一期一会・

宇宙と仏法のあり方についての洞察。人間の成仏。

マナーモード

2015-10-29 | 日記

夜半過ぎ、純玲の熱は急に収まりを見せた。

洋一は、流石に空腹に耐えかねて、純玲には悪いと思いながら、料理に箸をつけていた。

突然、床の間の隅に置いたままのショルダーバッグの中から携帯の音がしていたのに気が付いた。

誰だろう、この時帯にしかも東京からはかなり離れたこの箱根にまで、電話する奴は

一体?洋一は箸を止めて立ちあがり、ショルダーバッグに手を伸ばして、ファスナーを

引いて中で音を立てている携帯を取り出した。

「晴美」の名前が表示されていた。洋一の心臓は瞬間ドキリとした。

純玲の寝ている前で、まさか純玲の前で出る訳にはいかなかった。

晴美とは、未だ特に男女の関係に至ってなかったものの、未だ学生友達である若い純玲と年齢は定かでない晴美とを比較するべきものではないけれども、ある時から、洋一が未だ経験のない女性の魅力を蓄えた晴美の引力に引きずられている自分の存在を意識していたのである。

「やばい」と洋一は内心で思い、そのコールに出る訳にはいかなかった。

「洋ちゃん。どうしたの?お家から電話なの」純玲の熱は下がったものの、

未だ声は蚊の鳴く様な弱弱しい声で首をもたげて洋一の方を見た。

「いや、友達だ。ゼミ仲間の友達だよ」そう答えざるを得なかった。

「そうなの・・・」

純玲は洋一の返事に少し安心したかの様に首を戻した。

 


アクシデント

2015-10-28 | 日記

楽しい筈だった玲純との箱根へのドライブは、玲純の突然の発熱で思わぬ仕儀となってしまった。

とっくに箱根の山は暗黒の闇に包まれていて、時折山間から響く野鳥の叫びが不気味に聴こえてくるばかりであった。

「玲純、大丈夫か?」純玲の熱40度近くにも上がり、仲居さんが氷真K田を用意して当てがってくれたが2時間ほど経っても熱は一向に下がる気配を見せなかった。

洋一は、純玲をドライブ1日旅行に誘った自分の責任を深く考えていた。

洋一は心底彼女の様態に不安であった。大学入学以来、何度も純玲とドライブ旅行を経験し手いたが今度の箱根へのドライブで純玲がこんな不調を表すのは初めてであった。

「純玲、君のお母さんに電話で状態を伝えていいかな」?

と聞いてみたが、純玲は、「いや・・電話なんかしないで」と力な微かにに首を左右に振って見せるだけだった。そして、白く細い手を掛け布団の下から洋一が屈みこんで心配そうに覗く洋一の膝の上に伸ばして、洋一の手を求めた。

予め予約していた料理は普段は味わう事の出来ない懐石料理で、洋一は空腹は既に頂転に達していたが、青ざめて横たわっている純玲の姿を見ては、自分だけ、料理に箸を付けるわけにはいかなかった。

「洋ちゃん、お食事先にして・・お腹空いているでしょ。ごめんね、わたしがこんな風になっていて迷惑かけているわ・・」純玲の白い頬に涙が一筋流れているのを見た。

 

 


BMW

2015-10-22 | 日記

洋一は急いで、自宅マンションのドアを開けた。

ベンベーのキイのある場所がどこだったか明瞭に覚えて無かった。

車は先週の連休に玲純に乞われて一緒に箱根方面に日帰りドライブをしたのが最近の出来事だった。ドライブ中の行は朗らかに笑いながら。ゼミでの同室の学友とのたわいのないおふざけの笑い話や、時たまは運転する洋一の頭に手をのせて、「お願い!事故らないでね」とか、そう言いながら洋一の膝に手を置いてみたり、しきりに洋一の体に触れたがった。

なのに、箱根のいろは坂に差し掛かると車は蛇行しながら徐々に高度を挙げてていくためか、気圧が影響したのか玲純は急に気分が悪くなり青ざめて来たので、目的地のホテルに到着した時は、彼女は食事を摂る事が困難な状態であった。

止むを得ず、仲居さんにお願いして、宿泊する予定がない日本間の空き部屋を用意してもらいその部屋に急遽移動する羽目となった。

「お医者さんお呼びしましょうか?」心配そうに仲居さんは気使ってくれたが、青ざめたままの純玲は力なく首を左右に振るだけだった。

予約していた食事は、その部屋に運ばれてきた。洋一は東京からの長時間の運転のストレスでホトホト疲れていた。空腹でもあった。

純玲とは、高校時代からの恋人同士ではあったが、互いに信頼と友情だけでおつきあいをしていた。2年の間に夫々将来を見つめた生き方や行動と物事に対する思考方法が少しずつ変化していたので、男女の性に対する考えも異なっていたので、二人の間では接吻すらしたことがなかった。

しかし、洋一のも又、22歳になる男性にしては未だ性の経験を持っては居なかった。

22歳にもなって今時セックスの経験がない男性は珍しいかも知れない。

若い男女が居れば、そこには必ずセックスというみだらな想像で観る大人の思惑に

問題があるのかもしれない。

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https://youtu.be/utrkUe9F2uA


タクシー

2015-10-21 | 日記

小説「洋菓子店」の続き・・・

「行ってきます」洋一は出されたコーヒーを一気に飲み干すと、晴美を一瞥すると中腰で立ちあがった。

「あら、もう行くの?」

晴美は洋一を制するように手を洋一の体の方に差し向けた。

晴美も少し汗ばんだ胸のブラウスの第一ボタンを外していたので、豊かな胸の隆起が

その間から落ちそうに見えた。

洋一は気持ちが焦っていた。自分の中では、早く自宅に戻って汗ばんだYシャツを少しは洒落た色柄の何かに着替えたいと考えていた。晴美の住まいに行けるという冒険的な気持ちとその後に展開するかもしれない何かを予感していた。

京都ナンバーの自家用車に興味を抱いた晴美に自分をアピール出来るチャンスが

すぐそこにあったからでもある。

成熟した異質の女性を脇に乗せて走る好奇心が狭い空間でどんな雰囲気が醸し出されるかというイマジネーションが、湧いていて、何かが起こるかもしれない予感も洋一にはあったのだ。

「直ぐ戻ります」洋一は笑みを返しながら差し出した晴美の手を軽く握り返してそっと離した。

洋一は店の外に出ると折から通りがかりの緑色のタクシーを拾った。

「世田谷の桜が丘」お願いします。

「甲州街道を走っていいですか」中年の運転手は進路を確かめるように聞いた。

「良いですよ。少し急いでください」と言いながらズボンの後ろのポケットに入れた財布を引き出すと、お金の在りかを確認した。

その瞬間ポケットの携帯がマナーモードの振動を洋一が感じた。

「あつ忘れてた・・・」夕方ゼミの後で会う約束をしていたのをすっかり忘れていたのだ(続く)

アミーラの歌声

 https://youtu.be/fDs4C7alibs