とね日記

理数系ネタ、パソコン、フランス語の話が中心。
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シネヴィヴァン六本木、ノスタルジア(1983):タルコフスキー

2018年11月06日 18時15分20秒 | 映画


学生時代の思い出の映画のうちの1つ。日本で上映されていたのは1984年の3月から5月のようだから、僕が観たのは34年前のことだ。

上智大学でフランス語を専攻していた女の子に誘われて、たびたびこのようなミニシアター系の映画を観に行っていた。

携帯やインターネットがなかった当時の若者の情報源は『ぴあ』をはじめとする情報誌だった。映画やコンサート、演劇の情報満載で、デートのときの必須アイテムである。

1984年10月号


雑誌の『ぴあ』の発行は2011年7月までに終了してしまったが、1999年にチケット販売専用のWebサイト「チケットぴあ」を開始していたし、今年の8月にはスマホアプリ版の「ぴあ」がリリースされている。


 


今なら日本中、いや世界中のどこに住んでいてもAmazon Prime Videoなどで、『ノスタルジア』のようなミニシアター系映画をいつでも、どのような場所でも観れるわけだが、当時は東京をはじめ、限られた大都市に住んでいないと無理だった。テレビで放送されたり、ビデオで観れるようになったのはだいぶ後になってからだから、カルチャー・デバイドがあったのだと、あらためて気づかされた。

僕が大学を卒業したのは1987年。社会人になると、映画や演劇に関心がある友達が周りにいなくなり、このような映画を観に行くこともなくなった。理系の大学に通いながら、文系の友達とお付き合いしていた学生時代は、今になって思うと貴重な時間だった。一緒に映画を観に行ける友達は大切だ。


シネヴィヴァン六本木

この映画は六本木WAVEにあったシネヴィヴァン六本木という映画館で上映されていた。当時としては斬新なビルで、オープンしたのは1983年11月18日。1980年代~90年代、最先端の文化を好む若い客層をひきつけていた。最後の映画が上映されたのは1999年12月だった。

取り壊されたビルの跡地は、その後整備されて今では六本木ヒルズが建っている。六本木WAVEは、おそらくビルの前の広いスペースあたりにあったのだと思うが、思い出の場所は痕跡すらも残っていない。





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【ミニシアター再訪】第4回 六本木からのNew Wave・・・その1 シネ・ヴィヴァン・六本木 前編
http://1.33.180.194/comunity/18/act5.html

【ミニシアター再訪】第4回 六本木からのNew Wave・・・その1 シネ・ヴィヴァン・六本木 後編
http://1.33.180.194/comunity/18/act6.html

単館上映【六本木】CINE VIVANT
http://moviepamphletlabo.blog120.fc2.com/blog-category-69.html


ノスタルジア(1983)

若者のデート向きではないこの映画は1984年の3月に公開された。これを観るために上智大の彼女と初めてシネヴィヴァン六本木を訪れた。

【ストーリー】
自殺したロシアの作曲家の取材のためにモスクワからイタリアに旅行に来ている詩人アンドレイ・ゴルチャコフは、温泉の街バーニョ・ヴィニョーニで老人ドメニコに出会う。
ドメニコは世界の終末を信じ、7年間にもわたって家族を幽閉したため周囲からは奇異な目で見られていた。
彼はアンドレイに「ロウソクに火を灯し、それを消すことなく温泉の広場の端から端まで渡れたら、世界が救済される」と言い残し、ローマに発つ。
マルクス・アウレリウス像の下で人々に目を覚ませとアジテーションを行ったドメニコは人々の見守る中で焼身自殺。
その頃、アンドレイはドメニコの言葉通り、ロウソクに火を灯し温泉を歩き出していた……。

ということだが、これでは何のことかわからない。34年前に観たときも、ストーリーがあって無いような芸術作品に戸惑った。イタリアを訪れている中年のロシア人の詩人が主人公だ。故郷ロシアの生まれ育った家や家族が、ときどき白黒の心象風景として映される。静寂と沈黙の中でゆっくりと流れる時間の中、思い出と現在が交錯し、望郷の念を強めていく。

Blu-ray&DVD『ノスタルジア』CM「故郷」篇


Blu-ray&DVD『ノスタルジア』CM「ロウソク」篇



水が奏でる音と美しい映像が印象に残る映画だ。セリフの背景が明かされないから想像するしかない。意味や解釈は観る人それぞれに委ねられる。ネタバレのあらすじを読んでも、わけがわからないはずだ。いったいどのような結末を迎えるのか。

始まりから終わりまで故郷や家族へのノスタルジーに満ちたこの映画は、次のような映像で締めくくられる。







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僕にとってはデートの思い出と重なるノスタルジアな映画だ。一緒に観た上智大の女の子は今ごろ、どうしているだろうか。

ご覧になりたい方は、DVD、Blu-ray、のほかAmazon Prime Video、YouTube映画でどうぞ。



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「ノスタルジア」あらすじネタバレ結末と感想
https://mihocinema.com/nostalghia-19122

アンドレイ・タルコフスキー(ウイキペディア)監督の映画: Amazonで検索 Prime Videoを検索

アンドレイ・タルコフスキー映画作品
http://www.imageforum.co.jp/tarkovsky/film.html

武満徹インタビュー タルコフスキー追悼
http://www.imageforum.co.jp/tarkovsky/tkmt.html


ミツバチのささやき(1973)、エル・スール(1983)

シネヴィヴァン六本木で観た映画では、次の2本も忘れられない。どちらも1985年の前半に上映された。近いうちに観てから紹介することにしよう。

『ミツバチのささやき』 予告編




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「ミツバチのささやき」あらすじネタバレ結末と感想
https://mihocinema.com/mitubati-sasayaki-15485


エル・スール(字幕版)




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「エル・スール」のネタバレあらすじ結末と感想
https://mihocinema.com/el-sur-16602

ビクトル・エリセ(ウイキペディア)監督の映画: Amazonで検索 Prime Videoを検索

ビクトル・エリセを発見せよーースクリーンでしか味わえない“不滅の映画”の奥行
https://realsound.jp/movie/2017/04/post-4712.html

巨匠ビクトル・エリセ監督による永遠の名作であり、代表作の2本、『ミツバチのささやき』『エル・スール』ブルーレイ化
https://www.hmv.co.jp/fl/33/815/1/


 

 
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2 コメント

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想い出の映画、想い出の人 (やす(Krtyski))
2018-11-07 15:08:29
とねさん

このプログでは普段お目にかかれない、とねさんの新しい内面を拝見した思いです。

学生時代、独身社会人時代のデートで映画を見に行ったことは、今思えば一度もなかったことを思い出しました。今の家内とはよく一緒に映画にゆきますが...

学生時代一時期付き合っていたとある人とは、デートのたびに詩の交換をしていました。バリバリの理系の私にも言葉と戯れて充足感を得る側面があったことを自分ながらに発見した貴重な経験でした。

言葉を紡ぎ交換するのは、深い安心感、非常な羞恥心、激しい高揚感、虚実ない交ぜの夢など、あることないことを言葉にしたとしても、結局丸裸の等身大の自分をさらけ出すものでした。その非日常性がある意味面白かったのを覚えています。

彼女とは分かれても、友人としての付き合いや年賀状のやりとりは続いていました。残念なことに彼女は40台で亡くなり、若き日に心を共有した経験が特別のものに変化してから消えてゆく喪失感と悲しさ、察するに余るご主人の気持ちを感じるつらさなどを懸命に言葉にして、最後の詩を彼女の墓前に捧げました。

「彼女は今いずこに...」という1文で、なんだかとても懐しい気持ちになりました。

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Re: 想い出の映画、想い出の人 (とね)
2018-11-07 15:36:48
やすさんへ

理系以外の人とお付き合いするのは、とても大切ですね。やすさんがお付き合いされた女性は若くしてお亡くなりになってしまったそうですが、さぞお辛かったでしょう。僕にもすでに亡くなってしまった女友達が3人ほどいます。

この記事に書いた女の子と最後にあったのは僕が30歳になる少し前、彼女が結婚する直前でした。ご主人になる人がアメリカ駐在になるということで、アメリカでの新婚生活にかける期待に胸を膨らませていましたね。携帯やインターネットが普及する前のことですから、住所と電話番号だけが頼りですが連絡先を無くしてしまったので消息不明です。彼女はSNSとかしたり理系ブログに興味をもつタイプではないので、僕のブログを見つけることはないでしょうね。もしかすると「タルコフスキー」や「ノスタルジア」で検索することはあるかもしれません。または、若いころのことはすっかり忘れて日常生活のことだけにしか関心をもたないお母さんになっているかもしれません。(笑)

連絡先不明で、消息を知りたい友達は何人かいますが、気長に待つことにします。

ところで、シネヴィヴァン六本木で上映されていた映画を順番に検索してみたのですが、Prime Videoで見れるものは、ほんのわずかだということがわかりました。80年代、90年代でもこのような映画を見に行く人は少数派でしたから、仕方がないことかもしれません。
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