「言いたいことは、それだけか。タコ」
「それも言えないほどにしてやるよ。このタコ野郎」
ビーフォンの舌打ちを合図に、再び剣を交わしあった。
相手の攻撃を受けながら後ろに引き下がる。まあ、剣を振らせてあげているわけだ。こうやって森の奥へと誘い込む。
木々の合間を抜けながら、攻防戦はなおも続いた。
「タコめ……! やる気あるのか!」
「ああ、あるさ。大いに」
人がなかなか踏み入れない、かなり森の奥まで引き込んだ。高い木々たちが新緑の大葉で空を埋め尽くし、辺りは薄暗い。風がわずかに吹いており、葉がこすれ合う音がしっかりと聞き取れる。森の木々は思い思いに根を下ろして並びに規則性はないが、徐々に見覚えのある並びが見えてきた。この辺だな、あれがあるのは……。
「じゃあ、見せてやるよ。オレのやる気を!」
ビーフォンの右を狙うかのように、剣を振り上げる。そうすれば、あいつは自分の左に避ける。予想通り左に避けたので、そのまま振り下ろした。
「……あっぶね!!」
「惜しかったな……」
不敵に笑って見せたが、よろけても剣で受け止めたビーフォンを捕らえきれなかった。
「なんだ、ここは! ここだけ、地面がへこむ」
「ああ、そうだ。この辺は足場が悪い」
「それくらいは、お互い条件は同じだろ。この、タコ!」
また、例のごとく右足を蹴り出し、串刺しにするかのごとく振り抜いてきた。
「そうか?」
それを見切って振り払い、残った体力を振り絞りビーフォンを押しのける。正直、さっきので仕留めるつもりだった。けど、あれは――
「まだ、他にもあるんだよ!」
狙い通りの場所に追い込み、再び体勢を崩せた。
「そう何回も、はまるか!」
素早く体制を直し、左に体を移動させた。
「やっぱ、左だよな!!」
ビーフォンの左足が滑らせたのを見逃さずに、最後の力を愛剣に込めて、あいつから剣を落とさせた。そして、倒れたビーフォンの顔に剣先を向けた。
「……悪かったな。この辺はガキの頃に落とし穴を作って埋めさせられた後が、所狭しとあってな。部分的に足場が悪いんだよ。オレは位置を把握しているがな」
埋め戻す際、大人たちへのちょっとした抵抗で、落ちるかわりに泥濘で滑りやすいようにしておいた。まさか、ここで使えるとは……。信じて送り出してくれた旧友のためにも、勝たなきゃな……!
「この選考会は、なにがあっても国を守る騎士団を決めるもの。悪条件を言い訳にはできないよな」
「……タコめ。卑怯だぞ!」
「ああ? 奇襲作戦のお返しだ」
風呂に入っている所を狙うのも、十分卑怯だぞ。
「あーあ。お前のせいで、この汗を流す風呂がひとつなくなったよ……」
「これは……せめてもの償いだ」
戦意を失ったビーフォンから手渡されたのは、かなりの大金が入った麻袋だった。
「これで湯治場を直してくれ」
「ああ、わかった。村に管理人がいる。そこに伝えておく」
悪気があるなら、奇襲作戦なんてしなければいいのに……と思った。
しかし、今日はギャラリーが多いな。物陰に隠れて見ているのは、この森に入ってから気配で気づいていた。いつも候補者に一人ずつ監視員がついているのだが、二人体制にでもなっているのか?
≪ 第14話-[目次]-第16話 ≫
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「それも言えないほどにしてやるよ。このタコ野郎」
ビーフォンの舌打ちを合図に、再び剣を交わしあった。
相手の攻撃を受けながら後ろに引き下がる。まあ、剣を振らせてあげているわけだ。こうやって森の奥へと誘い込む。
木々の合間を抜けながら、攻防戦はなおも続いた。
「タコめ……! やる気あるのか!」
「ああ、あるさ。大いに」
人がなかなか踏み入れない、かなり森の奥まで引き込んだ。高い木々たちが新緑の大葉で空を埋め尽くし、辺りは薄暗い。風がわずかに吹いており、葉がこすれ合う音がしっかりと聞き取れる。森の木々は思い思いに根を下ろして並びに規則性はないが、徐々に見覚えのある並びが見えてきた。この辺だな、あれがあるのは……。
「じゃあ、見せてやるよ。オレのやる気を!」
ビーフォンの右を狙うかのように、剣を振り上げる。そうすれば、あいつは自分の左に避ける。予想通り左に避けたので、そのまま振り下ろした。
「……あっぶね!!」
「惜しかったな……」
不敵に笑って見せたが、よろけても剣で受け止めたビーフォンを捕らえきれなかった。
「なんだ、ここは! ここだけ、地面がへこむ」
「ああ、そうだ。この辺は足場が悪い」
「それくらいは、お互い条件は同じだろ。この、タコ!」
また、例のごとく右足を蹴り出し、串刺しにするかのごとく振り抜いてきた。
「そうか?」
それを見切って振り払い、残った体力を振り絞りビーフォンを押しのける。正直、さっきので仕留めるつもりだった。けど、あれは――
「まだ、他にもあるんだよ!」
狙い通りの場所に追い込み、再び体勢を崩せた。
「そう何回も、はまるか!」
素早く体制を直し、左に体を移動させた。
「やっぱ、左だよな!!」
ビーフォンの左足が滑らせたのを見逃さずに、最後の力を愛剣に込めて、あいつから剣を落とさせた。そして、倒れたビーフォンの顔に剣先を向けた。
「……悪かったな。この辺はガキの頃に落とし穴を作って埋めさせられた後が、所狭しとあってな。部分的に足場が悪いんだよ。オレは位置を把握しているがな」
埋め戻す際、大人たちへのちょっとした抵抗で、落ちるかわりに泥濘で滑りやすいようにしておいた。まさか、ここで使えるとは……。信じて送り出してくれた旧友のためにも、勝たなきゃな……!
「この選考会は、なにがあっても国を守る騎士団を決めるもの。悪条件を言い訳にはできないよな」
「……タコめ。卑怯だぞ!」
「ああ? 奇襲作戦のお返しだ」
風呂に入っている所を狙うのも、十分卑怯だぞ。
「あーあ。お前のせいで、この汗を流す風呂がひとつなくなったよ……」
「これは……せめてもの償いだ」
戦意を失ったビーフォンから手渡されたのは、かなりの大金が入った麻袋だった。
「これで湯治場を直してくれ」
「ああ、わかった。村に管理人がいる。そこに伝えておく」
悪気があるなら、奇襲作戦なんてしなければいいのに……と思った。
しかし、今日はギャラリーが多いな。物陰に隠れて見ているのは、この森に入ってから気配で気づいていた。いつも候補者に一人ずつ監視員がついているのだが、二人体制にでもなっているのか?
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