明日がはじまるとき

事業仕分け 議論の向こうに明日がある

県の職員研修で思うこと

2012-11-19 | 事業仕分け

 今日は、神奈川県職員の「政策評価」研修のお手伝いで、横浜の本郷台へ行ってきました。ここは、かつて県に派遣された時に所属していた研修所。懐かしい思い出あふれる場所なんです。

 研修では、模擬事業仕分けを行いました。事前に職員さんたちが所管の事業について事業シートを作成し、仕分け対象事業を決定します。各班で内容なども検討することになっているのですが・・・

 事業シートは説明不足で、中には事業費がわからないため予算額空白のシートまでありました。対象者もよくわからない、目的は根拠法を記載しているだけ、など。
 当然、説明についても、課題は何か、あるべき姿は何か、目標値は何か、それを測るための指標は何を設定するのか、課題を克服するためにどんな手段を選択したのか、また、ほかの手段との比較はしたのか、などは整理されていないようで、データも示されないため、この量が適正なのか、対象者の把握は十分なのか、など、判断するための十分な資料は整っていないと感じました。

 対象の5事業について、実際の事業仕分けと同様に判定まで行いましたが、結果は、「仕分け人役」、「市民評価者役」の職員とも、廃止という判断は一つもなく、すべて「県実施で要改善」でした。他の府県で類似事業を仕分けした結果、廃止や民間などになったにもかかわらず、です。

 いまや県は大変な財政危機で、大鉈を振るうと発表していましたが、説明や判定結果などからは職員がこの状況を本当に理解しているのか疑問でした。今後、財源も人材も切り詰められていくなかで、継続を前提に事業執行できると思ってはいないはずなのですが・・・

 一方で、仕分け人役の職員からは良い指摘がたくさんありました。いきなり核心をついた指摘があり、意見のやりとりからも新たな疑問が発せられたりしました。他府県と比較しても遜色ない指摘です。
 事業シートや説明がそれと見劣りするのは、研修だから軽く考えている、という理由だけではなさそうです。多分、シートを書く訓練や住民に説明する機会が少ないからなのでしょう。
 国の新仕分けで、津田さん・速水さん始めツイッターでも多くの方から、統一した事業シートを公開したことが良かったと感想をいただきました。これも何度の仕分けや行政事業レビューで書いてきたおかげで、初期のシートに比べたら格段に充実したものになっています。説明も同様です。

 模擬事業仕分け終了後、私から講評したのは、事業の把握が不十分であること。これでは説明責任は果たせないと思います。また、せっかく良い視点を持っていても、組織としてそれを生かす場がないのか、当事者として事業の改善をする意欲が見えてこないと感じたこと。能力を生かせないのはもったいないと思ったことなどです。

 この講評を受け、午後の研修で講師の石田先生は、急遽、演習討議として「何故、神奈川県職員は事業シートの作成が困難なのか」を考えて発表してもらう時間にしてくださったそうです。

神奈川県のシートや説明が見劣りする要因は、やはり「仕組み」の問題もあるとのこと。今まで県では事業評価が十分機能しているとは言い難く、
 1事業シートを書いたことがない。
 2事業シート記載事項を把握・認識していなくても予算要求が通る。
 3事業について何かを「変える」インセンティブがない。
 4出先と本課の連携があまりなく、出先では予算(経費)内訳が把握できていない。
など、耳を疑うような意見もあったようです。

 う~ん、事業シートを作成するだけではやっぱり不足で、説明能力を高めていくことが大事です。相手にとって求められる情報は何か、伝えるためにはどの情報を取捨選択するのか、などを考えたうえで、公開の場で説明をする機会があれば、もっと鍛えられていくのでしょう。

 もし、これを読んでいる方に県職員がいらしたら、「研修だから、データを集められなかったのだ。本当はもっとちゃんとやっている」と反論されるかもしれません。では、研修だから手抜きでよいのでしょうか。研修が人事処遇に反映する仕組みになっていないと、「とりあえず参加しておく」ということにもなりかねません。
3年間この研修をお手伝いしていますが、職場風土と一言で片づけられない、そもそもの仕組みに問題があるような気がしてなりませんでした。


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