詩集

海の見える古本屋で
詩集を買った

わたしはとても驚いた
だって大きな本屋に行っても
無かったもの

こんなにいい香りのする本

シミや鉛筆で書かれたあとが
昔読んだ人を想像させる

これはどこかの大学の
教科書ではなかったのかと

目を閉じれば浮かんでくる
平成５年の大学生

ゆるやかな午後の講義
今日はわたしが受けましょう

春の日

えいっ、と写真を破り捨てた
あの春の日

評論家の言うことなんて
気にすることなかった

どっかのインテリの言うことなんて
気にすることなかった

今、振り返りバラバラの写真を
一つ一つつなぎ合わせれば

勇気だけでも１００倍輝いている

無駄なことなんて一つもなかった

だけどね…
あの春の日、初心を忘れていたんだ

紫陽花

大好きな紫陽花を
まだかまだかと待っている

気が早いけれど
カタツムリを探している

梅雨を彩る紫陽花を
まだかまだかと待っている

雨の中散歩をすれば
紫陽花の葉っぱが顔を出している

変わらずに

おめでたい性格だねと言われる
そうでしょと笑う

小さい頃あんまりうつむいて帰るから
お金をよく拾って交番まで届けた

変わった石とか雲母とかも拾った

あれからずいぶん経つけれど
あのときと全く同じことをやっている

毎日うつむきながらキーボードを打つと
知らない誰かに励まされる

可愛い花や虫ともおしゃべりできる

だからいつまでも
変わらないわたしでいようと思う

好きな気持ち

何が気に入らないのか
挨拶すらもしないおばさん

普段はいい人で通っている

おばさん、わたしは
人に好かれる方法なんて勉強しないよ

子供のころから見てきたもの
大人ってこういうものだと

それでも、おばさん
今、わたしには好きな人がいる

その中にはあなたと
同じ歳くらいの人もいる

無愛想な人だって
好きになることがある

だから人に好かれることより
好きな気持ちが大切だと気づいたんだ