精神科医山内の心の相談室

日常の臨床経験から得た心の悩みに役にたつことをわかりやすく説明します

欲動

2014-03-09 | 日記
フロイトの欲動論というと、難しいことをいうと思われそうです。
しかし欲動を、欲の動き、とみていくと、臨床に役に立つことが多いと思われるので、説明してみます。
生まれた時から、人には欲があります。その欲を我慢する方が良いと、
人は幼児期(過去ブログで、肛門期を説明しましたその時期)から覚えます。
便が贈り物とフロイトが書いていますが、子が立派な便をして、
親に褒められるそのやりとりは、成長してからも性格傾向として残ります。
本来の欲、好きなもの、好きな事、したい、そういう欲は、親の顔色をみて我慢したほうが良いと、
これは肛門期のトイレットトレーニングでわかりやすいですが、
この体験は、大人になっても残っているのです。
また親からみると、この時期に子が我慢するのは良い子ですが、
その時期以降も、子が自分の欲のまま動くのは、我儘とか危ないとか、注意しがちです。
さらに親は子が成人になっていたとしても、「無理するな」と言いがちです。
欲の動きは、成長すると当然、親から、他の対象に向いていくほうが良いのですが、
もう一方の当然の動き、それまでこうしたら親は褒めてくれたの方向で頑張る動きがあります。

好きな事がないとか、好きなのはお酒というときは、
本来の欲の動きではないのではと思われることが多いです。
好きな事は仕事にはならないから、安定した就職先を、という方向は、
健康的な欲の動きをみるときには心配です。
好きな事をするから、我慢ができて、無理がきくというのがわかりやすいはずです。
一方まず現実をみて、身の丈にあった、安定を、ということが多くみられます。
それは先に我慢ありきになるので、好きなことはない、無理がきかない、という結果が生じやすいです。
いつも我慢しているので、酒を飲んで発散ぐらい許してという流れで、結果酒が好き、
アルコール依存となっていることは多いです。

欲の動きは、どうしたい、どうなりたい、でみるのが健康的です。
(その逆が、親の顔色、環境の顔色をみる、欲は抑え、どうあるべきかは、べき思考の方向です)
我儘は、我が感情のまま、という意味では健康的です。
欲を素直にみるという方向も健康的です。
その為には、親以外の相手に、頼りたい相手、
(恋愛対象の相手や、ああなりたい先輩や上司となる相手)をみる、
相談する、相手に言われたことを取り入れ学ぶ方向が、健康的な方向です。

欲動論は難解に書かれがちですが、臨床に役にたちますので、
折に触れ、わかりやすく説明を試みていきます。