我々が日常使う関西弁、厳密には近畿圏では南部の河内や和歌山、兵庫の播州、
京都、滋賀などが微妙に言いまわしが違うという細かい話は抜きにして
一般的には大阪弁と言って良いかと思うが、
今ほど日本全国に認知されたのは1980年代の漫才ブームをきっかけに
大阪の吉本興業や松竹芸能を中心とするお笑い芸人の活躍があったからなのは
間違いのないところであろう。
そのストライクゾーンど真ん中に住んでいる俺に自覚があるはずないが、
ともすればそれまでは時代劇に登場する浪花の商人(あきんど)の
「儲かりまっか?」「ぼちぼちでんな。」的なへらへらとした愛想のある装いながらも
小狡い強かさを内側に隠し秘めた気の許せない者が関西人と思われていたようだ。
PC、スマホのネット文化がまだなく限られた娯楽の一つだった当時のテレビの力は
そりゃ凄いものである。
敢えて弊害とすれば普通に会話しているだけなのに関西人は皆誰もが
漫才師みたいに面白い人間だろうと思われるくらいだろうか。
狡猾な奴と思われるよりはまだましだろうな。
先の漫才ブーム以降お笑いの形態も様変わりし、
一発ギャグだけの者や走り廻ったり飛んだり跳ねたり、どついたりこけたりと
まあ色々な芸風のコンビが登場してきたのだけど、
やはり漫才の本質、王道は二人の掛け合いの妙、会話による面白さだと思うのである。
古くは中田ダイマル・ラケット、夢路いとし・こいし、横山やすし・西川きよし、
その後のB&B、紳介・竜介も面白かったし、
超売れっ子になったダウンタウン、とんえるずも当初は漫才だったよな。
今ちょっぴり応援しているお気に入りの一組がこいつらだ。
と言っても若手でもなくもう組んで20年近いベテラン、中堅コンビなのだ。
お笑い好き以外にはまだまだ全国区とは言えないが、
そのテンポ、やり取りはかなりのものだと思うぜ。
彼らの代表作、3分程度の物なので是非一度ご覧あれ。
テンダラーって言うのさ、覚えておいてやってね。
Bは京阪沿線の関目駅から徒歩1分のところにあるライヴスポットである。
コンクリート製の建物の階段を二階に上がると周囲の喧騒から隔絶されたそこは
もうすっかりリラックス空間に早変わりだ。
行き慣れたライヴハウスより遥かに広いそこはテーブル席で50人はゆったりと
座れて勿論演奏者のスペースも十分に取ってあり、
いやがうえにもオーナーの拘りを感じざるを得ない雰囲気がある。
一般アマチュア向けにも貸出日のある施設だがプロの演奏が
主にジャズを中心とするライヴが多いのはオーナーでもあるM氏が
日本を代表する一流のトランぺッターだからなのだろう。
若い頃からビッグバンドでの経験を積み現在はお店のオーナーであり、
外部にも演奏活動をしに行くアーティストでもあり、
当然弟子や教え子を持つ師匠、先生でもある。
と書けば小難しい神経質な親父と思いきや日本サッカー協会のチェアマンだった川渕三郎が
泥酔してノリノリになってしまったみたいな感じの陽気な男性である。
彼に限れば関西人イコール漫才師みたいな的法則は間違いじゃないだろう。
だけど一旦ラッパを咥えた途端にプロミュージシャンに豹変するのは流石やるもんですな。
持つべきは友と陳腐で使い古された言葉を出すのも恥ずかしいが、
この場、M氏を紹介してくれたのはドラマーのKなのさ。
近くで演奏する際には声掛けしてくれるので仕事を忘れてストレス発散、
旨い酒と洒落た演奏にすっかり嵌ってしまったようだ。
今日はピアノ、ベース、サックス、ペット、おっと忘れちゃならないドラムの
シンプル構成だったけど大人の世界って感じだったね。
俺と変わらぬくらいの年齢だろうか別嬪のピアニストMさんはイメージ的には「センセ」。
文字にすればそりゃ先生の意味だが語感的には「センセ」なのだ。
もう35年以上前の高度経済成長~バブルまでの古き良き時代の思い出さ。
北新地のクラブではまだカラオケも今ほど常設されてなく、いや寧ろ置かないで
静かにゆったりとホステスや客同士が談笑できる社交場的な所が多かったのだ。
勿論大きな店ではバンドを抱え生の演奏を聴かせてくれるクラブもあったが、
殆どの小さな店では片隅にピアノがポツンと置いてあるのをよく見かけたものだ。
もっと大衆的な飲み屋や居酒屋には「流し」もよく顔を出していたな・・・。
そんな日頃は誰にも弾かれることのないピアノは決まった曜日や時間だけ
ピアニストの女性がやって来て演奏を聴かせてくれるのだった。
店からも常連からも「センセ」と呼ばれる自分より少し年上の音大学生(?)のような
彼女達には大人の女性の魅力と美貌にちょっぴり憧れる存在だった。
今では考えられないくらいに景気の良かったあの頃、
大企業の幹部や中小零細の経営者、官僚連中も含めた
いわゆる社用族には熱烈なファンも多くて
今でいう追っかけみたいにセンセの出る店を先廻りするかのように通う親父達も多かったように思う。
ある意味下手なホステスよりも稼ぎも良かった気もするなあ。
何故かMさんには「センセ」の面影を見てしまうのは酔いの廻った感傷かもな。
Kに話すと笑いながらも否定しなかったのは案外的外れでもなかったのかも知れないが。
知らぬが花、直接問うような野暮はする訳ないさ。
店の開演前に外で待っていた俺に声掛けしてくれて中に招き入れてくれたのは
今日のバンドのリーダー的存在のサックスO氏だった。
一見すると何処にでもいそうな隣の家の庭で植木でも触ってるのが似合うような人生の先輩。
こちらも一旦演奏が始まると流石一家言お持ちのジャズメンであった。
M氏が一目置く存在と言うのも頷けるというものだ。
注)下記はリハーサル中のショットである
そんなこんなで今日も酔っぱらいオヤジの夜はジャジーに気分よく更けていく。
グッドナイ~ト♪♪
(了)
ライヴスポット ブラウニー http://brownie.is-mine.net/
宮岡信夫 http://www18.ocn.ne.jp/~trumpet/