明日がはじまるとき

事業仕分け 議論の向こうに明日がある

府中市2年目の事業仕分け

2012-08-13 | 事業仕分け

府中市は2年目の事業仕分けです。
3年間で120事業を点検すると総合計画で定めており、市長が変わった今年度も実施しました。
事業仕分け(事務事業点検と呼んでいました)の所管は財政課です。ほかの自治体では行革部署が担当することが多いようですね。そのためかどうかわかりませんが、府中市の財政事情が年々厳しくなることを昨年度からずっと聞かされていました。でも、事業仕分けを実施した印象からは、この危機感が職員や市民のみなさんと共有できていたのかどうか、疑問が残りました。
昨年度は傍聴者が非常に少なく(コーディネーターの席から、明らかに職員ではない方を数えたら10人ほどだったでしょうか)、最も大きな反省点として挙げられましたが、財政危機を伝えようとする取り組みが、あったのかなかったのか今年も非常に少ない傍聴でした。…来庁できない方のためのネット中継もやらず仕舞いです。
結局、構想日本が独自にネット中継をすることになりました。構想日本の立花さんは、暑い中、廊下の隅で2日間にわたり作業をしていただき、お疲れ様です

さて、事務事業点検は2日間2班体制で、対象事業数は42事業、各班5人の仕分け人(点検委員)は構想日本2人、市民3人で構成(昨年度は構想日本3人、市民2人だったので割合は逆転)されました。
結果は、不要5、抜本的見直し10、国・県・広域0、市(要改善)25、市(現行通り)2でした。
私は2班でしたが、20事業中、不要0、抜本的見直し8、国・県・広域0、市(要改善)10、市(現行通り)2でした。

抜本的見直しと市(要改善)がそれぞれ半数近くを占めましたが、その理由は、事業シートや職員の説明から、潤沢な予算に慣れぬるま湯に浸かっているような感じを受けてしまったからでしょうか。

事業実施の背景が、昭和30年代の高度成長期まで遡ったり、昭和40年の社会情勢が記載されたり。その時代から事業が始まったとしても、50年も経過しているんですから、当然その間には政策論議もあったはずなので、それを書いていただければいのですが・・・どうやら見直しがなかったらしく、そのまま継続しているようでした。
お金があるって難しいですね。事業のぜい肉をそぎ落とす努力はいらないんでしょうかね。
また、府中市の特徴として、基金が数多くあり、対象となった事業の多くが基金で運用されていたんです。そのため、税金を減らしている感覚は持てなかったのではないでしょうか

たとえば全員一致で抜本的見直しになった「市民芸術文化祭運営事業」
市民が芸術文化に親しみ、次世代へ文化等を継承していくことを目的に、市内各地のホールで2か月間にわたり催し物や展示を行っています。
23年度決算で事業費12,888千円(7,305千円の人件費を含めた総額は20,193千円)の半分は実行委員会へ支出されますが、それは参加団体へ委託されていきます。
この財源のうち12,000千円は基金から繰り入れており、貯金があるから細かいことは気にせず贅沢なことができる、とも言えるのではないでしょうか。
委託は実施主体が市なので、このような仕事をしてほしいと書かれた仕様に明確にされているはずなのですが、団体の予算と決算は一致しており、最初からこの金額ありきで運営しているのでは?と思わざるを得ません。
また、伝統文化の定義もあいまいで、カラオケ大会や書道・生け花・囲碁・写真などいわゆる趣味の延長では?といった内容の委託先です。
判定委員からも税金の使い道としてどうなのか、という意見が多数でした。
住民が自ら楽しんで学び、発表する場をなくそうというものではありません。そこまでかかわれるのだから、自主性に委ね、市はせめて一部補助などで後方支援したほうが良いのでは、という意見でした。

府中市の事業仕分けをしていて、15年も前(財政に陰りが見えてきたけれど、まだ潤沢だったころ)の厚木市の予算査定を思い出してしまいました。財政課は将来負担が把握できているので危機感を持って、削減してほしいと訴えるのですが、職員や市民はまだ全然大丈夫、と思っていました。
財政課は相当嫌われることを覚悟し、現状を説明しないと、茹でガエルになってしまうといわれていますよね。
~ぬるま湯につかっていたカエルは、お湯の温度が徐々に熱くなっていくことに気付かず、やがて熱湯になり、カエルが茹でられてしまうということ~

また、
事務局は、仕分けが該当した課に議論の様子を知らせ、説明や資料についてのアドバイスをしていくべきですね。1日目の午前中の議論を聞けば、午後や翌日の職員は資料を集めるなど、修正は間に合ったはずです。昨年度も依頼しましたが、なかなか浸透しませんでした。
このままでは、事業仕分けはやりっぱなしで終わってしまうでしょう。

来年度も実施する予定だそうですが、市長・財政課など実施所管と説明側の職員が行革の必要性を理解し合い、事業仕分けの活かし方を共有できてからでないと、実施はいかがなものなのかと。

仕分けが終わった後、構想日本から実施自治体にコメントをするのですが、財政的に豊かな東京都下府中市だからこそ、茹でガエルといわれないよう、あえて厳しいコメントをさせていただきました。

・・・でもお金があるって、ほかの自治体からみれば本当にうらやましいし、贅沢な事業がたくさんできることも、わかってほしいですね


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2 コメント

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感想 (西宮 幸一(府中市議))
2012-08-14 14:41:03
私どもの政党は、府中市で事業仕分けの実施を訴えてきました。昨年度の事務事業点検も、肯定的に評価しています。
という前提で申し上げると、府中市の場合、地縁や地域組織、大国魂神社で行われる「くらやみ祭り」を中心とする人的ネットワークなどをベースにした、一種のクライエンテリズム(政治的恩顧主義)の気風が見受けられます。
また、市民のみなさんとお話していると、過去の実績や秩序から照らした府中市の良さをなるべく残してほしい、との願いが強く、その中でも、市民に対する行政からの手厚い思いやり・面倒見的な内容は、かなり優先度が高く捉えられているようです。
したがって、行政・政治と市民の関係は、他都市以上に要望型になっているように、感じています。

そうなると、事業仕分けに期待すべきインパクトを、行革面についてのみで考えるのは、府中市の場合、違うのかも知れません。むしろ、行政・政治と市民の関係を変えるというか、市民の自己解決力を高める契機としていく、そのための事業仕分け、という考え方もいるのではないでしょうか。
具体的には、たとえば仕分けの表決を行うのは市民委員のみ、その代わり構想日本側の委員の方々には自民委員に判断材料を提供いただくべく、行政への質問役に徹していただく、というようなことです。
ご参考までに。

それから、来年度の事業仕分けには、構想日本として関わる前提で考えていただきたいと思います。
事業仕分け「巡業」と書かれていますが、構想日本に課題があるとすればまさにその点で、「特定の地域に入っていく」ことの重みと責任を感じていってほしい、との願いからです。
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ありがとうございます (ksmrsmk)
2012-08-15 00:05:17
貴重なご意見ありがとうございます。

私がお答えする事ではないと思いますが、府中市からのご依頼は、行革の観点が主であると聞いております。
しかし、ご指摘のように、行政・政治と市民の関係を変えるという意味でも、事業仕分けは影響が大きいと感じています。そのため、最近では、構想日本仕分け人は意見を述べるにとどめ、市民の皆さんが判断するという「市民判定人方式」を採る自治体も増えています。
このように、どの事業仕分けスタイルを採用するかは、実施自治体のお考え次第なのです。

また、巡業という言葉もご批判いただきました。お気になさったらすみませんでした。事業仕分けは「見世物だ、パフォーマンスだ」と批判される事も多く、それらに対する反発もあり、こんな表現をしてしまいました。
「勉強をさせていただく旅」とでも表現すればよいのでしょうか。もっと前向きな言葉を考えてみます。

それから、仕分け人は重みや責任を痛いほど感じていると思います。まったくのよその土地で意見を言うのですから、こんなに怖いことはありません。無責任に「不要」と判断するようなことはありませんが、たとえ建設的なアドバイスをしたとしても、受け入れていただけないこともままあります。

それでも12年も続けてきたのは、「やっぱり地方自治体は駄目だな、地方分権など無理だ」と言われないように、という思いが原動力になっているのかもしれません。自律する自治体がより多くなることを目指して活動しているのです。

貴市での今年度の結果を受け、事業仕分けに対する考え方を整理されると思いますので、ぜひ注視していただければ幸いです。
ご意見ありがとうございました。
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