ティク・ナット・ハン プラムヴィレッジ僧侶団来日ツアーの一環として、5月12日に行われた「プラムヴィレッジの高僧30名vs 日本の青年僧100名 対話会」が行われました。主催が「全国曹洞宗青年会」のため、曹洞宗の僧侶を中心に、応募された20名ほどの他宗派の僧侶が参加されていました。
私は在家ですが仏教ライターという立場で、取材者として参加いたしました。
開場時は、日本の禅宗特有の引き締まった空気も流れていましたが、禅歌(プラムヴィレッジオリジナルの呼吸の歌)をみんなで歌い、そして穏やかな言葉による誘導瞑想と進むうちに、だんだんとプラムヴィレッジらしい和らいだものへと変化していきました。
法話はティク・チャン・ファップ・ユンが「自分の家に帰る」というテーマで説かれました。参加者とも世代が近く、また米国の大学卒業後、建築関連の仕事をされていた経験もあるファップ・ユン師の言葉は、日本の青年僧にも共感をもって受け入れられたのではないでしょうか。
質疑応答では、プラムヴィレッジの理念や、自分の負の感情の対処方法などいくつかの質問がされました。なかでも「父と母への恩義を感じない日本の若い人が増えてきたが、そういった人にどう対処すればいいか?」といった質問に対する、尼僧シスター・チャンコンの答えが印象的でした。
それは要約すると「プラムヴィレッジでは親を愛しなさいとは話しません。子どもたちはプラクティス(実践)をするなかで親に対する理解も生まれ、誰に言われるでもなく自然に感謝できるようになるのです」といったもので、まさにプラムヴィレッジのありかたを象徴しているよう。僧侶が子どもを未熟な存在として導くのではなく、その可能性を信じてともに実践して学んでいく姿勢は、日本の多くの青年僧には新鮮な驚きを与えたようです。
昼食の食べる瞑想、くつろぎの瞑想と続き、その後のシスター&ブラザーを囲んで行われるグループディスカッションは、自分の関心のあるトピックに参加する形式です。
「現在社会における僧侶の役割」、「マインドフルネス、集中、洞察」「解脱の成就」など今の日本の仏教を反映するような、8つのトピックが掲げられていました。どれも興味深いのですが、私は現在が仏教の大きな過渡期だと感じているため、青年僧侶の率直な意見をお聞きできればと、トピックス「仏教の再生」のグループに参加。一人ずつ発言をされましたが、参加者が抱えているテーマは新しいお寺のあり方から、修行の葛藤まで幅広いのですが、それぞれが真摯に僧侶としてのあり方を模索されていました。彼らがこれからの日本仏教を支え、主柱となっていくことを頼もしく感じます。
最後は歩く瞑想で、街中を少々歩いて終了。参加者に感想をお聞きすると、多くの方が曹洞宗とプラムヴィレッジのあり方は表向きでは違っていても、そのエッセンスは同じことを実感され、とても好印象で受けとめていたことに、少々驚かされました。自分たちのやっていることの意味を再確認された方や、活動や修行を進めるうえで新たな視点を得られた方もいました。
参加された青年僧侶たちがここでの学びを活かし、日本の仏教をより魅力あり、また人々の助けとなるように構築されていかれるのを、楽しみにしたいと思います。
(おまけ)
20年前にティク・ナット・ハンが来日された時も、今回と同じような若手僧侶との対話会をもたれました。そこでは「日本仏教に具足戒を復活させよう」といった衝撃的な発言をされたそうですが、今回は現在の日本仏教を根本から覆すような発言はプラムヴィレッジのモナスティク(僧侶)からはなかったようです。
とはいえ、今回の来日ツアーのリーダー的な存在のティク・チャン・ファップ・アンをインタビューした時は、なかなかラジカルな話題も出ました。こちらは、(株)サンガの出版物に掲載予定ですので、お楽しみに。
※順番的には蓑輪顕量先生が講師を務められた、朝日カルチャーの「ティク・ナット・ハン師の仏教思想と実践3」を先に掲載するところですが、今回は一般に募集をかけていないイベントということもあり、リクエストをいただき先に執筆しました。
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