精神科医山内の心の相談室

日常の臨床経験から得た心の悩みに役にたつことをわかりやすく説明します

子が親を思う気持ち

2019-02-24 | 日記
前回の親が子を思う気持ちは、2011年に同じタイトルで書きました。
今回の子が親を思う気持ちは2012年に同じタイトルで書きました。
「子が親を思う気持ち」について、できるだけ、まとめて説明できたらと、今回書いてみます。

まず、親は父と母、二人いて、どちらかを完全に否定することができない、という気持ちがあります。
その通りのことが、そうでないとき、それはどちらかの親が、相手の親を否定しているときが多いです。
どんなにひどい親であっても、子にとって親は、そこそこ良い親(できればとても良い親)と思いたい。
それがもうひとりの親から、父より息子が良い、とか、
父が家にいることが少ないから、娘がいてくれたら寂しくない、とかそういうメッセージが伝わると、
父は駄目な人かと思いつつ、そう思ってしまう自分を子は責める(無意識的な罪悪感)。

どちらかの親が子に近すぎないことだと思います。
子にとって親は、親が、色々あっても、二人で何とかやっていく
(母子家庭その他、事情があって片親の場合も、親は親で、子である自分以外の誰かと何とかやっていけると思える)
のが一番良いのです。
ひきこもり、その他症状を出している子が、実は兄弟姉妹の中で、一番親を思っているというケースが多いです。
その一方、親が二人、そこそこ仲が良くて、実家に自分の居場所がないと思ったとき、
そこからカウンセリングに熱心に通い出し、良くなり始めた、というケースがあります。

過去のブログで「子離れしない親から、親離れしにくい」というタイトルでかきました。
子のことを一番に思って、何が悪い、という親を、子はどう思うでしょう。
親孝行という言葉は実に誘惑的です。

子は10代から70代まで、臨床で私は経験します。
つまり子には、全員親がいて、人は皆、息子か娘です。
重い病気とみえる方が、実は一番親を思い、症状を出して家にひきこもっている。
そういう話を聞いたのは、私が研修医のときが最初でした。
そういう話というのは、なかなか論文にならない、できない、のですね。
私が知らないだけなら、良いのですが。。つまり、そういう話というのは昔からあります。
日常的に経験しやすい例で、患者さんが特定されない書きかたで書きますと、
中年以降になって、妻もいるのですが、親に気持ちが向きすぎて、そのため「介護うつ」になる。
つまり、いくつになっても、人は、子は息子か娘であるために、親を思う気持ちがあって、
その問題が症状の理由になることは、少なくありません。

親は、決まって子をしつけようとしますね。
過去のブログで強迫のタイトルで説明しましたが、
親は、子がいくつになっても親として、子をしつけようとする傾向があって、
それで子は、いくつになっても強迫的になりやすいと思います。

退行か、発達か、が役立つ視点です。
退行というのは、所謂子供返り、です。
子供に返る、というのは実はいい意味があって、
人は、実際は子供以上に育ってて、そこからさらに成長、発達できる位置にあるのですが、
「一時的に子供に返っているだけ」、そういう視点での「子供返り」は、治る方向の良い意味がみえます。
ただ、親の視点では、口では子供返りを心配しながら、実は喜んでいる。
子の視点では、そう見える。これでは、子は成長したくてもできない。

親が子をしつける態度というのは、親の顔色をみて、です。
親の言うこときいていたら間違いがない、それです。
それでは、子は自分の顔色、自分の気持ちがわからなくなります。

子が親の気持ちを思うと、安全安心、きちんとしないといけない、
加えて、「まずは準備、条件優先」、そして頑固、相談しない、
それらは全て強迫傾向で、うつ状態の背景にあります。

ここまで書くと、子は親を思わなくていい、と言っているようですね。
臨床経験では、それくらいで丁度いいのではないか、と思います。
ただ加える重要な点があります、片方の親だけを思わなくていい、ということです。
その重要性を書くために、匿名が守れるようにした臨床例を書いてみます。

仕事をしない期間が長く、母と二人暮らしの息子がいて、母が診察に同伴することもありました。
息子は父と長く会っていなかったのですが、ある日、父の危篤を知り、遠方まで出かけました。
ひきこもっていた息子に、変化でてきたのは、その頃からで、少しずつですが働きはじめました。
その息子には、過去に離婚歴があり、自分の子が中学受験を迎えるようになったとき、
働きはじめて間もなくと時期を同じくして、自分の子が自分に会いたいというエピソードがありました。
症例の息子は、子と会うことを繰り返すようになりました。その1,2年後、症例の息子は定職に就きました。
この症例で言いたいことは、やはり片方の親と向き合い過ぎないように、
そして「子供帰り」しているようにみても、成長する方向を見逃さないこと、
この症例では、自分が息子である前に、親である張り合いを見たことが、良かった、そういう例と説明しました。
息子(娘)である前に、親である、夫(妻)である、その方向が大事です。

1 コメント

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Unknown (すずめ)
2019-11-11 19:23:25
東京に住んでいるものです。
親子関係がぴったりあてはまり、悩んでおり何とかして先生にご相談できる方法はありませんでしょうか?
電話相談や、メールでの相談など。
どうしても、先生に相談したいのです。

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