争でした。比較多数派民族による比較少数派民族に対する民族浄化と言えるような内戦の問題です。このような少数派を人間として扱わない態度の間違いは、指摘する人が私を含めて幾人もいましたが、左翼党派では権力を占める人たちによって無視されました。

 いま改めて、レーニンの誤りと「レーニン絶対主義」を主張する左翼党派の誤りを指摘しておく必要があると思います。



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