きさらさら日記

日々のいろいろ雑記帳 by:kisarasara

愛しのばあば来たる。

2010年10月31日 20時45分31秒 | 徒然
時々無性に会いたくなる人がいる。
血はつながっていないんだけど、
互いに「うちのばあちゃん」、「うちの孫」と呼び合う愛子ばあば。

御歳80半ばにして全国をピョイピョイ飛び回っている。
東京にいる時は毎朝6時~9時、
都内のとあるロイヤルホストの喫煙席で
モーニング食べながら手紙や原稿を書いているので
私は会いたくなるとそこに出かけてゆくことにしている。

10代後半から20代前半、もっとも時間を持て余していた時期に
私は愛子ばあばの荷物持ちとなって
フランス、アメリカのインディアン居留地、南インドの旅のお供をした。

愛子ばあばは、今では知る人の多くなった
陰陽の考え方を元にした食事法
「マクロビオティック」の創始者、
桜沢如一氏の数少ない直弟子である。

私のアトピーの治療のためにと
御殿場にあった庵を訪ねて以来、
食事法に不真面目な私たち家族の
ちゃらんぽらん具合をどう思っておられるのかは不明だけど、
なんだかんだ20年近いおつきあいになる。

すごいばあちゃんで、顔観るだけでその人がどんな身体の具合なのか、
経験からたいてい分かってしまう。
だから愛子ばあばの前では隠し事ができない。

ふたりでの旅は珍道中で、
ムンバイの空港の人ごみではぐれて一生会えないかと思ったり、
パリのトイレに入れ歯を流したり、
南インドのど田舎の荒野の家で1週間自炊暮らしをしたり、
ふたりでシングルベッドに寝たり、
おかしなことばかりが思い出される。

今年に入ってから、
4月26日の「祝の島」の完成披露試写会に来てくださった時も
挨拶もそこそこに、失礼していた。
元気かな、と思って、
近々ロイヤルホストいきま~すとはがきを出したら、
その翌々日の10時、急に事務所に現れてびっくり。

「キラちゃんが眠い目こすって来たら大変と思って来たわよ」
「やだ~!私が行くのに!」
江戸っ子ばあちゃんのせっかちを忘れて告知した私が悪かったのである。

コーヒーのみつつしばし近況報告。
「島に行きたいって言うってお母ちゃん言ってたわ。
あなたはインディアンとこ行ったらインディアンの子、
インドに行ったらインドの子、島に行ったら島の子になっちゃうのねえ」
事務所を眺めて
「これだけのお仕事するためにはそれだけ紙も要るのね」
「芸術家は美食しないとだめなのよね。振り幅で表現するんだから」
「会えばよかったのよね、これで帰るわ。
いつまでもばあちゃんが居たんじゃあ、あなたの仕事にひびくから」

そうしてつむじ風のように去り際、
「じゃあね、元気でね」
と私の手を握り、
「あら、あなたの手・・・もっとよく噛みなさ~いよ~!」
てな具合に・・・ほんとうにいつもかなわないのである。

道を極めた人というのはかくも身軽なもので
小さなリュックひとつで飛び回る愛しのばあばの後ろ姿は
妖精の羽が生えているように強くてかわいらしいのだ。

いつかあんな風になりたい、と思う。
まだまだまだま~~~~だ、果てなく遠い。

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2 コメント

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Unknown (そげげ)
2010-11-01 00:37:56
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カビ生えそうな脳みそに風穴ボコンとくれました。

愛しのばあばステキです。


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Unknown (kisarasara)
2010-11-01 01:47:45
>そげげ

でしょ。
突き抜けてるの。
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