~窓をあけよう☆~

ラファエロ展

麗らかな春の日3月5日に上野の国立西洋美術館で開催されているラファエロ展を見に行きました。


さぞや混雑しているかと戦々恐々して行きましたが、人は多いけどマウリツハイス美術館展の時のような行列はなく比較的スムースに見れました。多分会期始めの方だからでしょう。最終日が迫った頃には大変な事になっているかもしれません。

会場に入りまず出合うのがこの絵

自画像(1504~1506年)

ちょっと垂れ目さんなのね。並みいる貴族や枢機卿などの肖像は豪華な衣装や宝石を纏い権勢を誇るかのように描かれますが、ご本人の絵は黒の帽子と衣服でシンプルで質素です。それがむしろ若々しさと端正な顔立ち、そして知性と品の良さがひきたちます。
女性にモテたでしょうね~♪

そしてラファエロのお父さんジョヴァンニ・サンティの小さな絵「死せるキリストと天使たち」があります。
これが色合いが鮮やかで美しいのです。腕の良さに定評があって、工房を持っていて弟子を指導していたそうです。色彩の神に愛された人物に違いないと思いました。

ラファエロは父ジョバンニを11才で亡くし、父の弟子達に手ほどきを受けながら十代で父の技巧に負けない絵を描いてしまいます。
20歳前後で既に時代の先端をいく技術を持ってしまう。非常に細い筆で描いていて、とても緻密で丁寧な仕上がりで髪の毛や頭の光輪以外は筆致がわからない。それでいて全体の画面に調和があり形が整っている。

そして、色が美しい。これはきっと父譲り。

天使(1501年)・・・パンフレットより撮影
なんと17歳の時制作した祭壇画の一部です

同じ祭壇画のなかのマリア像・・・パンフレットより撮影
マリア様のお顔はむしろポッティチェリやフィリッポ・リッピの絵に近い感じがします


りんごを持つ青年(1504年)・・・パンフレットから撮影

17歳の時の作品もかなりの腕前ですが、そのわずか3年後の絵ではさらに技術が飛躍しています。まだ20歳だと思うと恐ろしい位です。天使の赤いマントと青年の赤い衣服をみても進歩の具合がわかります。青年の衣服の布の肌触りや立体的な形状や赤の色変化の表現がとてもリアル。コートの細かな赤いチェック模様は近くで眼を凝らして見ても、筆で描いたように見えず、織り込んだ衣服を見てるようでした。
その赤の美しさよ(#^.^#)。絵の具の色ではなく衣服そのものを見てるよう。
背景は緑色の近景から青く霞んだ遠景まで空気遠近法で表現され大地がどこまでも広がっていきます。
空はとても自然な青のグラデーションでひんやりして澄み渡った空気を感じさせます。
衣服の赤と大地と空の青に囲まれて、貴族の青年は少し青白く、でもほんのり血の気を帯びた肌色がひきたっています。この人の神経質そうな人柄も偲ばれます。

ラファエロはペルージーノやピントリッキオの絵画から影響を受けたそうですが、この時期すでに消化し超えています。

そのあと、ラファエロはいよいよフィレンツェに向かい、ダ・ヴィンチとミケランジェロの絵に出会います。ラファエロの作品は更に進化。スフマート画法(輪郭線を作らず立体的に見せる)も自分のものにします。

そしてこの作品

大公の聖母(1505~1506年)
年齢にして21~2歳の作品です。
18世紀末から19世紀トスカーナ大公フェルディナンド3世がフランス軍のトスカーナ侵攻の混乱の際フランス軍の手に渡る前に入手し、手放さず生涯愛した絵だそうです。寝室にこの絵(しかも本物)があるなんてちょっと信じられないくらいな贅沢ですね。

ラファエロは聖母像が優美なことで知られてますが、もしかしたら8歳で亡くしたお母さんへの祈りがあったのかなぁ。父のジョバンニも優雅な宮廷人だったそうだから、ラファエロの顔立ちから推してもきっと上品で美しい人だったのではと思います。どこかに母親の面影が宿っているのかもしれません。
この絵は本当は室内にいる聖母子として描かれたそうですが、背景に傷みが生じ、後の時代に背景を黒一色で塗りつぶしたそうです。
黒い背景から浮き上がって見える聖母子は神秘性が増したのかもしれません。ラファエロご本人がそれを見たらなんと思うだろう。成程、いいじゃないか、って思ったかな?色を塗るにしても自分なら違う色や描き方をするのに、って思うのかな?。
私は元の背景での聖母子を見てみたかったです。
補修する時、違う色で塗りつぶすなんていまの時代には考えられない事です。

それにしてもなんて端正な聖母子
幼子イエスの体つきも二人の指の形もとても自然で形のくるいは全く感じない。
マリアは清楚な娘さんの風情。半分閉じた眼は優しく見つめていて、そして憂いを帯びて、我が子のこれからを案じている。赤ちゃんのイエスは肉付きがよくとてもかわいい。すでに思慮深い表情をしている。
優しさの一方で誰も侵すことのできない芯の強さを秘めている。
聖母子像の典型ですね。ラファエロは全く妥協せずストイックなくらい厳しく形態を追求し形に表している。

時どき画集や展覧会で日本の仏師快慶の仏像を見ると、ラファエロを思い出してました。
「安阿弥様(あんなみよう)」と呼ばれる快慶の仏像もとても端正で調和のとれたバランスの良さと優美さをもち魅力的。そして形体を厳しく追求した強さを秘めている。東大寺にある地蔵菩薩には、衣服に非常に細かく正確な切金細工の模様が施されているのがまだよくみえます。
優美さと繊細さと正確さと芯の強さに、共通するものを感じます。
同じ時代の運慶もレオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロのようだと感じてます。
12~13世紀の日本の仏教美術は15~16世紀のイタリアルネッサンスに匹敵する技術と文化を持っていたのだと思ってます。

この後、ラファエロは20代半ばでローマに行き、教皇ユリウス2世、そのあとを継いだレオ10世に重用され次々と大掛かりな壁画制作に着手。システィナ礼拝堂をかざる大きなタペストリーの原画も作り、フランドル(ベルギー)の織物工房が制作してます。また貴族の邸宅の壁面装飾も携わる。ラファエロは工房の運営の才能もあり、弟子を育てつつ沢山の仕事をこなしたそうです。これもきっと父親譲りでしょうね!
さらに教皇近臣の知識人とも親交を深め、人脈を広げてます。
こうなるとラファエロと友人でいる事のほうが光栄だったのでしょうね。

絵だけでなく、経営手腕もあったようで自分の絵を有能な版画家に銅板画にしてもらい、広く自分の絵画を知らしめ、その銅版画はヨーロッパ中に広まり、影響を与えたようです。

パリスの審判(マルカントニオ・ライモンディ版画制作1513~1515年)・・・パンフレットより撮影
この絵の右側にいる3人のポーズは後にマネが真似してますね。洒落じゃないけど

さらにレオ10世はラファエロに「古代遺物監督官」に任命(1515年)ローマ遺跡の調査研究にも携わります。

そしてこの作品

友人のいる自画像(1518~1520年)

前にいる人物は今でははっきりとはわからないそうですが、後ろでこちらを見ている人物がラファエロです。若い頃の面影がある。
若い頃の絵の華やいでいた色彩は随分と落ち着き、レンブラントを思わせるように二人の人物の顔と前の人物の指周辺に光があたっている。内省的で何かを物語っているような絵だなと思いました。
ラファエロは落ち着いた雰囲気で佇んでますが、明らかに顔色が悪い。目の下には隈ができて疲れた表情をしている。まだ36歳とは思えないです。
一説によると女好きが困じたといわれています。そりゃこんなに仕事ができて他の追随を許さない才能を持ち、知的でハンサムだからモテるのは当たり前だわ。貴族の方から、うちの娘をラファエロの嫁にしたいと申し出があったほどだそうです。
でもそうじゃなくて仕事しすぎじゃないかしら?有能だからってあんなに仕事を任されたら、責任感で神経がピリピリしそうだし、眠る暇もなくなるのじゃないかな。
ラファエロ自身も自分の能力と体力とのバランスをうまく取れなかったのかしら。・・・というより、命は長くなくても、自分にしかできない仕事を貪欲にやり抜きたかったのかしら。
前の人物は右手を前方に指さしているけど、一体なにをラファエロに指し示しているのだろう・・・。
そしてやはり素晴らしい技術で描いてます。二人の着ている白いシャツの襞がとても自然で筆致はすべて襞の折り目に沿っていて目の前に本物のシャツがあるようです。いい加減な線がひとつもない。
是非本物の絵に近づいてみてほしいです。

ラファエロは1520年4月6日の誕生日に37歳で亡くなりました。教皇はじめ多くの人が哀しみ、パンテオンに埋葬されました。
その同じ年に教皇レオ10世はマルチン・ルターを破門してます。グリューネヴァルトはカソリックの権力者とプロテスタントの農民の狭間で苦悩していました。宗教改革の大きなうねりがヨーロッパを取り巻いていた時代です。

37歳といえばゴッホもその歳で亡くなってます。色彩の神に愛された同士ですね。

このラファエロ展はお薦めです。この人の作品をこんなにまとまって体系的に見れるチャンスはこの先何十年とないでしょう。6月2日まで開催されています。



おまけ・・・
帰りにパンフレットと小さな箱入りチョコレートと小さな缶入りフレバリーティーを買いました。



そして、買った前売り券がペンダントのプレミアム付きのものなのでペンダントをショップで受け取りました。

これは・・・ちっちゃくていまいち(´∀`*)
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