明日がはじまるとき

事業仕分け 議論の向こうに明日がある

過去に指摘された課題その1 『箱物』

2011-05-10 | 事業仕分け

4月の寒川町事業仕分けを皮切りに、今年も11月まですでに予定がいっぱいになってきました。実施が予定されている自治体は、過去の事業仕分けで指摘された問題について、HPに公開されている議事録などを参考に、類似事業について事前に検証していただければ、議論が深まると期待しています。

そこで、過去に指摘された課題などを、いくつかご紹介してみたいと思います。

 

まず取り上げたいのが、問題の多い『箱物』事業です。

1 老朽化

高度成長期以降、精力的に整備された都市インフラは、耐用年数が近づき、今後のあり方を考えないといけない時期に来ています。付け加えれば、この耐用年数も適切な管理がされている前提での数値なので、修繕をしていなければそれだけ痛みが激しいのは明らかです。修繕に予算がつかないと嘆かれる職員も多いのですが、そもそも長寿化計画をもっていないので、説得する材料に欠けているのだと思います。

建物の生涯コストは、その形状などにもよって違いはありますが、建設費用の2~6倍といわれていますね。ですから、5億円で建設した会館で耐用年数40年の場合、生涯コストが3倍なら、40年間で15億円。1年当たり3,750万円がかかることになります。しかも費用は年数に比例して高くなるのですから、きちんとした長寿化計画が求められます。まぁ、計画を持っていても実行されないことも、現実ですね。

2 当初の設置目的以外への転用

社会経済情勢や地域政策の変化によって、建設当初の目的が概ね達成され、現在は違う施設のニーズが高まっているのに、対応されていないことも指摘できます。

それなのに、新たな施設を建設する資金的な余裕はない、古い施設の稼働率は低い、などのアンバランスを放置してはいないでしょうか。

この背景には、国の補助金を得て整備した施設が、いまだに「適化法」(補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律)の規制に縛られていることがある、ということも一因のようです。ただし、実際には、平成21年(2009)に、これら財産処分に対する制限が大幅に変わり、国の補助金で建てた公共施設は10年経過していれば当初の設置目的以外への転用が認められるようになったのです。(経過していなくても補助金の返還をすればよいのですが)

高松市では、合併した旧庁舎を図書館に転用し、図書館のない地域が解消されたとのこと。地域の実情に合った活用が期待できます。

3 行政財産の活用

 平成19年(2007)の自治法改正では、行政財産を有効活用できるよう、目的外の「貸付」ができるようになりました。それまでは公法上の「行政財産の目的外使用」だったため使い勝手が悪かったのですが、私法上の契約である「貸付」を活用すれば、借り手側も安定経営、貸し手である自治体も収入確保が格段にアップするようです。

国交省から「公有地等のまちづくり活用事例集」http://www.mlit.go.jp/common/000029486.pdfで取組事例が数多く紹介されています。余裕スペースがあると思っているのなら、ぜひ検討したいです。

4 実行に移す際の障害

以上のようなことは、事業仕分けチームが指摘するまでもなく、現場を見ている職員はわかっていると思います。ではなぜ課題の克服ができないのでしょう。おおきく2点の障害があるように感じました。

*ファシリティマネジメントが不十分

事業仕分けで対象になった箱物は、おしなべて「稼働率が低い」など、問題意識もあって仕分け対象になったのでしょう。

所期の目的は達成したし、老朽化してきたので廃止をしたい。

支所や小学校に空きスペースがあるが、生涯学習の場がない。

うちの会館には余裕空間があるが、隣の建物は狭くて使い難い。

それぞれ個別にはお聞きしますが、全体として把握できていないようです。施設の活用について庁内横断的に検討する組織がなく、ファシリティマネジメントが不十分ではないかと思います。

*合意が得られない

施設の統廃合や用途の変更などは、現に使っている住民の方が大変多いので、やはり、議会や住民の合意が得られなかったことが大きいようです。

理由としては、必然性が伝わっていない、改築費用が捻出できない、適化法により転用が困難(補助金の返還が困難)などのようです。

 

一度造ってしまったら、約40年は管理をし続けなくてはならない箱物、建設前の十分な検討と稼働中のライフサイクルコストの正確な把握、保有する公共施設全体のファシリティマネジメント。これらを意識して、有効活用したいものです。


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