週末から那須温泉に行ってきた。
前に行った「那須塩原温泉」とは、山ひとつ挟んだ位置になるが、
塩原とはまた違った泉質の湯で、非常にいい温泉だった。
泊まったホテルは
江戸時代から続く老舗旅館らしいが、「那須の大火」で焼失し、現在の地に移転したそうだ。
焼失前の松川屋(画像転載)
ちなみに、いわゆる「那須の大火」で検索してみると、
那須地方は塩原を含めてこれまでに何度か大火を経験しており、
どの年代の「大火」で焼失したのかが判明しなかったので、
改めて旅館に確認の電話を入れた。
現在の主である会長に直接お聞きしたところによると、
終戦の年の昭和20年8月1日未明、新潟県長岡市に空襲に向かうアメリカ軍の爆撃機編隊が
那須町上空を通過した折、町に空襲警報が発令され、
避難に向かった町民が当時灯りに使用していた「ろうそく」を消し忘れた
その火が因で大火を招き、松川屋も延焼、焼失したとの事だった。
(出火日は8月1日説と2日説があるが、那須町役場に問い合わせて確認した)
余談になるが、この大火での怪我人は、一人も出なかったと言う・・・。
さて温泉だが、これは本当にいい湯だった。
これまで、たくさんの温泉を巡ったが、松川屋の硫黄泉は適度の硫黄分と特有の香り、
湯温、肌触りとも名泉と言っていいだろう。
ホテルの建物はかなりの規模だが、ご多分に漏れずこの時代の温泉旅館だから、
経営状態は厳しそうなたたずまいだったが、温泉の素晴らしさでそれを充分にカバーできた。
あれほどの名泉なのだから、なんとか盛り返す手立てが有るのではなかろうか。
朝の目覚めに何度目かの入浴をしたのだが、
8人ほどでちょうど良い位の露天風呂から、薄墨色のなだらかな那須の稜線を眺め、
稜線よりも淡い色の雲の流れを見上げると、艶めいた曲線を描いてゆっくりと揺蕩う(たゆたう)。
鳥の声さえも消えた日の出間近の静寂と耳に心地いい湯の源泉のつぶやきを楽しんだ。
これからの時期、凛とした寒気の中の湯の優しさを味わうにはもってこいの温泉場だろう。