中村俊茸

とあるサッカー選手の軌跡とコメント集

grazie5月号:世界の頂

2007年05月04日 | 記事 セルティック
2007年05月04日 grazie5月号:世界の頂
http://sports.livedoor.com/grazie/edition0705/page0705_1/03.html
 中村の想い「どこまでサッカーを極められるかってこと」

――イタリアでもアウェーの過酷さは味わったのでは?

「イタリアはイタリアで特殊なんだけど、ピッチに立ったときの威圧感や、チームメイトも含めた、チームに加わるプレッシャーみたいなものは国境を越えて戦うチャンピオンズ・リーグのほうが大きい。ちょっとプレーしていて気分が悪くなるくらいの威圧感がある。それも、じかに戦ってみなければ分からない空気だと思う。ただ、スコットランド・リーグでも、別の意味での難しさはある。たとえば、アウェーでも、良いサッカーをして勝たないとまるで評価してもらえないとか。逆に、チャンピオンズ・リーグだったら、内容的には完敗でも、マンUに勝ったら絶賛される。イタリアなんて、もっと過酷。(所属していた)レッジーナはリーグでも下位のチームだったから、当然、どの試合も劣勢になる。だから、どうしても”負けないサッカー”になる」

――”負けないサッカー”というと?

「ボールが頭の上を通過していくサッカー。できるだけリスクを減らして、タテに、前にスピードを求められるサッカーかな。オレの場合、中盤でボールを組み立てるところで力を発揮したい面があるけど、それは無理。だから、FWの競り合ったボールをいかに拾うかってことを意識するとか」

――中村選手にとっての”成功”とは?

「自分自身、どれだけ良い選手になれるか。自分なりに、どこまでサッカーを極められるかってことが大事。タイトルを取るとか、そういう名声や実績みたいなものも当然大切なんだけど、それ以前に、自分自身が成長していけるってことが成功かな。カズさん(三浦知良/横浜FC)だって、年齢的にはベテランだけど、まだ巧くなれる、もっと良い選手になりたいという気持ちがあるから、現役でプレーしつづけられるんだと思う。オレもいずれ体力は落ちてくるだろうけど、そのぶん、経験値は上がるはず。スタミナが低下したなら、戦術眼とか、ずる賢さとかでカバーできる部分はたくさんある。そういう意味で、サッカーを極めたい」

――日本人選手がヨーロッパでプレーでしつづけるコツというか、秘訣があるとすれば?

「とにかく忍耐力。とくに言い訳をしないってこと。監督、チームメイト、ファン、マスコミ、それに住んでる環境、文化の違い…。言い訳をしようと思ったら、材料はいくらでもある。でも、それって自分には何もプラスにならないし、かえって足を引っ張ることになる。監督が使ってくれないなら、どうしたら使ってもらえるのか。チームメイトがこっちのプレーの意図を理解してくれないなら、どう理解してもらうか。マスコミに叩かれることもあるし、ファンに野次られることもある。そこで、”なんで理解してくれないんだ”って愚痴っても、何かが変わるわけじゃない。あと、同じような意味だけど、逃げないってことだね。使ってもらえないから移籍するとか、日本に帰るとか考えるのはすごく簡単なんだけど、まずはもがいてみることが大事。このクラブじゃ自分が生かせないとかっていうのは簡単だけど、じゃあ、自分はどうなのって省みて、いま何かできることはないかって考える習慣をつける。すると、出場させてもらえないなら、いまのうちにフィジカルを強化しようとか、探せばやれることはいくらでもあるから」

――これから海外に出るチャンスのある若い選手に何かアドバイスするとしたら?

「あとさきを考えるなってことではないけど、海外に出るチャンスがあるならどんどん出て行ったほうがいいと思う。出場の機会が得られないなら行っても仕方がないって言う人がいる。でも、そこは、あくまで本人次第。出場できるに越したことはないけど、機会を与えられないときもレベルアップする方法はある。というか、それを探さなきゃいけない。知ってほしいなと思うのは、セルティックは欧州の強豪とまでは呼べないけど、それでも20代前後の若い選手が、チャンピオンズ・リーグの真剣勝負を戦っている。どんどん成長してる。彼らはもともとヨーロッパに生まれたわけだから、それだけ環境は恵まれてるんだけど、日本人がヨーロッパに出て、彼らと同じ活躍ができたなら、それはとても大きな意義のあることだと思う。彼らよりずっとたくさんのハードルを越えないと、そこにはたどり着けないわけだから」