新・私に続きを記させて(くろまっくのブログ)

ハイキングに里山再生、れんちゃんとお父さんの日々。

八一さん、初めまして…太宰さん、ぉ久しぶりです、はぃ フランス流日本文学入門(0)

2021年01月15日 | 文学少女 五十鈴れんの冒険

(今回のテクスト)
『こう読めば面白い! フランス流日本文学 -子規から太宰まで-』柏木隆雄(阪大リーブル)

[登場人物]
五十鈴れん
15歳の中学3年生。小さいときから内気で、人と話すことは苦手。好きなことは、文章を書くこと、絵を描くこと。将来の夢は、「エッセイストの人」。いじめで苦しんだ時期があるが、自殺は思いとどまり、この時間軸では謎の白い宇宙生命体とは契約していない。梨花という親友がいる。

五十鈴九郎(お父さん)
このブログの主。ひとり娘のれんを溺愛する、コロナで休業中の会社員。たまに広告を作ったり、本を作ったり、文章を書いたりしている。元左翼の活動家で、いまも労組を率いる。しかしお母さんに頭が上がらず、茶碗蒸しが大好きなところが、れんはちょっとかわいいと思っている……といいなあ。長男だが、夭逝した叔父の名をもらって「九郎」。お母さんには「クロくん」と呼ばれている。


(ある冬の日の夕方)
れん ただいま…。
ぁ…ぉ父さん、またソファで寝てる…風邪ひいちゃうよ…起きて……

お父さん  うーん。れんちゃん、お帰り…
いま起きるよ…でも…もう少し寝かせて…

れん …むぅ…だらしない…です!…
まずは、深呼吸…すーっ……ク・ロ・く・ん!起・き・て!

お父さん ごめん…!すぐ起きる!ご飯は、タイマーでセット済みだから!
って、なんだ、れんちゃんか。最近、お母さんに似てきたねぇ。

れん ふふふ。
ぁ…そのご本、ぉ父さん、また読んでる?

お父さん そうか、この本、れんちゃんにも貸したんだね。

れん ぉ父さんが、楽しそうに読んでいたから、興味が出て…ぅん。

お父さん 柏木先生は、バルザックの権威のフランス文学者だけれど、日本文学に関する造詣も、すごいねぇ。この本には、和食だとばかり思っていたメニューが、実はフレンチだったのか、と知る驚きがあるな。読み返すたびに、新しい発見がある。

れん ぅん…!難しいところも、あったけれど、学校の国語の授業で、わからなかったことが、よくわかった…気がする…よ!
でも、ぉ父さん、文学とか、お仕事以外に、あまり読まない…よね。
仕事でもないのに、どうしてこのご本、読む気になったの?

父 ああ。そうだね。
柏木先生が行った、会津八一に関する講演録を、親切な人に送っていただいてね。

れん 会津八一って…ぉ父さんの生まれた新潟の人だよね。歌人…だっけ?

お父さん そう、歌人であり書家であり、美術研究者だね。
八一の書は見たことがあるけれど、歌は初めて読んだ。なるほど、歌聖といわれるだけはあるね。
しかし先生の解説に出会わなければ、生涯食わず嫌いのまま、八一の佳さに気づくことはなかっただろうな。魚の頭蓋骨でも、そこに刃を入れたら、一瞬でパカーンと割れるポイントがあるというけれど、そういうポイントをクリティカルに突く、見事さ、爽快さ、痛快さだね。

れん このご本にも、八一さんの話…出てきた…ね。三好達治さんの「甃のうへ」の解説のところ。

お父さん この本を読む気になったのも、八一の歌がきっかけなんだよ。
ある歌をめぐるエピソードに、本筋とは全く関係ないところで、太宰治のある作品を思い出してしまってね。
講演で言及されていた、『フランス流日本文学』に、太宰論が収録されていると知って、取り寄せることにしたんだよ。

れん 中等部に上がってからは、好きなご本、自由に読んでもいい…って、いってくれたから、太宰さんのご本も、読んだ…よ…。新潮文庫の『晩年』は「昭和57年」生まれで、ぉ父さんのご本の部屋の主さんです…はぃ。
太宰さん、好きな…の?ぉ父さんの本棚、政治や、経済や、哲学や、歴史のご本ばかりなのに、太宰さんのご本は揃っている…から。

お父さん 高校に入ってからは、しばらく左翼活動で闘争一筋だったから、小説や詩集は売るか人にあげちゃったんだ。でも太宰だけは、なんとなく処分できなかった。『斜陽』の、人間は恋と革命のために生まれてきたのだという言葉が好きだったからね。刑務所に入ったときに差し入れてもらう本も、太宰の『お伽草子』のような楽しい本がいいんだ。漫画なら『いじわるばあさん』とかね。

れん 処分しなくて、よかった…よ…ぅん。私も太宰さん、大好き…だから!
柏木先生のご本を読んで、読みたい作品が、たくさん、あったから、ご本の部屋に、探しに、行った…んだ。

お父さん れん隊員、戦果を報告してくれたまえ。

れん はぃ。『フランス流日本文学』に出てくる人で、ご本があるのは、正岡子規さん、三好達治さん、太宰治さん、ヴェルレーヌさん、黒澤明さんはDVDがあります…はぃ。島崎藤村さん、菊池寛さんは、アンソロジーに入っていて、坪内逍遥さんと竹友藻風さんは、ありませんでした…はぃ。

お父さん 報告ご苦労。しかし、三好達治の本なんか、あったかな?

れん ボードレールさんの『巴里の憂鬱』の訳者さん、です…はぃ。このご本も昭和57年の新潮文庫で、主さんのお一人です…はぃ。

お父さん そうか、三好がボードレールを訳していたなんて忘れていたよ。
今ではれんちゃんの方が、お父さんの本棚に詳しそうだね。

れん そのご本、ノートをとりながら、熱心に読んでいるよ…ね。いつもの雑誌の、ブックレビューで、取り上げる…の?

お父さん うーん。あの雑誌も、いつまで続くかなあ。社長さんが変わっちゃってね。コロナ禍でコスト削減だし、新しい仕事を探さないといけないね。
この本は、仕事抜きに、きちんと読んでおきたくなったんだ。

れん そのノート、せっかく書いたのに、発表場所ない…かもしれない…の?それは、残念…。
じゃあ、完成したら、ノートだけでも、見せて…くれる?

お父さん もちろん! というか、休業中でヒマしてるお父さんのお勉強に、付き合ってもらおうか?

れん ぅん…! 任されました!

お父さん そろそろ夕飯の支度をしないとな。続きは、明日にしよう。
八一の話が出たから、のっぺを作りたいけど、時間がかかる。メインディッシュは、冷凍ハンバーグの温め直しとほうれん草のソテーだけれど、「日本海みそ」の具沢山お味噌汁にするか。和洋バラバラすぎ?

れん ぅうん!ぉ野菜たくさん、とれて、ぃい…ね!

(つづく)

れん近影


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