「文学少女の三題噺シリーズ」の続きです。
今日は2013年1月27日のツイートの再録です。
19:08
文学少女「くろまっくくん、今日のお題は『ツツジ』『コンロ』『異様な緊張感』よ!」
"@amano_toko_bot: 今日のお題は http://t.co/1RVe2X8W これよ、文字数はきっかり140文字!よーいスタート! #bot"
2013/01/27 Sun 19:08 From Mobile Web (M5)
19:21
「建礼門院徳子様が躑躅を摘んで降りてきはったんは、あの山道やいいますけどなあ」
洛北の雪の宿で女将が言った。
「法皇と徳子は男女の仲があったともいうが、あの対面は異様な緊張感だね」
「まあ」
女将が猪鍋(ししなべ)のコンロに火を点ける。
「躑躅ではなく牡丹ですけど」
2013/01/27 Sun 19:21 From Mobile Web (M5)
この三題噺シリーズでも、作者が気に入っている小話の一つです。今でもこのお題で、これ以外のバージョンを考えることができません。しかし、作者個人の趣味に走ってしまい、この三題噺を始めた所期の目的からはかけ離れてしまったのは反省材料です。
平家物語の舞台をめぐるフォトエッセイの企画で(予算不足で未完)、大原の寂光院を訪ねたことがありました。「ツツジ」「異様な緊張感」で、まず思い浮かんだのが、平家の大原御幸のシーンです。それ以外に思いつきませんでした。
生活感溢れる「コンロ」と、この大原御幸を、どう結びつけるかには、少し頭を悩ませました。結局、花つながりで、ボタン=猪鍋です。
大原といえば紅葉で、紅葉の季節には、ぼたん鍋ももう出てきます。鍋で牡丹といえば「猪」です。だから「鍋に火を点つけた」でいいのに、非近畿圏在住のその人を意識して「猪鍋」としています。あのときはTwitterの字数制限でできませんでしたが、「ししなべ」と読みも入れたかったなあ。
大原が舞台なのに、あえて「雪の」と書いて、紅葉のシーズンの秋を外しているのは、人混みと喧騒を嫌ってです。それに、大原の雪景は美しいですからね。
いまからでも手を入れたい所もありますが、お題をツイートしてから13分あまりで作ったこの小話は、即興ならではの緊張感、臨場感があります。修正は最低限に止めました。なお、この小話はフィクションであり、実在する旅館・人物等には関係ありません(お約束)。
そこから入るかと。不意打ちに冴えを感じます。国文科か史学科の大学院生さんかと思いました。
>即興ならでは
ごもっとも。なぜかはわかりませんが押し入れにしまってある「立川談志独り会(1〜5)」(三一書房)を思い出しました。
即興話芸プラス4コマ漫画的リズム感、そして季節感ありで秀逸だなあと素直に感心しました。
ではでは。
過分の言葉ありがとうございます。
大原女の格好は、建礼門院の装束がルーツだそうです。
寂光院も三千院も皇室ゆかりで、いまも御所に出入りできることに、非常に高いプライドを持っている方々でした。こういう女将も、昔ならいたかもしれません。最近はどうでしょう。
大原、猪鍋出す所あるのかな?と調べると、ありました。ただし部屋ではなくレストランでのご提供。女将と会話を楽しみながら、というのはむずかしそうです。