雨の夜に書きたくなる文章について。

夜に雨が降ると
ふと思い出したように文章をかきたくなりますね。

文章をかくということは
自分の中にあるものを文字にたくして
それを目に見えるかたちでそこに記すこと。

それを受け取る側は
その並んだ文字を目で見て
それを自分のなかに取り込む。

それとはちがうもので

話すということは
自分の中にあるものを声にたくして
それを耳に聞こえる音として届けること。

それを受け取る側は
その連続して届く音を聞いて
それを自分のなかに取り込む。


この二つは共に
言葉を通したものだから
同じに見えるけど
結構違う気がする。


同じ言葉でも

文章には行間や、句読点のリズム、選び抜かれた言葉がある

話しにはトーンや、声色、タイムリーな状況がみえる


だから、伝わり方がちがうのだ。
良い悪いじゃない、単純にちがうのだ。
まあ、ただこれだけの話なのだ。


たまに、言葉なんて無くなってしまえ、と思うこともある。
テレパシーでサイコキネシスでなんちゃらかんちゃら、でいいのにもう、と思うこともある。

言葉にすると落ちていってしまうものが多すぎる。
言葉にされると拾えないものが多すぎる。

どうしてもその行間にあるものが見えなかったり
どうしてもそのトーンがつかめなかったり
勝手に違う角度から言葉を持ってかれたり持っていってしまったり
あまりにも面倒だなあと思う。



ただ、こういう雨の日に
文章をかきたいなあ、と思ったり
久しぶりにあいつに電話してみようかなあと、思ったり

そういうことを考えるということは
多分、言葉にしかできないことがあるからで
自分は結構それに憧れているところもあるのかもしれない。

言葉にしかできないことを
また言葉にしようとすると
またまた沢山のものが落ちていってしまうのでやめる。

ただこう書く。

それは言葉にしかできないことなのである。



なんとなく雨の日には
こういうことを大切にしたいなあ、と

ふと思ったりする。

今夜もフライパンと。

ハタチになって
やっと、いまさら、ようやく、はじめて自炊をすることとなった。

毎晩の様に、大層な創作料理ができあがる。
試行錯誤を、あたふたリズムにのせて
うりゃっ、とフライパンとまな板と包丁を同時に操って

そして
いつのまにか、 “なにか” ができあがる。
作り上げるというよりも、できあがるのだ。

こないだは
“醤油で味を付けた、焼きそばな雰囲気をもつパスタ”
ができたし
“見た感じ中華的な、味噌野菜炒め”
なるものも完成した。

それから
”鳥とベーコンが交換した、他人丼らしきもの”
もできてしまったりした。

最初の計画と、最後の結果にギャップがあるのは、よくあることだ。



どうも、ここが問題のポイントだと思えてくる。


そして

いったい、僕はいつまで世間離れした創作料理を作ることとなるのだろうか。

そこもまた、ポイントである。

長電話。

ん？
今？
うん、平気平気。

音楽聞いてた。友達にもらったタージマハルってひと。
うん。コーヒーのんでた。

そうだね。だいたい三週間くらいかな。こっちきて。
ほんっとに長い。一週間が一ヶ月だよ、最近。
ストレスかね。
え？
うんうん。まあね、はじめだからってものあるかもなあ。

まじねえ、ロンドン人は喋んのはっやい。はっやいんだよ。
言葉の壁なんだよ、とりあえずは。
なんかさ、向こうのこと理解してる間に、話題はもう違うとこ。
そんなことがよくあるんだって。

そうだね。
うん。
そっちは？
紅葉とかしてんの？うん。まだかあ。

最近なにしてんの？
なんか面白いことあった？

うん。


うんうん。

へー、すごいな、それは。いいじゃん、楽しそう。
いいなあ、まぜろよ、ちくしょう。


なんか最近いいのみっけた？




いや、新しいのはないけど。
こないださ、ライヒのコンサートいったんだよ。いや、べつにライヒ本人がきたわけじゃないんだけどさ。ロンドンの楽団がライヒの曲を演奏したんだけどさ。すっげーよ。鳥肌だって、鳥肌。
なんかね、木琴が中央に配置されてるんだけど、それがあのファンファンファンファンてなるかんじで、一定で流れててさ。一番後ろにはさ、ボーカルの人が１０人くらい一列にならんでてさ。その声にエフェクトかかって、おそろしくかっこいいんだって。それで５０分ちかくの曲やるんだぜ、たまんないよ。結構値段高かったけど、全く見てよかったとしか言えない。なんかなあ。すげーんだって。

来月はジムホールと、デイブホーランドが一緒にやるのみにいくんだよ、いいだろ。
なあ。
いいよなあ。こないだ、友達が持ってるエヴァンスとジムホールのやつ久しぶりに聞いたけど。やっぱり、かなりすごいアルバムだよ。昔より、今のがあれを聞けてる気がする。


学校？
まあ、いってるけど。退屈。

だって、大学生になってまで、仲良くなるための週とかあって。
なんかさ。ボートトリップとか、ボウリングパーティーとか。
もう、いいや。本当に。
友達をこうゆうふうに、作ろう、て気合い入れてつくらないことにした。
流れに任せて、面白い人がいたら話しかけることに決定した。

うん。
だって、そっちのが絶対いい友達できるじゃん。
うん。わかんないけどさ。
多分。

そっちは？
まだ友達少ないの？
うん。そーなの。笑えるなあ、それ。

うん、でもいいじゃん。良くなってきてるじゃん。



住んでるのはね。
うん、いちよロンドンだよ。はじっこだけどね。
西のとこ。なんか小さいまちだよ。西日が似合う。赤れんがのまち。

二十分くらい。うん。地下鉄。

部屋結構広いよ。
うん。今度やっとLP playerを買おうと思ってて。
ううん、ちがくて。スクラッチとかミックスは興味ないから。ただ流すだけの。
ベスタックスってやつのちっちゃくて安いやつ。

うん。
まあお金持ちになったら、いいやつ買うよ。
スピーカーとか四つとかのやつ買ったりしてさ。いいよなあ。
うん。まあ、いつかね。


まあまあ。いつか遊び来てよ。
暇と金に余裕があったら。まあ、すこしも期待してないけど。

え？
来てね、ていうと皆そういうけどさ。
そういったって、くる人はそうはいないと思ってるけど。
いいよ、いいよ。来たらなにかおごったげる。





そっちもう寒いの？

うん。へー。





こっちもう朝とか息白いよ。
はあー　てやると。

うん。


たぶん、またいっきに寒くなるんだろな。
うん。めっちゃ寒い。こっち。



はい、わかった。
そちらも風邪ひかぬよう。








うん。

じゃあ、またなんか良いもの見つけたら教えてよ。
おまえメール返さないからなあ。

俺は返してるよ。



はい。ではでは。またね。さいなら。