とね日記

理数系ネタ、パソコン、フランス語の話が中心。
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統計力学(裳華房): 小田垣孝著

2008年02月14日 00時06分21秒 | 物理学、数学
統計力学を学ぶ人のために:芦田正巳著」がとても面白かったので、もう少しこの「つぶつぶの世界」に浸ってみようと読み始めたのがこの「統計力学(裳華房): 小田垣孝著」だ。アマゾンのレビューでも評判がよいし、この本の理解を助けるために用意されたJavaシミュレーションのページの出来がすばらしいからでもある。

この本のJavaシミュレーションのページ:
http://www.cmt.phys.kyushu-u.ac.jp/virtuallab/phys/statphys/

けれどもこの本は僕にとって少し難しすぎたようだ。ページ数が少ない割に内容が豊富で、数式の導出過程がかなり省略されている。特に量子統計力学についての説明以降はさっぱりわからなかった。ちょうど中学2年生が高校2年生の数学の教科書を無理して読んでいるような状態。

理解できないながらも1つだけ驚いた箇所があった。それは「負の温度」について解説されていたところだ。通常、熱力学第1法則は温度(T)、圧力(P)、内部エネルギー(E)、エントロピー(S)、体積(V)、化学ポテンシャル(μ)、粒子数(N)について次のような全微分の方程式であらわされる。

dE = T*dS - P*dV + μ*dN

これに対し磁化(M)と磁場(H)を考慮した場合の熱力学第1法則を式であらわすと次のようになる。

dE = T*dS - P*dV + H*dM + μ*dN

この式は T <0 の範囲でも成り立っているというのがポイントで、Tが絶対温度であることを考えると、なんと絶対零度より低い温度もあり得ることが予想されてしまうのだ。摂氏でマイナスの温度ではなく、絶対温度でマイナスの温度が存在することはじめて耳にした。

この奇妙なマイナスの温度は実験によって実現できることが知られていて、十分低温で磁場の中に置かれた磁気モーメントの集団をつくり、瞬間的に磁場を反転させると、各磁気モーメントが追随して方向を反転させるのに時間がかかるため、しばらくの間多くの磁気モーメントが高いエネルギーの状態にとどまり、マイナスの温度の状態になるそうなのだ。すごい!

というわけで、これ以上詳しいレビューを書けないのが悔しいところだが、目次だけ紹介しておくことにしよう。

再チャレンジしたいところだが、同じ本を読んでもわかりそうにないので、次は「統計力学 (岩波基礎物理シリーズ):長岡洋介著」 にトライすることにした。

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統計力学(裳華房): 小田垣孝著」の目次:

第1章:熱力学の要点
平衡状態と過程 
熱力学の基本法則
いくつかの定義と公式
相転移

第2章:熱力学から統計力学へ
2つの系の熱的接触
微視的エントロピー
古典理想気体

第3章:アンサンブル理論とミクロカノニカルアンサンブル
アンサンブルの理論
リウビルの定理
ミクロカノニカルアンサンブル
2準位系
ビリアル定理

第4章:カノニカルアンサンブル
熱溜に接した系
分配関数の物理的意味
古典理想気体
調和振動子の集団(古典系、量子系)
常磁性体(一般的な考察、古典系、量子系)
2準位系再考(熱溜に接した2準位系、負の温度)
エネルギーのゆらぎと比熱
いくつかの応用(固体と気体の相平衡、ビリアル定理)

第5章:グランドカノニカルアンサンブル
熱・粒子溜に接した系
いくつかの応用(古典理想気体、局在した粒子系、固体と気体の相平衡再考)
粒子数のゆらぎと圧縮率

第6章:T-Pアンサンブル
熱・圧力溜に接した系
いくつかの応用(古典理想気体、鎖状高分子の状態方程式、1次元気体の状態方程式)
体積のゆらぎ

第7章:量子統計力学入門
密度演算子
いろいろなアンサンブル
カノニカルアンサンブルの例
多粒子系
ボーズ分布とフェルミ分布
理想気体

第8章:多原子分子気体の性質
多原子分子
異核2原子分子
等核2原子分子

第9章:理想フェルミ気体
基本公式
絶対零度における性質
有限温度における性質(一般的考察、高温および低音の極限における性質)

第10章:理想ボース気体
基本公式
高温極限における性質
低音における振舞とボース - アインシュタイン凝縮
いくちかの応用(空洞放射、格子振動のデバイ模型)

第11章:相転移
はじめに
イジング模型の相転移と平均場近似
ランダウ理論(2次相転移、1次相転移、平均場近似の妥当性)
スケーリング理論
実空間くり込み群の方法

付録
ルジャンドル変換
位相空間における平均
磁気モーメントの運動
ルジャンドル変換とラプラス変換
フェルミ - ディラック積分
ボース - アインシュタイン積分
ギブスのパラドックス

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