重要な法令用語の一つに「又は」と「若しくは」があります。ともに選択的接続詞といわれているもの。
選択された語句を単に選択的に結びつける場合には「又は」を使うわけです。単純なことなのにまちがう人も少なくないようで。
例 行政不服審査法29条。「申立てにより又は職権で」をワンセットと考えているらしき…。「又は」ですから、どちらかでいいわけですが。
このように単純な条文ならまだいいのですが。「たすきがけの「又は」」。少しメンドーですかね。「A又はB…、C又はD」というようなケース。4通りの組合せができます。この4通りを意識しておかないと試験には使えないこともありえます。
例 行政不服審査法30条。
選択される語句に段階がある場合には、一番大きな段階の接続には「又は」を1回だけ使って、その他の小さな段階の接続には「若しくは」を使うわけですね。
例 地方自治法14条3項
普通地方公共団体は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、その条例中に、条例に違反した者に対し、2年以下の懲役若しくは禁錮、100万円以下の罰金、拘留、科料若しくは没収の刑又は5万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる。
読み方。まず「又は」を探して「二つ」に分けます。「若しくは」は二箇所使われていますが、大きい方の段階に使う「若しくは」を「大若し」、小さい方の段階に使う「若しくは」を「小若し」というわけです。この自治法14条3項の場合、「科料」と「没収」をつないでいるのが「大若し」。
【問題】科料などと没収の刑のどちらかを選択できますか。
やっかいなことに「又は」とあっても、「及び」の意味で使われる場合があるんです。もっともっとやっかいなことに、立法例では原則として「又は」が使われるという。
その一例。16年改正で変わりましたが、民法537条3項の例。
民法597条3項(16年改正前のもの。適宜句読点を施した)
1 借主は、契約に定めたる時期に於て借用物の返還を為すことを要す。
2 当事者が返還の時期を定めざりしときは、借主は、契約に定めたる目的に従ひ使用及び収益を終わりたる時に於て返還を為すことを要す。但、その以前と雖も使用及び収益を為すに足るべき期間を経過したるときは、貸主は、直ちに返還を請求することを得。
3 当事者が返還の時期又は使用及び収益の目的を定めざりしときは、貸主は、何時にても返還を請求することを得。
このような接続詞にも注意しないと、条文が正しく読めない。
そういう点からも地方自治法の条文はかっこうの学習素材を提供してくれています。一例をあげれば、152条2項、170条6項など。
おそらくこのようなところに「自治法はキライだ」とか「自治法はむずかしい」っていう評価がでてくるのかも知れません。
でも、少なくとも法令用語の接続詞をマスターしなきゃいっぱしの実務家にはなれませんね。
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