ラプラスの『天体力学』のフランス語版(原書)と英語版を無料で読めるページを見つけたので紹介しておこう。オンラインで読めるほか各種ファイル形式でダウンロードできる。
原書フランス語の書籍は、次のリンクから無料で読める。
第1巻 第2巻 第3巻 第4巻 第5巻
英語版は第4巻まで無料で読める。英語版は全4巻である。翻訳者は第4巻の訳出を終え、刊行された年に亡くなっている。
第1巻 第2巻 第3巻 第4巻
原書(クリックで拡大)
日本語への翻訳は2013年の5月に完了して発売されている。
全5巻完結!:ラプラスの天体力学論(日本語版)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/a720b0cfb775d00625763f87a56b2414
原本著者のピエール=シモン・ラプラスはフランスを代表する数学者の一人だ。
ピエール=シモン・ラプラス:ウィキペディアの記事
(Pierre-Simon Laplace, 1749年3月23日 - 1827年3月5日)はフランスの数学者。「天体力学概論」(traite intitule Mecanique Celeste)と「確率論の解析理論」や「確率の哲学的試論」という名著を残した。77歳没。ラプラス変換の発見者。決定論者としても知られる。これから起きるすべての現象は、これまでに起きたことに起因すると考えた。ある特定の時間の宇宙のすべての粒子の運動状態が分かれば、これから起きるすべての現象はあらかじめ計算できるという考え方である(ラプラスの悪魔)。
本書はニュートン以来のすべての重要な業績を概説し、さらに多くの新しいアイデアと結果を含んでいる。「天体力学」という言葉を初めて用いたのはラプラスである。
ラプラスは本書をナポレオン皇帝に献呈した。ナポレオンはラプラスに対して、 「お前の書いた本は不朽の大著作だと評判が高いが、神のことがどこにも出て来ないじゃないか」とからかうと「陛下、私には神という仮説は無用なのです」と言ったというのは有名な話。(ナポレオンはラプラスより20歳年下である。)
書名は「天体力学」であってもその内容は惑星や衛星の軌道計算、惑星大気や海洋の流潮汐理論(流体力学)、地熱の計算など広い範囲をカバーし「天体物理学」と呼ぶにふさわしい。
ラプラスが生まれたのはニュートンの死から22年後、ラプラスの天体力学論第1巻が出版されたのはニュートンのプリンキピア第3版が出版されてから73年後、ラプラスが50歳のときである。
ラプラスの『天体力学』は5巻16編からなり、1799年から1825年にわたって出版された大著である。(第5巻を出版したのはラプラスが75歳、亡くなる2年前のことで、ナポレオンの死後4年たっている。)
第1巻では、ニュートンやケプラーの運動法則を解析的に説明する。第2巻では2次曲面をもった均質な楕円体の引力の問題から、有名なラプラスの2階偏微分方程式を発見し、また、海の潮汐の解析と実測との比較の結果も報告する。第3巻では、惑星が不規則運動をする原因として、太陽の扁平率や惑星の軌道の離心率や傾斜角などを挙げ、また、惑星の運動の解析と実測から、エーテルの存在を否定している。第4巻では、衛星の不規則運動の原因のほかに、液体の毛管作用についての解析結果と実測結果の比較を報告する。第5巻では音の速度式のほかに、流体や水蒸気の運動方程式を提案している。
各巻目次
第1巻
第1編:釣り合いと運動の一般法則
第2編:万有引力と天体の重心の運動とに関する法則について
第2巻
第3編:天体の形状について
第4編:海と大気の振動について
第5編:天体の、それらの重心の周りの運動
第3巻
第6編:惑星の運動の理論
第7編:月の理論
第4巻
第8編:木星、土星および天王星の衛星の理論
第9編:彗星の理論
第10編:宇宙系に関する諸点について
第5巻
第11編:地球の形状と自転について
第12編:球の引力と斥力、および、弾性流体の釣り合いと運動法則について
第13編:惑星を覆っている流体の振動について
第14編:天体の、自分の重心の周りの運動
第15編:惑星と彗星の運動について
第16編:衛星の運動について
余談: 高校生のみなさんには理解できなくても、少しだけ本書のページを見てほしい。みなさんが学校で学んでいる三角関数や微分積分が大活躍しているのがわかると思う。微分積分の記号やsin, cos, tanのように三角関数が使われだしたのは17世紀で、18世紀頃までには定着した。指数関数と三角関数の間の関係をあらわした「オイラーの公式」が発表されたのは1748年(ラプラスが生まれる1年前)だ。つまり現在の高校3年までに学ぶ数学は18世紀中ごろには完成していたのである。
江戸時代中ごろ、伊能忠敬が生まれたころのことだ。
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2019年12月20日に追記:
日本語版の分量はフランス語版にくらべて分量が少ない。この理由は原文を端折って日本語訳している箇所があるからのようだ。つまり、逐語訳されていない。また英語版は大量の脚注があるため原書に対してもだいぶ分量が多い。このご指摘は @subarusatosi さんからいただいた。
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関連記事:
全5巻完結!:ラプラスの天体力学論(日本語版)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/a720b0cfb775d00625763f87a56b2414
日本語版「プリンキピア」が背負った不幸
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/bff5ce90fca6b8b13d263d0ce6fc134e
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英語版は第4巻まで無料で読める。英語版は全4巻である。翻訳者は第4巻の訳出を終え、刊行された年に亡くなっている。
第1巻 第2巻 第3巻 第4巻
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日本語への翻訳は2013年の5月に完了して発売されている。
全5巻完結!:ラプラスの天体力学論(日本語版)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/a720b0cfb775d00625763f87a56b2414
原本著者のピエール=シモン・ラプラスはフランスを代表する数学者の一人だ。
ピエール=シモン・ラプラス:ウィキペディアの記事
(Pierre-Simon Laplace, 1749年3月23日 - 1827年3月5日)はフランスの数学者。「天体力学概論」(traite intitule Mecanique Celeste)と「確率論の解析理論」や「確率の哲学的試論」という名著を残した。77歳没。ラプラス変換の発見者。決定論者としても知られる。これから起きるすべての現象は、これまでに起きたことに起因すると考えた。ある特定の時間の宇宙のすべての粒子の運動状態が分かれば、これから起きるすべての現象はあらかじめ計算できるという考え方である(ラプラスの悪魔)。
本書はニュートン以来のすべての重要な業績を概説し、さらに多くの新しいアイデアと結果を含んでいる。「天体力学」という言葉を初めて用いたのはラプラスである。
ラプラスは本書をナポレオン皇帝に献呈した。ナポレオンはラプラスに対して、 「お前の書いた本は不朽の大著作だと評判が高いが、神のことがどこにも出て来ないじゃないか」とからかうと「陛下、私には神という仮説は無用なのです」と言ったというのは有名な話。(ナポレオンはラプラスより20歳年下である。)
書名は「天体力学」であってもその内容は惑星や衛星の軌道計算、惑星大気や海洋の流潮汐理論(流体力学)、地熱の計算など広い範囲をカバーし「天体物理学」と呼ぶにふさわしい。
ラプラスが生まれたのはニュートンの死から22年後、ラプラスの天体力学論第1巻が出版されたのはニュートンのプリンキピア第3版が出版されてから73年後、ラプラスが50歳のときである。
ラプラスの『天体力学』は5巻16編からなり、1799年から1825年にわたって出版された大著である。(第5巻を出版したのはラプラスが75歳、亡くなる2年前のことで、ナポレオンの死後4年たっている。)
第1巻では、ニュートンやケプラーの運動法則を解析的に説明する。第2巻では2次曲面をもった均質な楕円体の引力の問題から、有名なラプラスの2階偏微分方程式を発見し、また、海の潮汐の解析と実測との比較の結果も報告する。第3巻では、惑星が不規則運動をする原因として、太陽の扁平率や惑星の軌道の離心率や傾斜角などを挙げ、また、惑星の運動の解析と実測から、エーテルの存在を否定している。第4巻では、衛星の不規則運動の原因のほかに、液体の毛管作用についての解析結果と実測結果の比較を報告する。第5巻では音の速度式のほかに、流体や水蒸気の運動方程式を提案している。
各巻目次
第1巻
第1編:釣り合いと運動の一般法則
第2編:万有引力と天体の重心の運動とに関する法則について
第2巻
第3編:天体の形状について
第4編:海と大気の振動について
第5編:天体の、それらの重心の周りの運動
第3巻
第6編:惑星の運動の理論
第7編:月の理論
第4巻
第8編:木星、土星および天王星の衛星の理論
第9編:彗星の理論
第10編:宇宙系に関する諸点について
第5巻
第11編:地球の形状と自転について
第12編:球の引力と斥力、および、弾性流体の釣り合いと運動法則について
第13編:惑星を覆っている流体の振動について
第14編:天体の、自分の重心の周りの運動
第15編:惑星と彗星の運動について
第16編:衛星の運動について
余談: 高校生のみなさんには理解できなくても、少しだけ本書のページを見てほしい。みなさんが学校で学んでいる三角関数や微分積分が大活躍しているのがわかると思う。微分積分の記号やsin, cos, tanのように三角関数が使われだしたのは17世紀で、18世紀頃までには定着した。指数関数と三角関数の間の関係をあらわした「オイラーの公式」が発表されたのは1748年(ラプラスが生まれる1年前)だ。つまり現在の高校3年までに学ぶ数学は18世紀中ごろには完成していたのである。
江戸時代中ごろ、伊能忠敬が生まれたころのことだ。
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2019年12月20日に追記:
日本語版の分量はフランス語版にくらべて分量が少ない。この理由は原文を端折って日本語訳している箇所があるからのようだ。つまり、逐語訳されていない。また英語版は大量の脚注があるため原書に対してもだいぶ分量が多い。このご指摘は @subarusatosi さんからいただいた。
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関連記事:
全5巻完結!:ラプラスの天体力学論(日本語版)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/a720b0cfb775d00625763f87a56b2414
日本語版「プリンキピア」が背負った不幸
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/bff5ce90fca6b8b13d263d0ce6fc134e
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ファインマン物理学のフランス語版はこちらの記事で紹介しました。
発売情報: フランス語版「ファインマン物理学」の新版
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/daf630deb00e6c315897d6f47ba3dd5a
ファインマン物理学のフランス語ですか
それはいいですね
英語版と比べて読むか
日本語版は英語版読むために退路を断つ意味で友達にあげてしまいました
フランス語はテキスト半分ということでしたら、線形代数や微積分、フーリエ変換など初等的な数学書か、あるいは数学者の伝記などがよいかと思います。難解な数学書を選ぶと途中で挫折しそうですし。
とりあえず僕は「ファインマン物理学」のフランス語版か「メシアの量子力学」の原書に取り組もうかと思っているところです。
今頃お仕事に向かってますね
お返事いつもありがとうございます
英語は読むだけならできます
最初がハリーポッター
二冊目を
「数学を作った人々」という百年くらい前にベルという人が書いた数学者の伝記を読みました
この本と平行して物理学者の伝記集を二年かけて読みました
十年くらい読むと苦痛なく読めるようになり スプリンガー書店の黄色い数学書読んでると
気分は数学者です
フランス語はテキスト半分
残りどうしようかな
フランス語で読みたくなるような数学書があれば一番いいのですが