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源氏物語をギャルゲーとして読めば

2012年01月15日 | 源氏物語・浮世絵・古典・伝統芸能
iPadやスマフォなどのスマート携帯端末は、タテ・ヨコでくるくる画面表示が変化する。

 「リキッド・デザインというんですよ」

 と、教えてもらった。

 「なるほどなー。たしかに、紙の本はポマードのようにガッチリ固めないといけないからなー」

 「そうです、そうです。デジタルメディアは表示させるデバイスが、それぞれ違うわけですからね」

 デジタルメディアはリキッド。紙の本はソリッド。


 「源氏物語の世界」サイトは素晴らしい。

 しかしWebにも制約がある。本文・ローマ字版(読み)・現代語訳・注釈でページが分かれることになる。初心者には最初はとっつきにくかった。

 初心者には3段組の古典文学全集がいちばん。本文はメインの中段、注釈は上段、現代訳は下段、ローマ字版はルビを組み込めば済む。1ページでマルチタスクなのが紙の本のメリット。

 源氏は要するに『Fate』のような大河ギャルゲーだと思えばわかりやすい。

 青い子をまず攻略し(紫の上ルート)、赤い子に翻弄され(撫子こと玉鬘ルート)、最後は白く可憐に見えた黒い子に地獄に落とされる(女三の宮ルート)。宇治十帖は、お人形さんの運命と救済の可能性を描いた幻のイリヤルートに相当すると、こじつけておこうか。

 源氏物語には「桐壺」「帚木」二つの序があるといわれる。元々は、正系である本編の桐壺系の物語(a系)があり、そこからスピンオフしたのが傍系の帚木系の物語(b系)。

 a系では源氏の誕生から追放、そして准太上天皇となるまでの栄華物語。

 「光源氏なんていわれちゃってさ、若い頃には裏では人にはいえない失敗もたくさんしているのよねー」と性格の悪い女房の陰口から始まるのが、第2帖の「帚木」。空蝉はパッとしない人妻、夕顔は変死、末摘花は顔の不自由な人、そして夕顔の遺児・玉鬘は結局髭黒に奪われる。

 a系のヒロインはb系にも出てくるが、その逆は原則としてない。これはa系がまず書かれ、b系が書かれたことを意味する。

 a系とb系のオールスター出演が「若菜」以降の怒濤の第二部(c系)である。しかし出家の願いをかなえられず男の愛の形代(人形)として死んだ紫の上の無念はどうなるのか。この女人の人生と救済の可能性を問うたのがクライマックス「宇治十帖」である。

 このa系→b系→c系→d系の構成を理解しておけば、「夕顔」で恋人を亡くして悲嘆にくれその遺児を必死に探していたはずなのに、次の「若紫」ではケロリと忘れて、年端もゆかぬ少女にハアハアしている謎も解ける。もともとは別系列の作品だったのだ。 

 (しかし女三の宮降嫁には、朱雀院の父子相姦の願望が隠れている。源氏と朧月夜の密会が露見しても、「し、仕方ないよね、あんな美しい人なら。まろだって女なら」(ポッ)と許してしまう朱雀は、女を寝取られてかえって嬉しそうである。今度は自分の娘を美しい男に犯させる。何というヘンタイだろう。ただし、朱雀院が源氏に差し出したのは、我知らず、源氏を抹殺できず失意のうちに死んだ弘徽殿大后の怨念を果たすことであった。源氏をピンチに陥れるのは、朧月夜、弘徽殿女御、そして女三の宮と、大后の血を受け継ぐ女たちである。左大臣家の血を継ぐ嫡男夕霧は真面目だが凡才で、結局漁夫の利を得たのは明石一族だった。)



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4 コメント

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Unknown (焚火派GALゲー戦線)
2012-01-21 11:54:28
 遅レス失礼します。
 「アンサイクロペディア」掲載の「源氏物語」開設です。
http://ansaikuropedia.org/wiki/%E6%BA%90%E6%B0%8F%E7%89%A9%E8%AA%9E
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Unknown (kuro-mac@osaka)
2012-01-21 16:16:18
ネタとはいえ、まだまだかなー。

ただ、コミケのたとえは私もよく使います。「源氏物語」には、作者単独説と複数説がありますが、紫式部はひとりでも「同人」なんだと。白楽天の骨格を借り、先行する日記文学や歌物語で肉付けしていったわけで、これ自身が同人的ですよね。さらにメディアミックスもあり、商業利用も政治利用もある。

直筆原稿が残らない限り、この論争にはあまり意味がないよ、一人でも同人だと考えた方がいい。たとえるなら、鎌倉時代にはすでに、「月姫」は失われ、佐々木少年と武梨えりしか残っていないようなものです。現代に流布する青表紙系テキストをほぼ確定した定家も、天才的な芸術家兼詐欺師。これはもう大変なことです。

源氏の時代、主語が省略できるのも、ヲタ社会で「はがない」で通じるのも似て、貴族社会という狭い読者のコミュニティサイトを前提しているからです。

主語がなくとも、女性社員のビミョーな謙譲語のニュアンスで誰のことか伝わるのは、今だって同じ。
「中之島」という共通の地名も、「……にお出かけです」ならご隠居、「……にお出かけでお戻りになりません」なら社長。リーガロイヤルのお偉方パーティで、社長には接待の任務があり、ご隠居にはない。「……に行ってます」なら営業がお得意先回り。「また……なんですけど」と語尾が濁れば、京阪沿線の課長がお得意に顔だけ出してノーリターン。「……でゴン太くんです」なら黒幕が怒りのデモらしい、などなど。
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Unknown (焚火派GALゲー戦線)
2012-01-21 22:29:14
>鎌倉時代にはすでに、「月姫」は失われ、佐々木少年と武梨えりしか残っていないようなものです

 聖書や仏典もこれに近いですかね。

>ヲタ社会で「はがない」で通じるのも

 かつて、18禁ゲーム「月は東に 日は西に」をメーカー自ら「はにはに」としていたのを思い出します。
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Unknown (kuro-mac@osaka)
2012-01-21 23:47:52
いや、テキトーなたとえで、またセンセ激怒しそう。

近世の事例ですが、『信長公記』には数十種類の写本のヴァリアントがあるとされます。

http://gold.ap.teacup.com/multitud0/164.html

桶狭間の奇襲神話信仰が真珠湾攻撃に結びついたように、それ虚構だからってことは多いですよね。天皇幻想を支えてきたのも源氏幻想なんです。

〈やまと魂〉に関する覚え書
http://gold.ap.teacup.com/multitud0/231.html
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