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私家版・ユダヤ文化論

2012-08-22 | レビュー
私家版・ユダヤ文化論 内田 樹 文藝春秋

今、日本でもっとも信頼のおける思想家と言われる著者。「下流志向」「14歳の子を持つ親たちへ」(名越康文氏と共著)他
ユダヤ人はなぜ知性的なのか、なぜ迫害されるのか。サルトル・レヴィナスらの思想を追いながら考証する。

以下、抜粋

 ユダヤ人差別には現実的な根拠が無い。あるのは幻想的根拠であり、その根拠が存在する限り差別は無くならない。
ここでいう幻想的根拠とは「ユダヤ人がイノベーティヴな集団であり、イノベーティヴな知的思考傾向を伝統的に持つ民族である」と非ユダヤ人からは見えてしまう、いうこと。(イノベーティヴとは、懐疑し、改める知的努力)
 たとえば19世紀、革命後の動乱期のフランスあるいはドイツには、近代化の不安があらゆる階層に渦巻いており、近代化の象徴ともいえる職業を持つユダヤ人をスケープゴートにすることで、溜飲を下げる反ユダヤ主義が起こった。この反ユダヤ主義はファシズムの台頭に少なからず影響を及ぼした。

誰かをスケープゴートにする構図。ナショナリズムな世論。ファシズムに向かう流れが、今日も繰り返される。

非ユダヤ人的人間とユダヤ人的人間の違い
「私はこれまでずっとここにいたし、これからもここいる生得的な権利を有している」と考える人間と
「私はここに遅れてやってきたので<この場所に受け入れられる者>であることをその行動を通じて証明して見せなければいけない」と考える人間の、アイデンティティの成り立たせ方の違い。

どう考えてもユダヤ人的思考の方が実存主義的だし、現代的だ。結局どちらも普遍的な、人間の矛盾する両面ということか。


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