長崎県で最初に開催された(記憶に間違いがなければ)トライアスロンであるこの大会も、市町村合併に伴う存続の危機、民間開催への移行、参加者の減少・・・いろんな苦難を乗り越えて今年で第20回の記念大会として開催されることとなった。
僕は第12回大会から参加させてもらっているがレースそのものはもちろんのこと、五島の人たちや毎年集う参加者の皆さんとの再会が楽しみで絶対にはずせない年中行事となっている。
今年の目標は昨年2年ぶりに逃した表彰台!
しかし事前に送られてきていたメンバー表を見ると、過去の実績からしてどうがんばっても勝てないであろう人が5名ほど名を連ねていた。
この大会の表彰は総合3位までと各年代別表彰が1位のみとなる。
僕らの年代は20~30歳代で前述の5名もみな30歳代だ。
総合に名を連ねるのは間違いないと思われるので、最低でも4位にならないと表彰台には上がることができない。(昨年も同じことを書いているような・・・)
他人を気にしても仕方ないので・・・自分の調子はというと、ここ数年では一番調子が良いと思えるくらいには仕上がっていた。
少なくとも3年半前の交通事故に遭う前の状態までは戻ってきている。
とにかく自分の力を出し切れば結果はついてくると信じてまずはレースを楽しむことにした。
レース当日の朝、風が強く少し肌寒いくらいだったが不思議と波が少なく海は静かだった。
30分前に少し泳いでみたが水温は低いものの、かなり泳ぎやすい。
また、透明度もいつもより高く感じた。
調子は上がっているが、実はスイムだけは相変わらず・・・とりあえずは現状維持という状態だったので「これはいけるかも?」と少し期待が高まる。
9時ちょうどにスタート。
人数が少ないのでバトルもなく、また試泳で感じたとおり泳ぎやすい。
ほぼ同じペースで泳いでいる人がいて、ずっとその人と一緒に泳いでいたせいか前方確認でヘッドアップすることもあまりなく快調に泳げているように感じた。
スイム2kmは660mを3周するコースで、1周ごとに浜に上がる。
ここでタイム確認・・・14分20秒・・・??・・・思ったより遅い・・・。
2周目も同じ人の後ろについて泳ぎ、しばらくするとその人が少し遅れてきたので追い抜いた。
悪い時は中盤から追い抜かれてばかりなので今回特に悪いわけではなさそうである。
2周目を終えて浜に上がってタイムを見る・・・29分・・・ペースは落ちていないので少し安心した。
3周目の真ん中で少しうねりを感じてペースも少し落ちたが自分としては余裕を持って終えることができた。
少し遅れた先ほどの人もほぼ同時にスイムフニッシュした。
トランジットに入ってはじめてわかったのだが、同じペースで泳いでいたのは有力選手の一人であるY君だった。
もちろん彼は前述の5人のうちの一人で、昨年は2位である。
前日にあまり練習できていないとは言っていたが本当に調子は良くなさそうだった。
スイムフィニッシュは45分と少し・・・決して速くはないがいつもながらここからが本番である。
ウェットスーツを脱いで・・・あれ?なんかおかしい・・・???
ふらつく、というよりも完全に目が回った状態(単純にその場でぐるぐる回って止まった直後のような状態)になってしまっていた。
とにかくなんとかしないと・・・ほんの数秒だがその場でじっとしていた。
するとすぐに回復し無事バイクに移ることができた。
あれはなんだったんだろうか?少し不安を覚えながら走り出した。
最初の坂を上り始めるとリレーで出場しているTさんが追い抜いていった。
先ほどの出来事で少しおっかなびっくり走り始めていたがTさんの走りを見て正気を取り戻した。
少し離されたが徐々に追いつく。
するとトランジットで止まっている間に先行していたY君にも追いついた。
頂上では先行し下りに入るとTさんには引き離されたが、Y君はついてこない。
まず関門は一つクリア・・・とその時は思った。
最初の坂をクリアすると入り江に沿って小刻みなアップダウンと平地が続く。
数少ない平地部分なのでDHバーはつけてこなかった。
それでも若干の追い風が手伝って程なく米山への上りに入る。
やはり調子は良いようで、時速が1~2km/hは確実に速い。
ここでも先行している数名を射程に捕らえた。
同じ大阪から参加のMさんもその中にいたので一声かけて追い抜く。
下りに入って一人ついてきていて、一時先行されたが2周目の上りに入る頃にはまた引き離した。
しばらく上っているとまた有力選手である元プロ選手のC君に追いついた。
現在指導者として活動している彼はもう3年ほどレースから遠ざかっているという。
練習ももちろんしていないらしい。
ここでまた一つ関門をクリアした。
・・・と4位以内に入るために想定していた関門は最低限クリアしたが、いつも知らない速い人が来ていたりすることがある。
しかしそうなるであろうと思われる人はバイクで追い抜いたようだったので、おそらく現在4位であるということがなんとなくわかった。
2周目の米山では一人になったが、気持ちを切らさずにクリアしてバイクフィニッシュに向かう。
トランジットに入るとバイクの数は・・・1、2、3、・・・4台・・・1台はリレーなのでやはり現在4位!
補給をしてランシューズを履いていると「今4位!F君が2分先にいるよ!バテてるみたい」と声をかけられた。
あわよくば同い年で歴代優勝者であるF君にも勝てるかも???
年代別どころか総合3位も夢ではない位置まで来たのである。
・・・とそこまで甘くはないわけだがこの調子で行けば少なくとも年代別表彰は確実だった。
ランに入っても調子が良く、足は軽かった。
墓地の前のきつい上り坂で足がつりそうになるが懸命にこらえる・・・とそのとき後のほうで確実に僕に対するものではない声援が聞こえた。
え??誰か来た?バイクで後続の気配はなかったのに・・・
後ろを振り向くとスイムを一緒に上がり、バイク序盤で引き離したはずのY君がすぐそこまで迫ってきていた。
足取りも軽そうだ。
ここは逃げるしかない・・・いや、追いつかれてもなんとか付いていってF君を抜くぐらいでないと・・・
そうするうちにY君はすぐに追いついてきた。
「死んだフリしてたな~!」
そう声をかけると彼は少しこちらに目をやって、付いていく間も与えずに一気に追い抜いていった。
こうなったらもうF君を抜くしかない。
切れそうになった気持ちをまた持ち直して先を急いだ。
ラン12kmはちょうど6kmで折り返す。
その手前の上り坂でF君とすれ違った。
かなり辛そうでいつものように目を合わせて声をかけることもなかった。
しかし差はランスタートからは開いているようだった。
しばらくは一人で走る状態が続いていたが折り返しを過ぎると後続の選手とすれ違い、差を確認することができる。
その中でひとり気になる選手がいた。
どうみても走りが別格である。
しかし1kmは離れている・・・気持ちを切らさないことに集中した。
残り3kmからきつい上りに差し掛かる。
ここをクリアすればフィニッシュまではあと少しである。
最後のエイドを越えて今度は最初に上ってきた墓地の前の坂を下る。
ここでまた後のほうで確実に僕に対するものではない声援が聞こえた。
すれ違う後続選手はしばらくいなかった・・・ということは・・・やはり!!!!!
折り返しすぎで見たあの選手だった。
またか!あと1km少しだったので思い切って逃げてみた。
しかしみるみる足音が迫ってくる。
ほんの一瞬でも付いていくことさえできずにアッサリと追い抜かれてしまった。
表彰式のときにY君に聞いたところ、つい最近まで現役バリバリのランナーだったそうで・・・Y君自信も追いつかれないか心配だったそうだ。
結局ランで2人に抜かれて6位でフィニッシュし、またしても表彰台は逃してしまった。
とはいえ久々に自分の力を出し切れたので、良いレースができたと感じた。
また、たまたま昨年の結果を見ていたら5分近くタイムを短縮できていることがわかった。
スイムは今年のほうが遅かったようで・・・引き続きの課題だ・・・
さて、この大会のもう一つのお楽しみが表彰式のパーティーだ。
今年は記念大会ということでいつも以上に豪華な料理が振舞われた。
伊勢海老、鯨をはじめとしたふんだんな魚介が並ぶ。
そしていよいよ表彰式、ここでは司会者の方の軽妙な進行によりノリの良い表彰対象者とのトークショーが繰り広げられる。
中でもF君は希望どおり某女性演歌歌手のPRをするとともにCDまで流してもらっていた。
(歌わされたのは本人も想定外だったようだが・・・)
僕も工房アカマツのPRをしようと思っていたが・・・表彰台には上れなかったので残念ながら今回はなし・・・と思っていたその時だった。
「これから抽選会のくじを引いてみたい人はいませんか?」
と言われたのでここぞとばかりに手を挙げた。
残念ながら自分自身には当たらなかったがF君や大阪のMさんに賞品が当たった。
そして最後にしっかり工房アカマツの宣伝もしてきた。
「今回のレースの模様はkobo-akamatsu.jpのブログにてお伝えする予定です!皆さん見てください!」
坂口晃一