コニタス

書き留めておくほど重くはないけれど、忘れてしまうと悔いが残るような日々の想い。
気分の流れが見えるかな。

遊びなら何でも赦されるのか。

2010-07-05 10:24:06 | 
“春芸”6演目の内4演目については前に書いた。

残りの2演目は、韓国と中国の作品。
ここに「王女メデイア」を加えると、三者三様の“歴史”へのアプローチの作法が見えてくるのだが……。


太陽の帝国

今のところ、評価すべき何かを見つけられない。
最初から大盛り上がりの観客がいたのは事実だし、楽しめた、という声も聞こえてきた。
しかし、帰り道、韓国人留学生は「韓国人として恥ずかしい」と言い、韓国語を生業とする日本人は憤り悲しんでいた。
実際、私のような半可通は、やれやれ、韓国って、こんななの? と思ってしまう。
どれもが個人的感想であって、何かを代表している意見ではないことを確認した上で、何が問題なのかを考える必要がある。


この作品について4月に韓国で報道された記事の日本語訳が、2chで読める(私は韓国語が全く理解できないのでこれに頼るしかないが、末尾に原文リンクがあるので、読める人はそちらを参照。韓国版の舞台写真もある)。

ミュージカルで見る伽耶人の日本移住史「太陽の帝国-渡来人の話」
(金海=聯合ニュース)=慶南(キョンナム)金海市(キムヘシ)の先祖の金官伽耶人が海の彼方、日本へ移住する歴史がミュージカル「太陽の帝国-渡来人の話」に新しく生まれた。

この作品は来る27日、金海大成洞の野外特設舞台で行われる前夜祭を始まりに来月2日まで続く第34回金海伽揶文化祭りで公演される。失なわれた第4の帝国「伽耶」を再照明するこのミュージカルは昨年の「美しきパートナー-愛の帝国」に続く第二作だ。

チェ・インホの長編小説「第4の帝国」を原作にしたこのミュージカルは金官伽耶が滅亡し、海を渡っていった伽耶人たちが新しい自由都市を日本にたてる移住史を扱っている。

西暦400年、広開土大王の侵攻を受けた金官伽耶は伊尸品王とキムジル王子の降参で滅亡することになるが、降参を拒否した鍛冶屋出身スェブルカン将軍と陶工ノマ一行が船に乗って海を渡り、日本で新しい自由都市をたてる内容だ。

伽耶の文化を紹介する派手な衣装と仮面、兜、舞台上を動く船、雄壮な規模の振りつけと映像、100人余りの出演陣とスタッフ陣が野外舞台を訪れた観客に新鮮な体験と面白さをプレゼントする。
この作品は今年7月3日、日本の静岡舞台芸術祭の閉幕作として招請され、伽耶の歴史を知らせるのに一役かう予定だ。

脚本、演出を引き受けたイ・ユンテク氏は「この物語は日本の国家建設と関連しながら豊富な神話的象徴性と歴史性を持つ」として「征服でなく定着、支配でなく共存を主題に失なわれた第4の帝国の姿に光を当てようとした」と話した。

彼は「内容的には伽耶人が大和国家の建設に関連しているというもので、最近、韓日両国歴史学者らの合意で任那日本府説が廃された現実に照らしてだいぶ微妙な波紋を呼び起こすだろう」と語った。

チェ・ビョンギル記者
ソース:naver/聯合ニュース(韓国語)
2010-04-26 14:45

この記事でおおよその粗筋も判るが、この作品が“金海伽揶文化祭り”の前夜祭で上演されたモノであることも判明する。まさに、御当地芝居。
なのになぜ舞台が日本なんだか……。

その原作「第4の帝国」に関しても、検索すると2chから情報が得られる(同じく、ソース記事も参照のこと)。

崔仁浩の歴史追跡番組「第四の帝国伽揶」~「史料がないのでおもしろくできた」
【ソウル=ニューシース】小説家、崔仁浩(チェ・イノ、63・写真)さんが今回は「伽揶」を追跡する。
「忘れられた王国」百済、「王道の秘密」高句麗、「海神」新羅とつながって来た崔仁浩歴史追跡の完結版だ。

KBS創社81周年企画ドキュメンタリー「崔仁浩の歴史追跡ー第4の帝国伽揶」を通じて歴史に隠されたまま音もなく消えた伽揶(42~562)の波乱万丈の歴史をたどった。自分の小説「第4の帝国」が土台だ。
チェさんは「これまで‘忘れられた王国’、‘張保皐(チャンボコ、訳注:ドラマ海神の小説原題)’などで高句麗、百済、新羅などに関する文を書いて来たが、常に2%不足だと思ていた。今回、伽揶を追跡しながら先祖の借金を返したような感じだ」と打ち明けた。

伽揶は高句麗、新羅、百済に劣らず重要だと強調した。「‘伽揶’という名前だけあって、伽揶の本体はない。跡があるだけだ。21世紀、主に大陸主体の歴史観と国家的な政策の方向で、中国にばかり関心を持ているたが、伽揶も重要だ。当時、グローバルな海洋国家だったほど魅力があり、また意味のある国」というのだ。

4部作「崔仁浩の歴史追跡-第4の帝国伽揶」は優秀な鉄器文化で海上交易の中心だった伽揶、日本古代国家形成に影響を及ぼした伽揶など伽揶の実体を明らかにする。同時に古代伽揶人の根を捜すための古人骨DNAの実験結果などを公開する。ソウル大ソ・ジョンソン(56)教授チームが伽揶古墳の高麗大学人骨のミトコンドリアDNAを分析した。韓国人の古代人骨では初めて行われた作業だ。

古代史関連史料が不足だったが、大きな難しさはなかった。「史料がなくて、むしろもっと面白くできた。史料が多ければ想像力を動員することができないからだ。歴史を新しく見る契機を作っているようでドキュメンタリー作業は好きでやりがいもある。」と特に若者達が多く視聴することを願った。

「ドキュメンタリーを通じて国民が歴史をとても退屈に思わないように願った。多くの若者達が見て歴史というのも面白いことがある、ということを感じたら良い。」「崔仁浩の歴史追跡-第4の帝国伽揶」は6ヶ月ほど、中国、日本など5ヶ国を回って取材、製作した。
ソース:naver/ニューシース(韓国語)
2008-03-04 17:50

前述韓国人・韓国通によれば、崔仁浩という人は韓国随一の尊敬を集める人気作家だそうだけれど、ウィキペディア記事を読むと、所謂“大衆作家”でもあるらしい。

情報の不足している古代史の謎を、小説や演劇の形で作品化するのは面白い。しかし、楽しい、というだけで済まされない問題を含んでいる。
この作品に関して言えば、東アジアの大きな歴史の中の、ごく小さな部分を都合良くつまみ出しているだけ。所謂2チャンネラーでなくとも突っ込みたくなる内容だ。

しかも、それを下品な会話とアメリカ由来の軽音楽で語る。これがグローバリズム?
しかも。ハンドマイクを使ったり使わなかったり、わけわからん。
歌も踊りも、雨のせいとばかりは言えない締まりのなさ。

初演が大規模な野外劇場だったとしても、有度の特性を活かす工夫があって然るべきではないか。「メデイア」で存分に存在を示した背後の森は大型スクリーンで隠され、しかも、スモークによって字幕が読めなくなってしまうという……。

細かいダメ出しをし始めると切りがないのだけれど、例えば「演劇」として完成度が高いとか、「遊び」として見るべき物があるとか、そう言う何かがあるなら、そこを評価すればいい。

微妙な問題を含む「歴史」。
そんなカタイことを言わずに遊びを愉しもう、と?
否。遊びだとすればなおのこと、相手に対する敬意が必要だ。
でなければ、ただの暴力でしかない。



私にとっては、東京で観た「オセロー」の祝祭的なエネルギーの奔流に震えた経験を再び、という期待があっただけに、最後の強引さ加減も腹立たしい。

舞台上に引き上げられて踊っていたHさんやOさんの感想も是非うかがいたいものです。

そうそう、最後の最後、舞台に残ったのはSPAC俳優三島さんでした。
「メデイア」でも愉快な踊りを見せてくれた彼の身体能力の高さ、安定感を確認することで、「コリベ」の人々の身体がどんなモノだったのかも見えたと思う。


歴史ということ、それを「遊ぶ」ということ。
祝祭ということ。

考察は続くのだけれど、引用が多すぎて長くなったので更に別の記事にします。

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