Kuniのウィンディ・シティへの手紙

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浦和を愛した画家たち「芸術家たちの住むところ」展うらわ美術館で開催中! 彫金の人間国宝、内藤四郎と増田三男 <その4>

2022-08-18 | アート
浦和は伝統工芸の彫金で、内藤四郎(1907〜1988)と増田三男(1909〜2009)という重要無形文化財保持者(人間国宝)を2人も輩出している。2人が師事した近代陶芸の巨匠富本憲吉(1886〜1963)の壺や2人とのコラボ作品も展示されている。

東京出身の内藤は、亡くなるまでの70年間彫金に励み、新たな表現にも挑戦し続けた。1961年浦和に転居、モダンと伝統が融合し昇華されたデザインと色調で崇高な世界を作り出している。『柳文銀香炉』は、輝く黒味がかった銀色の壺に、おさえた金色の柳がくねりながら主張している。見事に江戸琳派が現代の伝統工芸に蘇ったかのよう。


『十字星 銅花器』1982年資生堂アートハウス蔵 後期展示 展示画像は図録p 213より


『柳文銀香炉』1982〜84うらわ美術館蔵 後期展示 展示画像は図録p 217より

内藤より3歳年下の増田は、現在のさいたま市の緑区に生まれ、生涯を浦和で過ごし、武蔵野の自然をベースに自然や動物を作品に反映させた。旧制浦和中学で美術講師をやり、県展顧問を務め、県内の後進の育成にも努めた。『金彩黒銅雑木林月夜 箱』は、彫金の小さな箱に武蔵野の雑木林と月を配置し、リズミカルな木の図案で金色の月に照らされた、冬の夜の神々しい空間を表現している。気品に満ちた雰囲気が眩い。『金彩銅筈 麦秋』は、秋の麦畑を茶色をベースに緑と黄色の交差する線で、琳派を思わせるような図案でモダンに仕上げている。両作品ともまさに粋。


『金彩黒銅雑木林月夜 箱』1992年うらわ美術館蔵 展示画像は「市報さいたま 浦和区版」2021年12月号の表紙より


『金彩堂筈 麦秋』1972年うらわ美術館蔵 後期展示 展示画像は図録p 219より

展覧会場で、増田三男が恩師で高田誠にも教えを受けた洋画家、小川游と内藤四郎の息子の日本画か内藤五琅へのインタビュー動画が放映されている。この『小川游と内藤五琅に聞く「浦和絵描き、その思い出」』(2022年5月24日 展覧会場内にて収録)は、うらわ美術館YouTubeチャンネルでも動画を公開している。https://www.youtube.com/watch?v=00kGNzxS3no&t=726s
うらわ美術館収蔵作家の2人に本展覧会出品作家や、この地域にまつわる思い出などを聞いている。


さて、最後の現代作家のコーナーでは、抽象画家の杉全直(1914〜1994と櫻井英嘉(1935〜1999)、3人の彫刻家の津久井利彰(1935〜)、林武(1956〜)、重村三雄(1929〜2012)、現代作家の小沢剛(1965〜)の作品などが展示。そこを横断し、最後の部屋は、浦和在住で現在も活躍中の女性作家、福田尚代の作品で締めくくられた。その5では福田の作品を紹介したい。

                                   文責 馬場邦子
                                           〜その5へ続く〜




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