精神科医山内の心の相談室

日常の臨床経験から得た心の悩みに役にたつことをわかりやすく説明します

自己への向き換え

2016-09-18 | 日記
「攻撃性の自己への向き換え」は精神分析で使われるものですが、役に立ちます。
過去ブログ強迫(5)過食、でふれました。参照ください。
臨床で、過食の方だけでなく、「自己への向きかえ」はみられます。
症状がそういうことででていますね、
だから、自分の思いは、良いも悪いもなく、そのまま、まず言葉に出してみることが良いことです、
と説明する場面があります。
小さいときには、親が全てです。親に嫌われてはたまりません、という状況があります。
ですから、親に腹が立つ、とは、思っても、それを意識したり、言葉にしない方が子にとっては良い。
そこで親に腹が立つ、その思いは、自分に向きを変えるのです。つまり自分が悪い、悪いのは自分。
親が悪い、とするより、そのほうが自分を守れる、それを精神分析では「防衛機制」という。
「防衛機制」はいくつかあり、その一つが、「自己への向きかえ」ですが、
その親子の間の「思考の癖」が大人になってもあり、癖であり、「反復」しています。
つまり親子関係の出来事だけでなく、それは学校、友人、職場、恋愛でも、
自分を罰するように、過食、鬱、自傷、身体症状、自律神経症状など症状は様々に生じます。

職場の人間関係、特に上司との関係は、親子関係と重ねてみやすいです。
そんなに頭の中をしめる上司は、重要人物ですか、と聞くと、大抵違います、と言われます。
しかし、されてる行動は、とても大切な相手に対するようですね。
その本来、さほど大事でない相手への嫌な気持ちを、思ってはいけないと、
「自己への向きかえ」が起き、症状が出ます。
嫌なものは嫌、上司からは、自分にはない良いものだけもらえばいい、
良いことを聞いた、それだけ。

恋愛や夫婦関係でも同様のことがおきますが、大きな違いは、
恋愛や夫婦関係は、親子関係から離れる大きなチャンスです。
親以外の人を確実に好きになった、一方で、親と重ねた喧嘩が起きる。
喧嘩は辛いが、親とは違う、相手を理解したい繰り返しの喧嘩であれば、
親から健康的な「親離れ」をしていることになります。
相手が大事、それは親の大事とは質が違う。
頼りたい大事な相手だから言いたい。それから話はじめたら、
相手への怒りも怒りとして伝わりにくい(疲労だけの喧嘩にならない)。
逆に一番の心配は、どうせ言っても、と黙ること(疲労だけの喧嘩を避けることとして、
浮気していいというメッセージにもなるので心配)。

大事なことは、「攻撃性の自己への向きかえ」という防衛機制が、
子供時代から、大人になっても「思考の癖」として反復していますが、
仕事、恋愛、私の過去ブログ「愛することと働くこと」その方向で、
修正可能であるということです。
変われる、変わりたいで、希望をみてもらいたい、と思います。

1 コメント

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ブログを読んで感銘を受けました。 (藍)
2016-11-15 02:10:28
母親、親族との関係に悩む者です。ブログの記事をいくつか読んで感銘を受けました。父親が中学の時に亡くなって以来、依存気味の母親と、古き良き田舎の家系の中でなかなか自分を表現できずに苦しみ、精神的な病を発症するに至りました。いまはその状態からやや回復しましたが、環境そのものが変わったわけではなく。その状態から抜け出そうと、理由を作って遠方に飛び職を探す予定です。この行動がどういう結果を呼ぶかわかりませんが、病を患ったことで、忘れていた自分の意思を思い出しました。その意思を、いまは大切にしていこうと思います。病になる前にこのブログに出会いたかった。ですが、旅立つ前日にこのブログに出会えてよかったです。ありがとうございました。

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