ロシアの北都 サンクトペテルブルク紀行

2005年秋から留学する、ロシアのサンクトペテルブルク(旧レニングラード)での毎日を記します。

9 暑い車内

2007-08-10 02:42:02 | Weblog

【写真:ホームの露店群。アイスや飲み物、ピロシキなどいろいろなものが買える。Облучье駅で52378】
02.07.2007
※以下本文中の会話は、特に記述がなければロシア語での会話を日本語訳したもの。

 ウラジヴォストーク出発から一夜が明けた。今日も外は良い天気。私は良く眠れたが、クスーシャはあまりよく眠れなかったらしい。

 ロシアの鉄道のトイレは直接外に排出する方式のため、停車時間中と、大きな町に到着する前後30分~1時間程度は車掌によって鍵がかけられ、使えなくなる。慣れてしまえばどうってことはないのだが、いつトイレが閉鎖されるか知るためにも、時刻表が重要となる。車内にも時刻表は掲示してあるが、主要な駅しか掲載されていない。私は日本で全ての停車駅と着発時刻、停車時間が書かれた時刻表を印刷し、持ってきた。
 7時50分頃停車したВяземская(モスクワ起点(以下同)8651km)という駅では、停車時間は2分しかないからトイレはすぐに開くだろうと思っていたが、実は一つ上の行と見間違え、15分の停車時間だった。このように停車時間が比較的長い駅では、下車して外のトイレを利用することも出来る。もっとも、私がこの勘違いに気づくのが遅かったため、車内のトイレが開くのを待つことに。

 列車の進行方向左には、1kmおきに距離表示がある。朝外を眺めていると、8632kmの標示が見えた。ウラジヴォストークを出てから一晩で600km以上の距離を走ったことになる。暇なときには時計を用いて、速度を計算してみるのも面白い。ちなみに8時20分前後、5kmの平均時速は75.8km。

 自分の席でごろんと横になっていると、誰かにつま先をつままれた。通路側の寝台の女性が、「お腹がすいているでしょう。」と朝食に誘ってくれたのだった。ゆで卵、ソーセージ、じゃがいも、きゅうり、トマト、鶏肉、ねぎなど、家で用意してきたものをたくさん私に分けてくれた。ねぎを生で食べたのは初めてでちょっと驚いたが、食事の用意をしていなかった私にはとてもありがたいことだった。列車にはレストラン車両がついているが、少なくとも私たちの車両からレストランへ行く人はほとんどいない。皆パンやソーセージ、チーズ、卵など、自分たちで持ってきたものを食べている。お湯は各車両についている大きな湯沸かし器から無料でいつでももらうことが出来る。これはお茶、コーヒー、インスタント食品などに使えてとても便利。
 私にご馳走してくれた女性の名はタチヤナ=ウラジーミロヴナ。娘カーチャとともに、スヴァボードニーСвободныйの母のところへ会いに行くという。カーチャは法律家になるための勉強をしているそうだ。タチヤナ=ウラジーミロヴナは学校の先生。学校は2ヶ月間の休暇だという。彼女はかつて5年間、レニングラード時代のペテルブルクに住んでいたことがあるといい、ペテルブルクの話もすることが出来た。

 10時27分、ほぼ定刻どおりハバロフスクХабаровск(8522km)を発車すると、列車の進路は北から西に変わる。アムール川を渡る橋を見たかったが、どうやら長いトンネルで越えてしまったようだ。

 夏の車内は非常に暑く、外に比べて風がないのでサウナのような状態。上等の列車や車両にはエアコンが装備されているものもあるが、私たちの車両にはもちろん、そんなものはない。男たちの多くは上半身裸。
 数時間おきに停車時間が15分から30分程度の駅に停まると、皆一斉に外に出る。陽射しがあっても外の方が涼しいことに加え、ホームでは冷たい飲み物、アイス、ピロシキやハンバーグなどの食べ物が売られており、車内で買うより安い(写真参照)。15時30分頃に停車したОблучье駅(8190km)では、私もホームで水を買った。

 Облучье駅を出ると、列車はアムール州Амурская Областьに入る。人々は暑い車内で、読書をしたりトランプをしたり、食べたり寝たり、思い思いに過ごす。ここで時間帯が変わるため、時差修正。

《以下の記述のうち、時刻はGMT+9、МСК+6)》

 初めてプラツカルトの車両に乗ったというカーチャは、もうこの暑さにはこりごりだと不満を漏らしていた。タチヤナ=ウラジーミロヴナは、私、クスーシャ、ターニャに、「私たちはもうすぐ下りるけど、あなた方は大変ね。」と言う。もうすぐといっても、まだ彼女らの目的地Свободныйまでは約400km、7時間も残っている。これがシベリア鉄道で移動する人たち、いや、ロシアの人々の距離と時間の感覚のようだ。私もこの感覚に慣れつつあることに気づいた。 



最新の画像もっと見る

コメントを投稿