精神科医山内の心の相談室

日常の臨床経験から得た心の悩みに役にたつことをわかりやすく説明します

友だち

2018-07-01 | 日記
過去ブログ、親の良い子でいられないと思うこと、で歌手の森田童子の歌詞を引用しました。
その森田童子が先月亡くなったと知り、久しぶりに森田童子の曲を聴きました。
私が20歳前後の歳に、初めて森田童子の曲を聴きました。
今回、再び森田童子の歌詞を引用して、「友だち」の大切さを説明したいと思います。
「君の好きな強い酒、浴びるほどに飲み明かした、長い夜があった」
「ただ友情だけは信じると、寂しく笑った、君の顔を覚えてる」
この歌を、20歳前後に聴くと、このような体験になります。
中学くらいまでは、友だちの影響はあるものの、どうしても親の影響が強い。
高校に入ると、友だちの影響や刺激が段々気になるものの、それでも親の影響が強い。
20歳前後になり、酒を飲んでも良いだろうの刺激がある。
親の良い子であろうとする気持ちでは、酒は勿論やめておきなさい、
夜は12時を過ぎると、早く寝ないといけないと思う。
そういうときに、年齢が同じくらいの友だちが、酒を飲んでいる。
一緒に酒を飲むということで、自分の知らないことを経験している友だちの話を聞ける。
友だちは、自分よりも経験していて、よく知っていると思うのに、彼からすると、私の話もおもしろいらしい。
二人は、話が盛り上がり、夜は12時を過ぎ、親が心配するようなことをしているが、
友だちと飲み明かす、という体験は、親が心配するということより、明らかに良いものとなる。
これは20歳前後の私が森田童子の歌を聞いた時の体験を、
思春期青年期の発達に、友人仲間が大切な役割をする、という説明のためにアレンジして書きました。
森田童子の歌を引用するときに、断っておく必要があると思われるのは、
その歌は「強い酒、浴びるほど」に目が行くと、アルコール依存ではないか、とか、
他の歌にも、精神症状ではないか、と思われる内容がありますが、そうではない、ということです。
精神科医として森田童子の歌を引用した目的はそうではありません。

思春期青年期には特にそうなのですが、年齢がいくつになっても、親の存在は課題です。
親離れのためには、やはり親以外の方向が大事です。
酒が好き、ということは、アルコール依存の方向です。
あくまで、友だちや彼女と、楽しい悲しいを、一緒に酒を飲む(酒は仲間作りの手段です)、
親は心配しても、この友だちや彼女と、その時間がどんなに良いかが、健康的な親離れの方向です。

森田童子の歌の引用で言いたかったのは、友だちの大切さです。
過去ブログの「どうなりたいか」も、友だちが大切の方向に大事です。
人間関係が良いからで職場を選ぶ方向でなく、どうなりたいか、が先です。

森田童子の歌も、ただ表面的な良い関係の友だちでなく、親密な関係になろうとしてなれなかった、
大変だが諦めきれない寂しさ悲しさを歌っているようです。歌の中で自殺願望のような歌詞がありますが、
生きたい気持ちの強さとして聞けます。