仰々しいタイトルですが、高尚な議論を展開するわけじゃありません。そんな能力もありませんから。浅学菲才なわが身としては。
法文はさまざまな事象を想定して明文化するわけですから、いきおい抽象的な書き方になっていたり、いくつかの場面をいっしょに掲げたりと。いろいろですね。
記述式の話。条文を探し当てたらそのまんま書くのではなくて、場面を考えて適宜取捨選択して書いてほしいですね。なんでもかんでも条文を書いておけばいいってわけじゃないんです。
抵当権の消滅請求の場面。第三取得者が一定の提供金額を提供するというところまではいいのですが。何人かの方は、第三取得者が提供金額を「払い渡し又は供託して…」と書くんです。
どうして条文に「供託」と書いてあるのかまで考えなくて。第三取得者が払い渡そうとしても抵当権者が受取を拒んだりはした場合には「供託」の出番なんですね。それなのにそんな場面じゃないのに。抵当権者が受取を拒んでいるなどと問題文には書いていないのに。
問題文にも書いていないことを想定しちゃダメです。話が無限に広がってしまいかねないですからね。もちろん問題によっては「仮定形」で書かないといけない場合もありますが。
想定できる範囲のことを条文に書き込むっていうのは避けられないことなんですが、読む方にとってはメンドーですね。場面を考えなきゃいけないわけですから。
たとえば、他方配偶者の「連れ子」を特別養子にしようとする場合。たしかに、民法ではそれを認めている条文がありますね。817条の3第2項(単独縁組でOK)とか817条の9ただし書き(実親との親族関係は終了しない)など。
この規定から「連れ子」を特別養子にするのはすべて認められるってわけじゃありませんね。一般的には認められにくいっていわれています。裁判所も連れ子を特別養子にする審判をするには慎重なようです。
形式的には「父母による監護が著しく困難又は不適当」という要件に該当しにくいっていうわけです。そもそも養子制度は「子の利益のため」の養子ですからね。我妻先生などは「子どものいない夫婦に子どもを与える」という意義もあるなんて言ってましたがね。それはともかく、この要件は特別養子のいちばん重要な要件です。
「子の利益」というのは、わかりにくいですが、養親に監護養育させるほうが子の養育にとって適切であるというわけなんです。
それはともかく、なぜ「連れ子」の特別養子を成立させるのに慎重なのかというと、「連れ子再婚」は破綻しやすいっていう理由もあるらしい。私の友人にも連れ子再婚のカップルがいますが、一家仲睦まじいですけどね。まして一方の親が実の親だということになると家族間の力学が複雑になってしまうのでしょうね。だから不安定になってしまう…。
せっかく実の親子と同じような関係を作っても離婚しちゃ元も子もないですからね。
…だから家族法はむずかしい。あまりにも人間臭すぎますからね。相続法なんかはドロドロと…。