ロシアの北都 サンクトペテルブルク紀行

2005年秋から留学する、ロシアのサンクトペテルブルク(旧レニングラード)での毎日を記します。

共通語はロシア語と英語

2005-09-15 21:06:58 | Weblog
2005年09月13日
ロシア滞在13日目
【今日の写真:ネフスキー大通りのマクドナルド】

今日の主な動き
07:07 起床
08:31 出かける
08:38 マヤコフスカヤ駅
08:49 バシレオストラフスカヤ駅
09:03 学校
13:12 中華料理レストラン「唐人」
15:05 バシレオストラフスカヤ駅
15:16 ガスティニードヴォル駅
15:55 日本センター
17:57 家近くの薬局
18:04 帰宅

 朝のテレビによると、今日のペテルブルクは気温12度らしい。日本で言えば(場所によっても異なるが)10月下旬くらいの気温なのかな?

 今日の授業は読解。先生がプリントを配布し、最初の40分くらいみんなひたすら辞書で単語を調べる。結構速いペースで読み終えた人もいるが、私にとっては90パーセントくらいが新出単語のためかなり苦労した。せめて予習に出してくれれば家で調べてくるのになあと思いながら単語調べをする。
 内容は、10歳で自ら学校をやめて働きだした少年が、仕事を転々としながら自立していくというストーリー。読み終えた後、みんなで問題を解いていくのだが、一つユニークな問題があった。それは文章の内容について、賛成か反対か自分の意見を述べること。例えば、「少年が10歳で学校をやめること」「自分のお金で母親にプレゼントを買うこと」についてどう思うか、理由も付けて答えるのである。項目は全部で9つ。最初は○×問題だと勘違いしていたのだが、賛成でも反対でもどっちでもOK。大事なのは理由である。ロシア語で意見を述べるのは簡単ではなく、そのために言える内容も限られるが、みんな一生懸命言葉を探しながら発言する。各々の考えが出てくるために興味深く、大変面白い問題形式だと思う。授業ではこの問題に多くの時間を費やした。

 授業後、この時間の教科書を買うために、クラスの人々5人とともに教材を売っている建物へ。昼時だったのでみんなで一緒に昼食に行くことになり、台湾からの留学生の案内で大学近くの中華料理屋へ行く。
今日のメンバーは台湾人3人、韓国人2人に私、日本人1人。それぞれ中国語、韓国語、日本語が母国語であるため、みんなで話をするときは主に英語とロシア語が共通語だ。「主に」と書いたのは、挨拶程度、ほんの少しだけ知っている互いの言葉を話してみることがあるからである。

 中華料理を食べながら、授業の話のほか音楽、言葉、芸能人のことなど様々なことが話題になった。私が知らない日本の芸能人を知っている人もいた。(もっとも、私が知っている芸能人はごくわずかであるが。)私の隣に座った韓国人は26歳。韓国には兵役があるため2年間軍で働かなければならないのだという。そのため男性が大学を卒業するのは27歳が普通なのだそうだ。軍隊はどうだったか尋ねると、「かなりきつかった」と言っていた。
 歴史の話もした。「台湾はかつて日本の支配下だったから日本語由来の言葉が多い」(台湾人)「私は日本海を「日本」海だと思っていない」(韓国人)など、かつての日本の行為が今なお若い人々に影響を与えていると感じさせる発言もあった。私も首相の靖国参拝について私見を述べ、彼らに意見を求めたが、「(靖国問題がどういうものか)よく分からない」という人が多かった。靖国問題がなぜ「問題」なのかは日本人ですら分からない人もいるのだから無理もないことだ。政府間レベルでは大きな問題になることだが、一般の人々の間では必ずしも重要な問題ではないということを知った。それぞれの国で国民の多くは文化面、経済面で自然に交流をしているのであり、政府間の問題とは異なる次元で日本とアジアの人々は関係を深めているのである。彼らとの会話でそんなことを感じた。過去の歴史に対する自分なりの考えを持ち、意見交換をすることは極めて重要だが、それとはそれとして、深まりつつある文化面、経済面での交流をさらに発展させていくことが互いの利益につながると思う。

  昼は韓国の兵役について話を聞いたので、スイスはどうなっているのか、夕食の時にスティーブンに聞いてみた。永世中立国であるスイスに兵役があることは有名だが、彼によると道徳的な理由から兵役を拒否して他のボランティアにかえることができ、彼も今年、6ヶ月間老人の世話をする仕事に従事したそうだ。法律上は例外的な扱いだが、手続きさえしっかりすれば十中八九認められるという。日本ではどうなっているか聞かれ、憲法の定めにより軍隊はなく、自衛隊があることを説明。9条について説明すると、彼は「美しい」と言っていた。「自衛隊は海外には行かないのか?」と聞かれたが、「医療や衛生面での支援のためにイラクに派遣されている。これについては国内でも与野党間で対立がある。」と答えた。彼はこんな質問もしてきた。「今の憲法はおしつけられたのか、それとも国民自らが選んだのか?」なかなか鋭い質問。現在でも議論の対象になる問題であると前置きした上で、私は国民自らが選択した道であると思うと意見を述べた。

 今日は人々とじっくり話ができた。特に、今までアジアの人々と話す機会が少なかった私にとって、昼の会話は有意義であった。

 ところで、他国の人と話をするときは、ロシア語ではまだごく簡単な会話しかできないために、自然に英語がメインになる。今日私が話した人のうち、母親が英語圏出身のスティーブンを除いては、英語を母国語にする人はいない。それなのに英語であらゆる会話が成立してしまうのは何とも不思議な感じがするが、皆それぞれの国で長い間英語教育を受けてきたため、通常のコミュニケーションに不自由するところはない。「英語だけが学ぶべき唯一の外国語ではない」というのが私の持論で、中学校の段階から外国語を選択制にすべきだという考えを持っていたが、ここへ来てその考えは現状とはかけ離れていることに気づいた。世界が英語に支配されて良いとは決して思わないが、現状を見る限り、多くの人とコミュニケーションをとるためには、まずは英語が使えなければ話にならない。義務教育において、外国語として英語を必修にしているのは正しいと認めざるをえない。

 しかし英語だけでは十分ではない。なぜならそれぞれの言葉には他の言語で表すことが出来ない意味やニュアンス、独特の考え方があるからである。バックグラウンドを異にする様々な人々と2カ国語あるいはそれ以上でコミュニケーションがとれるようになったら素敵だ。複数のチャンネルを持つことにより、会話がよりrichになるに違いない。会話だけでなく、思考やものの見方もより深くなるはずだ。使える言葉を増やすことは、その増えた分の2乗、3乗に比例する効用をもたらすと思う。
 スティーブンやホストファミリーに言わせれば、「日本語は世界で一番難しい言語。その文字は象形文字のようだ」という。確かに日本語は世界的に見れば特殊な言語であるために、日本人にとって最初の外国語を学ぶハードルは高い。だが英語がある程度できるようになれば、次の外国語を学ぶときにはゼロからのスタートではない。残念ながら、日本では英語に比べて第2外国語の地位は低く、ともすると単位さえ取れればそれで良いと思われているところがある。しかしそれは大きな誤りである。豊かな思考を育むために、遅くとも英語と同時に高校から第2外国語を選択必修科目にすべきだと考える。
 
 ロシアで学ぶ私達留学生の共通言語はロシア語と英語。コミュニケーションの複数のチャンネルを持つためにも、早くロシア語を上達させなければいけない。みんなと話しながら、モチベーションがさらにアップした。   

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7 コメント

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Unknown (keimei)
2005-09-16 01:30:24
最近大学院のミクロ経済学の授業を受けています。



講師は国際の先輩で、コロンビア大学から戻られたばかりの花木先生なのですが、彼が言うには、経済学者の第二言語は数学だとのことです。



その言葉を聞いて以来、つっちーの熱意に感化されたことも相まって数学の勉強に対するやる気がみなぎるようになりました。



>ともみさん



始めまして。



御兄さんとは同じ大学の同じ学部に所属しています。森と申します。



出身は新潟県の新発田市で、案外実家は近いんです。



数学の勉強を楽しいと思えるというのは素晴らしいことだと思います。数学は立派な「国際言語」です。是非、その有意義な勉強をエンジョイしてください。
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こんにちは (おろん)
2005-09-16 16:54:45
初めまして。

ロシアでの留学生活、羨ましいですね~。

時々来させていただきます!僕のブログものぞいて見てくださいね。



“日本語は特殊”とありますが、言語学的には全然特殊でもありません、特に世界的に見れば。



アジアの人といろいろ深い話をできるのもいいですよね。



では



Пока !







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Unknown (komachi)
2005-09-16 19:21:04
>keimeiさん

大学院の授業受けられるなんて素晴らしいですね。

keimeiさんのおっしゃる通り、数学は経済学者はもちろん、私のように経済学とは無関係の人間にも必須だと思います。

優秀なkeimeiさんの後に続くべく、私も日々鍛錬したいと考えております。



>おろんさん

Здравствуйте!

はじめまして。もう一つのコメントの方にもコメントを書きましたが、ロシア語に対するおろんさんの情熱、素敵ですね。私は言語「学」は門外漢なので、多くの外国人から「難しい」呼ばわりされる日本語はてっきり特殊なのだと思っていました。

機会があればおろんさんもロシアにいらしてください。
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Unknown (tama)
2005-09-16 20:07:36
ついに私もアメリカにやってきました。着いたのは12日なんやけど、筆不精(?)なため今頃の報告です。



今回の内容に関して1点補足。

韓国人の年齢について書いてたけど、多分数え年(満年齢+1or2)やと思います。韓国では満より数えが一般的なので。だから男性が27で大学卒業なのは、「満」25歳のことかと…生まれ年確認してみるといいかも。

満年齢が世界標準なのだから、外国人と話す時くらい、そっちを使ってほしいな、と思ったりもするけど、これもまた文化。というわけで韓国に行くと私は24歳ということにしてます…(苦笑)



そして、ロシアでアジア人と交流っていうのも面白いね。つっちーのいう、「遅くても高校で第二外国語を導入」っていうのには、ぜひともアジア系の言語も入れてほしいものです。韓国語を勉強し始めて、目から鱗が落ちる思いになったことが何度あったことか。日本もやっぱアジアの一部なんだな、って。

英語が世界標準語(といっていいものか?)である現状はなかなか否定しがたいけど、それでもやっぱ英語だけじゃどうにもならん語彙とかそういうのがある。ということで私はここでも韓国語をとります(笑)
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Unknown (komachi)
2005-09-18 21:32:22
>tama

アメリカ到着おめでとう!韓国人の年齢、やっぱそうなのか。実はレストランで、彼の友達のもう一人の韓国人(同じ学年のはず)が日本の査証を私に見せようとパスポートを見せてくれたとき、1980年生まれになってたから、おかしいなあと思ってたんだ。さすが韓国通ですね!仏事じゃないのに数え年使うなんて面白い習慣だけど確かに混乱するよね。



tamaはアメリカでも韓国語とるのか。すごい熱意だな。アメリカにも韓国から留学生が行ってると思うので、tamaなら彼らと韓国語で話せるのでは?きっと喜んでくれると思うよ。ロシアで韓国や台湾の人と話したとき、驚いたことに日本語を結構知ってて、学校で日本語をやったんだと言ってました。なのに俺が知ってたのはせいぜい「ニーハオ」と「アンニョンハセヨ」くらい。もし私が首相にでもなったら(絶対なりません。というかなれません(笑))高校からもちろんアジアの言語も入れますよ!

アジアの隣人を大事に考えてるtamaの姿勢は素晴らしいと思います。
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アジア言語 (おろん)
2005-09-20 08:55:37
僕もアジアの諸言語の高校での選択はいいと思います!



ただ、韓国や台湾の人が日本語を学ぶのと、日本人が他のアジア言語を学ぶのとではけっこう事情が違うのでしょうね。日本人があまり他のアジア諸語に目を向けられないのも仕方ないのかもしれません。
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Unknown (komachi)
2005-09-20 19:59:30
>おろんさん



「韓国や台湾の人が日本語を学ぶのと日本人が他のアジア言語を学ぶのとでは事情がちがう」確かにそれは言えると思います。

アジア諸国の中では日本は経済的にも、技術的にも進んでいる方(もはやこの認識は必ずしも妥当でないかもしれませんが)なので、アジア諸国には必要に迫られて日本語を勉強する学生が多いのだと思います。

しかし私たちはといえば、アジアよりもヨーロッパ系の言語に目が行きがち。

そういえば、大学の一般の第2外国語にはアジアの言語はなかったはずですし、たくさん留学に出かけている私の同期で、今年アジアに行った人を私は知りません。

ロシアに留学している私が言うのでは説得力に欠けますが、アジアはこれからが成長期。良い隣人関係を築くためだけでなく、東アジア経済圏の中で日本が生き残るためにもアジアの言語を勉強することは重要だと思います。
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