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Kitten Heart BLOG -Yunaとザスパと時々放浪-

『きとぅん・はーと』でも、小説を公開している創作ファンタジー小説や、普段の日常などの話を書いているザスパサポーターです。

【小説】「パスク、あの場所で待っている」第14話

2015年09月06日 08時15分38秒 | 小説「パスク」(連載中)
「パスクは、強いな……」
 幼少期のことだった。このあたりの温泉街はもちろんのこと、山や川を同じ村に住む同年代の子どもたちと一緒に駆けずりまわっていた。この一帯は自分たちの庭のように遊んでいたので、細かいところまで熟知している。よく罠だの作るなど悪さをしては、大人たちに怒鳴られた。
 村の仲間内の中では一番力が強かった。仲間の勧めもあり騎士団入りを目指すようになった。コリエンテたちと出会うのは、村を旅立ってからその後の話だ。
 ちょくちょく帰郷してきているので、ガキの頃と遜色なく地理は今も細かく把握している。

 なかなか敵は姿を現さない。崩れ落ちた瓦礫の中から衣服を探し出し、急いで羽織った。あたりは木々に囲まれており、どこかに身を潜めているのは確かだ。
 すると木陰から何かが飛び出してきたので、とっさに避けた。代わりに残されていた湯船を手早く切り裂かれて、中に残された湯が辺りを撒き散らした。
「避けやがって。このタコが!」
 とっさに交わしたオレを睨み付けてきた。
「お前か……!」
 あっという間に浴場を破壊した、一本の細長い剣。それを操る男も細身の高身長、後ろで束ねた黒い髪が、風に逆らうことなく揺れていた。
「おとなしく降参しろ! このタコが!」
「どうしてくれるんだよ、あの浴場!」
「タコが茹で揚がって、滑稽だったがな」
「タコ、タコ、毎度うるせえんだよ!」
 ビーフォンは、見た目のスタイルはいい。だが、オレよりひとまわりくらい年が上のはずだが、この通り口が悪い。
「タコは茹で釜が、お似合いだ」
 決め台詞を吐いてから、蹴り出してから仕掛けてくるまでのスピードはなかなかのものだった。ちょっと感心しそうになった。
「それを全て壊したのは、てめえの方だろうが!」
 突き刺すように振り抜いた剣を素早く体をひねって交わし、横から振り払った。
 その後もビーフォンは手を休めることなく、連続攻撃が続いた。ちっとも反撃なんかさせてもらえず体力だけが消耗していく。
「う……ぐっ……!」
 これまで初戦からずっと抱えている、左脇腹にえぐるような痛みを感じた。村の医者にも一度診てもらったが、湯治を一回したくらいじゃあ治らないよな……。長期戦だけは避けよう。
「攻撃しないのかよ、タコ!」
 こいつの挑発に乗ったら負けだ、冷静を保とう。そもそもこいつ、『タコ』が口癖なのかよく口にしている。オレのどこを見渡しても、タコと呼ばれる要素は含んでいない。
 それにしてもビーフォンの体力はなかなか落ちない。カウンターで振り抜くくらいしかチャンスがない。ワンチャンスを見逃さないと振り抜こうとしたが、ぬかるみに足を滑らせそうになり体制が崩れた。そこを逆に仕掛けられたが、それはさせないと我が愛剣で受け止めた。
 ああ、そうか……。そうだよな、その手があったな。
「ちっ。タコをぶつ切りにできると思ったのに!」
「ダメだな……オレって。村を――この街を守るといって、騎士団を目指したのにな……。小さな小屋すらこのざまだ……」
「このタコ、ついに降参でもするか?!」
「……お前がな。オレには捨てられないプライドがあるんだよ!」
 あれがまだ、あのままなら……勝てる。


≪ 第13話-[目次]-第15話 ≫
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