一期一会・

宇宙と仏法のあり方についての洞察。人間の成仏。

膝の上の荷物

2015-09-29 | 日記

その日、

洋一は大学のゼミの帰りの車内で、異様に大きな買い物袋を膝に上に抱えて座っている女性を見かけた。

彼女の隣の中年女性はその女の顔が見えないくらいの大きな買い物と思しいものの影で

迷惑そうな顔で座っていた。電車が揺れるたびにかすかにその袋の端が頬に触れるからだ。

中年女性はそのたびにわざとらしく大きく顔を反対にずらすそぶりでアピールしたが、大荷物の女性は、一向に無頓着である。

電車が速度を落とし始めた、鉄橋を渡る音がし始めた、多摩川を渡るとやがて田園調布に近くなる位置に差し掛かっていた。

ホームに滑り込む音がした。

洋一が、大きな袋の影から見えたのが、何と洋一がバイト先でレジで出会った1本だけ黒に塗ったあの女性ではないか。

女はこの駅で降りるのだろうか座席から立ち上がりかけていた。

電車が停車すると彼女はよろよろと立ち上がって開くドアに向かった。

高いヒールの靴にスレンダーな脚が動いていた。

洋一は、彼女の端正で、周囲の女性達とはかけ離れた容姿に惹かれていた。

洋一は自分の下車する駅ではなかったが何故か彼女の後ろについてオームに降り立っていた。

「こんにちは」洋一は彼女に声を掛けていた。

「あら、アナタなのね」晴美は洋一を覚えていた。

晴美は、自然に洋一の顔を見上げて応えた。豊満な胸が抱えた買い物袋に押し付けられていた。