九重連山二日日(2)

2013年06月14日 | 登山

昨日は36℃あったらしい。
そんな中、終日代掻きをしていた。
麦わら帽子を被っていたが、太陽の水面反射で顔がまっかっかに焼けた。
ヒリヒリと痛む。
 

―――― ◇ ―――― ◇ ―――― ◇ ―――― ◇ ――――

 登り専用路を上がっていると、推定80歳の日本昔話に登場するような爺様婆様が道を譲ってくれた。昨晩は法華院に泊まったとのこと。山歩きは今年が最後だろうと仰る。10年後か20年後か、自分にもいつしか最後の山行きが訪れるだろう。もしくは今夏あたりに、最後ではなく最期の山が訪れる可能生だってあるなと思った。

 南峰に着いたが相変わらずガスの中。本峰を経由して西の尾根へ向かう。岩場には三脚を立てたカメラマンたちがガス晴れを根気よく待っている。更に西に進んだ静かな岩場でお昼にした。スパゲティは油のねばりが強くて、コッヘルの拭き取りが面倒だった。

 ガスが飛ぶぞー、と三脚のあった辺りから声がした。坊がつるが見え始め、白いカーテンが徐々に上がり、三俣山が姿を現した。中岳、久住の高峰群は雲を被ったままだったが、それでも満足だった。展望ショーは10分ほどで幕を閉じ、再び雲の中に隠された。取りあえず場所を移動することにした。山頂方向に戻っていると、いつの間に沸いたのか人の多いこと。今朝長者原を発ったと思われる登山者がひしめいていた。

 本峰から南峰まで戻ってきた。岩場に腰掛けて再びガス晴れを待つが痺れを切らす。大戸越えまで下り、そして坊がつるを目指した。登山者が多い道だけにぬかるみは酷い。滑ってズボンを汚すことの無いように気をつけて歩いた。

 14時、坊がつるまで戻り、テントまで間近になった時に、アラフィフのオバ様に声をかけられる。
「あちらを越えて帰ろうと思うのですが、私たちに大丈夫でしょうか。」

 あちらとはスガモリ越だった。長者原から雨ヶ池経由で平治に登ったとのこと。スガモリ越を経由して帰ろうと欲が出たらしい。と言われても、私たちの体力が判らない。失礼ながら視線を顔から、胸、腰、足と落とす。小柄ながら丈夫そうな太腿で、自分よりは強そうだった。

「雨ヶ池より標高が高い分、30分から1時間くらいは余計にかかるかも。
それからスガモリからの下りは岩ばかりで歩きにくいかな。でも危ない所は無いよ」と答えた。

 振り返るオバ様。その視線の先には二人の連れのオバ様がいて、こちらの様子をうかがっていた。
察するに、相談にきたオバ様は一番体力があって、他の二人の賛同を得るために、第三者の言質を求めている様子。犯罪の片棒を担がせられているような気がして、「一番体力のない人を基準にして決めた方がいいですよ」と付け加えといた。

 荷物をテントの中に入れて温泉行きの準備をしていると、先程のオバ様たちから「来た道を帰ることにした」との報告があった。今夜は温泉旅館で美味しい料理を食べるらしい。

 法華院温泉はやはり垢だらけだった。衣服を脱ぐ前であれば躊躇うのであろうが、スッポンポン状態では引き返せない。だが、いざ入ってみると、汗でべとついていた体がさっぱりして500円分の値打ちを十分に感じた。ただし熱くて浸かっていられるのは3分が限度。入ったり出たりを繰り返した。

 温泉からの戻り道、雲は飛び平治岳がくっきり見えた。悔しいが、風呂上がりでありもう歩く気はしなかった。テントに戻り、平治山頂で撮った写真を家族にメールした。
ババ様からは「芝桜きれいね」
倅からは「紫の気味悪い花はなに?」と返信があった。
二人の娘からは翌日になっても返信がこなかった。

 夜の8時半、寝入りばなだった。近くのテントからの怒声で目が覚めた。「山とは何ぞや」。酔っぱらった爺様が山の原理主義を熱く語っている。己の考え以外は一切認めない意向らしい。相手は同行者なのか、このテン場で知り合った人なのかはわからないが、酔っぱらい爺さんを諫めている様子。そのうち、諫めている人も腹が立ってきたのか声が荒くなる。

 殴り合いが始まるのだろうかと様子を伺うが、大声が響くばかりでなかなか進展しない。そんな中、頭の中では山岳サスペンスなるものが育っていた。雪山ではないからピッケルが無い。テントのペグは武器になりそう。周辺にはテントの張り綱用の石がたくさん転がっている。川が近くて溺れるには十分の水量。やられるのはもちろん原理主義の爺様。だけど、周辺にはテント住民がいてアリバイ工作は難しそう。

 爺様たちは9時前には静かになった。酔い潰れて眠ったのだろうか。













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2 コメント

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Unknown (miya)
2013-06-15 07:11:55
霧の山さん、お久しぶりです
相変わらず飛び回っていますね、お元気でなりよりです

文章の冴えは衰えるどころかますます磨きが掛かってきましたね
面白いです、楽しみに読ませてもらっています
ミヤマキリシマは18年前と変りなく美しくて素晴らしいです、良い写真を見せてもらいました
ありがとうございます。
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Unknown (霧の山)
2013-06-16 11:38:36
M.iyaさん、こんにちは。

18年前に行かれましたか。
写真は綺麗だった所ばかり選って載せてますので、実際は18年前の景色から
退化の方向に変化しているのではないでしょうか。

某所の情報では、しもで孫の護衛をなされているとか。
来月になると、涼しい祖谷で熱い選挙戦がありそうですね。
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