現在美術日記@関西

アートシーンは東京だけじゃない

大阪ギャラリー巡り【9月26日】

2009年09月28日 04時53分11秒 | 美術
いつものように会期ギリギリになってしまいましたが、ギャラリー回りをしてきました。
その中で気になった展覧会をご紹介します。


まずはGALLERY wks.

GALLERY wks.
佐々木直美 展
2009年9月21日[月]~9月26日[土]

海岸通ギャラリー・CASOにて同時開催
2009年9月22日[火]~10月4日[日]



今回の個展では、「GALLERY wks.」に小作品、
「海岸通ギャラリー・CASO」に大型作品を展示されているそうです。

顔料をアクリルメディウムを定着材として使用し、
キャンバスに溶込ませたような、淡い作品です。



ベースになっていると思われる黒色の部分をよく見てみると、
絵の具が上に盛られている状態とは違い、染められたような発色をしています。

画像では確認できませんが、肉眼で見るとキャンバスの毛羽立ちがうっすらあり、
それが白みががったもやのように、焦点が合わないような感じを受けます。



最初拝見した時は、染色作品のようだと思いました。
しかし染色作品は染料を絵の具のように使って、構図や色の境目を強調することが多い。

しかし染料の性質として、定着された作品は他の画材と比べて、
外的要因には一時的にしろ、めっぽう堅牢度は高いという事が挙げられる。

これらの作品の大事な要素としては、もちろん堅牢度など意識してはいないはずで、
それよりも、効果の現れている部分と基盤になる色との境目に注目すべきだろう。
その境目から感じられるのは、色の粒子の大きさを基軸としての生地の厚さと空間だと思う。


そしてギャラリー白、ギャラリー白3

ギャラリー白
圓城寺 繁誉 展
2009年9月21日[月]~9月26日[土]



一定の大きさの筆(刷毛)と複数の大きなストロークから生み出される、
そのダイナミズムが魅力的な作品。



ストロークの順序を混乱させるような痕跡に、
その結果の最終形が大きな図形であるかのように思わせる、その縁取り。

圓城寺繁誉さん曰く、筆(刷毛)で描いた時に外側が(かすれて)弱く表れる性質に、
気をかけて制作されたとのこと。
赤く縁取った所はそのためかと思っていたら、
それは制作初期段階で塗られている、下地にあたる部分が見えているという。



小作品においても、道具の大きさは変えていない事がとても印象的だった。
作品にとってそのストロークの存在が重要であることが伝わってくる。

また、作品の製作過程に工芸的な計算が感じられるし、
しかし工程途中の偶発的に起こる(筆のかすれ等の)揺らぎを、
作品の要素として組み込めている所に作家の力量を感じた。


ギャラリー白3
神脇 美保 展
2009年9月21日[月]~9月26日[土]



一定の色調の暗さとシュールなモチーフが特徴的な作品。

唇のモチーフは、作家ご自身の疾患から経験されたイメージの表れらしく、
さしずめ症状によって変化した気持ちという感じでしょうか。



作家の持つコンプレックスが作品に大きく影響することは、
割に多く見られることでもあります。

作品には直接的・間接的にしろ、
制作されるきっかけや動機みたいなものが存在します。
それらは鑑賞者のいろいろな感覚や保留していた考え事、
あるいはコンプレックスに結びつくこともあるでしょう。

作品の評価を表す手段として、
その影響力を計ることもあるのではないでしょうか。
初個展ということでしたので、
作品を色々と試すいい経験になるといいなと思いました。


GALLERY wks.
〒530-0047
大阪市北区西天満3-14-26
中之島ロイヤルハイツ1103
http://www.sky.sannet.ne.jp/works/

ギャラリー白・ギャラリー白3
〒530-0047
大阪市北区西天満4-3-3
星光ビル2F・3F
http://www.ne.jp/asahi/gallery/haku/


※ご紹介した作品画像は、当ブログに掲載すべく撮影させていただきました。
個人管理のブログにも関わらず、
快諾していただいた各ギャラリー様のご厚意に、心より感謝致します。



大阪ギャラリー巡り【9月19日 その2】

2009年09月23日 10時58分10秒 | 美術
続きまして、GALLERY wks.へ。

GALLERY wks.
山内庸資展
2009年9月7日[月]~9月19日[土]



画像では解りにくいですが、エナメル質のように光沢のある平面作品。
ラフな筆致と部屋の暗さが相まって、質感に厚みを与えています。
もっと大きなサイズの作品であれば、また違った雰囲気が出るのかもしれません。




そして、ギャラリー白へ。

ギャラリー白
山中 隆 個展
2009年9月14日[月]~9月19日[土]



アクリル絵の具とマットなメディウムを、
キャンバス上で混ぜ合わせるようにして指で描いたペインティング作品。



メディウムも複数の種類を使っておられるようで、
その質感を左右する素材も絵の具と同じように、キャンバス上で混ざってゆく。

キャンバスににじむ絵の具とゲル状に留まっている絵の具、
上下運動の痕跡など色々な要素によって、鑑賞者との距離に奥行きを与えていると感じた。



手の動きからできたストライプは、指の隙間から痕跡の積層が覗いているようでもあるし、
また絣の生地のような縦糸に染まった模様を見ているようにも感じられる。

緯糸が通される前の、その地の透けた様子を彷彿とさせて、
未完の生地を見ているように、仕上がりを望む自己の姿勢を鑑賞者に思い起こさせる。


最後はGallery H.O.Tにうかがいました。

Gallery H.O.T
関しづよ展
Red Berries-赤い実

2009年9月14日[月]~9月26日[土]



通常のライトとブラックライトを交互に切り替えて、
それぞれのインクで印刷された風景が浮かび上がる作品。

関しづよ展(Gallery H.O.T)


まるで映像を見ているような、画像の切り替わる動きが無音で行われており、
その静かな変化が大変魅力的に感じた。

また会場を黒い風船が覆っていて、それから発する独特な、
でも懐かしいにおいが立ち込めていて、作品を観賞する感覚に影響しているようだった。


GALLERY wks.
〒530-0047
大阪市北区西天満3-14-26
中之島ロイヤルハイツ1103
http://www.sky.sannet.ne.jp/works/

ギャラリー白
〒530-0047
大阪市北区西天満4-3-3
星光ビル2F・3F
http://www.ne.jp/asahi/gallery/haku/

Gallery H.O.T
〒530-0047
大阪市北区西天満3-6-3
西天満福岡ビルディング1FC
http://galleryhot.com/index.html

※ご紹介した作品画像は、当ブログに掲載すべく撮影させていただきました。
個人管理のブログにも関わらず、
快諾していただいた各ギャラリー様のご厚意に、心より感謝致します。

大阪ギャラリー巡り【9月19日 その1】

2009年09月22日 03時48分43秒 | 美術
先週はなにかとバタバタしておりまして、会期ギリギリのギャラリー巡りとなりました。



アートコートギャラリー
「P&E 2009」
Aグループ 2009年8月27日[木]~9月5日[土](絵画・写真・平面作品)
Bグループ 2009年9月10日[木]~9月19日[土](立体・工芸・映像・インスタレーション)

今回はBグループを拝見。


Human Scrap/坂本千弦

ファイバーワークのようにテクスチャーで魅せる作品でよく見る展示方法だが、
素材の軽さとその複雑な絡まり方によって、存在感がある作品。

衣服の形をしている必要性はさておき、
素材の物体性とコンセプトがもっと重層的に感じられれば、
より魅力的になるのではないかと思った。

素材は現在のテクスチャー以上に、作品とは本質的に独立している気がするし、
それの変質や具合をより良く整えるのは作家の役割と思う。




礼装/城崎郁恵

板ガラスに傷をつける事によって、現れる変化に重点を置いた作品。
表面の傷とそれを支える2次元表現の衣類の形状によって現れる、
絶対的な表層感がこの作品の魅力だと思う。

物事を表面的に受け取りやすくなった自分自身の感覚に対する皮肉のようでもあるし、
生活で目につくイメージの刷り込み効果のいい加減さを端的に表しているようでもある。

作家のコンセプトとは違っているかもしれないが、
作品に余計な情報が盛り込まれていない所が、
素直に観賞できるいい環境を生み出していると感じた。


父と僕の91年鈴鹿/上田周平

ヘルメットの形状に顔が浮かび上がっていて、深刻な内容がコミカルに感じる作品。

ヘルメットに見える顔とそれを被る顔、
そのままヒトの二面性を表しているように感じてもいい。
でも、もう少し突っ込んで考えるなら、
ヘルメットを被った顔が本当にあるのかどうかまで期待したかった。

画一的に装った顔があると断定するのではなくて、
その疑わしさがコミカルに笑えたならば、作品が人を少し救えたかもれない。




アートコートギャラリー
〒530-0042 
大阪市北区天満橋1-8-5
OAPアートコート1F
http://www.artcourtgallery.com/acg_news.html

※ご紹介した作品画像は、当ブログに掲載すべく撮影させていただきました。
個人管理のブログにも関わらず、
快諾していただいたアートコートギャラリー様のご厚意に、心より感謝致します。

放課後のはらっぱ【9月13日】

2009年09月18日 00時00分01秒 | 美術
愛知県2日目は、あいちトリエンナーレ2010のプレイベント、
「放課後のはらっぱ」展の愛知県美術館名古屋市美術館
そして、「キタイギタイ」 ひびのこづえ展(はるひ美術館)を回るというハードスケジュール。




放課後のはらっぱ -櫃田伸也とその教え子たち-
愛知県美術館
2009年8月28[金]~10月25[日]
名古屋市美術館
2009年8月22[土]~10月18[日]

前日とは打って変わって快晴になったこの日。
真夏日のように暑くて、じりじりと日光を背中に浴びて愛知県美術館へ。



第一室には櫃田伸也さんと、その教え子である
そうそうたるメンバーの学生時代の作品が展示されており、
奈良美智さんをはじめ、新進気鋭の作家たちが櫃田先生について
学生時代の作品を前にいろいろ語っています。

特によかったのは、櫃田伸也さんの学生時代の作品とその教え子たちの作品が
同じ部屋に展示されていた部屋。
先生と教え子達がまるで同級生かのようで、
そして若くて、親しみを思える空間でした。

自分の学生時代を思い出し、懐かしくもあり、うらやましくもなった。
学生にとって、作家という人物と生活を実感できる環境と、
目標に出来る先生がいることは何よりも素晴らしい。

櫃田先生がいなければ、今の自分はないと言わしめる環境に、
自分も味わいたかったと思った。



第2室は、かつての教え子たちの、現在の活動を展示しています。
若い頃からの変遷が垣間見えるような、
これまで積み上げてきた成果が今の表現になっているのだなと、頷いてしまう。

どれも作品の完成度が上がっていて、美術として強度を増していた。
でも、学生時代の右往左往している作品のほうがいいな、と思ってしまうのはなぜだろう。
未完成でまだまだ伸びしろがあって、でも混沌とした生活を送っていたはずの、
そのもどかしさから発する何かが心地よかったのかもしれない。


くたくたになりながら、はるひ美術館へ、
もう体力とも頭の中とも、フル回転してしまったので、写真を撮れず。



たまたま最終日だったようで、ひびのこづえさんご本人がいらっしゃいました!
実は伊丹市立美術館でのアーティストトークの時、最前列で聞いていたのですが、
まさかここでもお会いできるとは思いませんでした。

「子どもたちによる春日町さよならイベント」をやっていたようで、
忙しそうにされていました。

更に!NHK「サラリーマンNEO」でおなじみのコンドルズの近藤良平さんが!!



テレビサラリーマン体操でいつも噛まないように、
必死に司会をしているのを、いつも見ておりますよ。

ひびのこづえさんと近藤良平さんを見て、
いつの間にか疲れがふっとんでいきました。

ラッキーで充実した、二日間の愛知県美術館巡りでした。


愛知県美術館〔愛知芸術文化センター10階〕
〒461-8525
名古屋市東区東桜1-13-2
http://www-art.aac.pref.aichi.jp/

名古屋市美術館
〒460-0008
名古屋市中区栄二丁目17番25号
http://www.art-museum.city.nagoya.jp/index.shtml

はるひ美術館
〒452-0961 
春日町大字落合字夢の森1番地
http://www.town.haruhi.aichi.jp/museum/index.html


ヘンカデン(山田弘和の変化した・家電)【9月12日】

2009年09月17日 00時00分01秒 | 美術
「ジュゼッペ・ペノーネ展」を見た後、同時開催されていた「ヘンカデン展」へ。



豊田市美術館
ヘンカデン
2009年7月7[火]~9月23[水・祝]

現在のPCで使われているマウスの原型をデザインされたという経験をもつ、
プロダクトデザイナー山田弘和さんが考える、
新しい家電「ヘンカデン」のデザイン事例を紹介しています。


山田弘和インタビュー 【※YouTubeより転載】

豊田市駅までの途中、地下鉄に長時間乗ったのですが、
窓に現在の気候で風景映像が電車のスピードで流れればいいなと思っていました。
山田弘和さんのデザイン案のなかに、置き窓に景色の映像が流れるというのがあって、
実現するといいなぁと考えて見ていました。

プロダクトデザインに関しては、全くの素人なのですが、
家電のデザインということで、親しみをもって見る事ができました。


豊田市美術館を出発する前に、常設作品をじっくり観賞。


豊田市美術館のためのインスタレーション 1995/ジェニー・ホルツァー

映像では英文が流れていますが、日本語も流れていました。
「恋愛は当たって砕けろ」
「父親はあまりにも権力をふるい過ぎる」などなど。
匿名性の高い文章によって、「作家」の主張すぎない伝わり方を模索しているようです。


【※YouTubeより転載】


分類学(応用)/ジョセフ・スコース

壁面全体に哲学者・思想家の名前が表記されています。
電光掲示板といい、壁一面のアルファベットといい、
文字を使った哲学的表現色の強い常設作品でした。

電光掲示板の文字が流れる無音さ加減と、
それが天井に吸い込まれる様子が、不思議で単純に楽しい。