三太さんは、髭無じゃらな、ごつい感じの人なのに、犬の事となると、
それはそれは優しいのです。
帰り支度をする息子に太田屋さんは沢山のお米や味噌、塩など
普段親子で来ていた時と同じように
荷造りをしてくれました。来る時は乾燥させた薬草だけなので、
量は同じ位ですが帰りの荷物は
凄く重いです。それに子犬の白もいます。息子は、
これは途中で野宿になるかもしれないと、
思いました、すると三太さんが「途中まで送っていってやるよ」と言うではありませんか、、
そして、「町はずれ、位には追いつくから、ゆっくり行っててくんな」と
自分は慌てて白を連れ自宅へ戻りました。
優しそうに眺めていた、太田屋さんは、「他に必要な物はないかね?」
と荷物の他に、薬種の代金もくれるではありませんか、
いつもは父親に任せきりで、
お屋敷の美しさに、気を取られていた息子は、どうしたらいいか、
とても迷いました。
そんな息子の気持ちを、推し量った様に、
太田屋さんは「これは何時もと同じだから
安心していいのだよ、違うのは白だけだから」と微笑みました。
息子は、重い荷物を背中にしょって、
ゆっくり町の中を見物しながら町はずれまできました。
町はずれには、小さなお堂がありました。
すると三太さんが追いついて来ました。
白を懐にふうふう言いながらかけてきます。
二人はお堂の縁側で少し休む事にしました。
続く