出向天国 衆院法制局 行政府から半数近く 「本来任務に反する」の声も
衆院議員が国会に提出する法案の立案・審査を行う衆院法制局の非管理職職員計53人のうち、半数近くの25人が他省庁や地方自治体などからの出向・研修者で占められていることが11日、分かった。法制局側は「実務経験のある人材は必要」と主張する。だが、衆院法制局は、内閣法制局とは違い、議員立法を支えるための組織。関係者からは、「行政側からの人材登用は本来任務に反する」と疑問の声が上がっている。
産経新聞の調べでは、衆院法制局の職員のうち庶務担当の女性職員(十一人)を除いた非管理職は五十三人。このうち総務省、法務省、文部科学省、国土交通省など中央省庁からの出向者が八人▽判事など法曹界から二人▽林野庁の組織改変に伴う移籍者が三人▽東京都や茨城県、千葉県、福岡市など地方自治体からの研修員が七人▽衆院事務局からの出向者が五人-の計二十五人が外部からの出向者だ。
一方、二十四人いる管理職の出向者は現在、検察庁と国交省からの課長二人だけ。これは、平成八年に土井たか子衆院議長(当時)による「議員立法の活性化についての指針」で、当時の部長級六人のうち三人が行政府からの出向者だったことが問題視され、「計画的に速やかに国会職員を登用すること」と指摘したためだ。三権分立に基づき、立法府と行政府のあるべき緊張関係を保つのがねらいだ。
しかし、管理職以外の人材を行政府に頼る状況は放置されたままで、指針で「あたかも(行政府の)『天下り天国』の様相を呈している」と批判された実態は現在も変わっていない。
法制局側は「狭い意味での法制執務の知識にとどまらず、実務を踏まえた法制度設計を含む広い視野に立った法制立案能力が必要。他の機関から人材を受け入れることは全く問題がない」(企画調整課)と説明する。
衆院法制局は衆院議員や衆院委員会提出の法律案(衆法)の立案の補佐を業務とする。議員らの依頼を受け、法案構想段階から参画し、法制化に必要な調査を行ったうえで法案要綱を作成。法制局長らが審査を行い正式に条文となる。
最近は、行政府に頼らない議員立法の動きが活発化。平成六年の一年間では二十本の衆法が国会提出だったのが、昨年は一年間で八十二本の法案が衆法として国会提出され、二十一本が成立している。ただ、衆院法制局とほぼ同じ定員(七十八人)の内閣法制局は昨年一年間で百四十七本の法案を審査した。衆院と内閣では組織の性質が違うものの、国家公務員としては、一人当たりの処理範囲には大きな開きがあるようだ。
(産経新聞) - 4月12日2時51分更新
衆院議員が国会に提出する法案の立案・審査を行う衆院法制局の非管理職職員計53人のうち、半数近くの25人が他省庁や地方自治体などからの出向・研修者で占められていることが11日、分かった。法制局側は「実務経験のある人材は必要」と主張する。だが、衆院法制局は、内閣法制局とは違い、議員立法を支えるための組織。関係者からは、「行政側からの人材登用は本来任務に反する」と疑問の声が上がっている。
産経新聞の調べでは、衆院法制局の職員のうち庶務担当の女性職員(十一人)を除いた非管理職は五十三人。このうち総務省、法務省、文部科学省、国土交通省など中央省庁からの出向者が八人▽判事など法曹界から二人▽林野庁の組織改変に伴う移籍者が三人▽東京都や茨城県、千葉県、福岡市など地方自治体からの研修員が七人▽衆院事務局からの出向者が五人-の計二十五人が外部からの出向者だ。
一方、二十四人いる管理職の出向者は現在、検察庁と国交省からの課長二人だけ。これは、平成八年に土井たか子衆院議長(当時)による「議員立法の活性化についての指針」で、当時の部長級六人のうち三人が行政府からの出向者だったことが問題視され、「計画的に速やかに国会職員を登用すること」と指摘したためだ。三権分立に基づき、立法府と行政府のあるべき緊張関係を保つのがねらいだ。
しかし、管理職以外の人材を行政府に頼る状況は放置されたままで、指針で「あたかも(行政府の)『天下り天国』の様相を呈している」と批判された実態は現在も変わっていない。
法制局側は「狭い意味での法制執務の知識にとどまらず、実務を踏まえた法制度設計を含む広い視野に立った法制立案能力が必要。他の機関から人材を受け入れることは全く問題がない」(企画調整課)と説明する。
衆院法制局は衆院議員や衆院委員会提出の法律案(衆法)の立案の補佐を業務とする。議員らの依頼を受け、法案構想段階から参画し、法制化に必要な調査を行ったうえで法案要綱を作成。法制局長らが審査を行い正式に条文となる。
最近は、行政府に頼らない議員立法の動きが活発化。平成六年の一年間では二十本の衆法が国会提出だったのが、昨年は一年間で八十二本の法案が衆法として国会提出され、二十一本が成立している。ただ、衆院法制局とほぼ同じ定員(七十八人)の内閣法制局は昨年一年間で百四十七本の法案を審査した。衆院と内閣では組織の性質が違うものの、国家公務員としては、一人当たりの処理範囲には大きな開きがあるようだ。
(産経新聞) - 4月12日2時51分更新