未来の少女 キラシャの恋の物語

みなさんはどんな未来を創造しますか?

第21章 同じ時を生きる君に ⑫

2021-02-08 15:45:42 | 未来記

2021-09-10 21:34:00 | 未来記

12.ホテルの爆破予告

 

キラシャとケンが、ハッと気が付くと、そこはパールとマイクと一緒にいた部屋だった。

 

転送する前と同じように、2人はギュッと手を握って立っていた。

 

転送前のことは、幻のようなひとときでしかなかったが、まだ爆発で耳がキーンとした感じが残っていて、部屋の雰囲気とは違う、異空間にいるような気がした。

 

頭から砂まみれになっているキラシャとケンに気が付いて、ベッドにいたパールが、心配そうに2人を見て言った。

 

「キラシャ ダイジョウブ?

 

タケル アエタノ…? 」

 

キラシャは、コクリとうなずいたが、すぐに首を振った。

 

ケンが、キラシャの気持ちを察して言った。

 

「タケルの姿は、ちょっとだけ見えたンだ。

 

ただ、いろいろあって、話が全然できなかった…」

 

パールに心配をかけないよう、それ以上のことは言えなかった。

 

マイクは、起きてはいるが、ベッドの上で眠そうに壁にもたれていた。

 

転送してから、そんなに時間がたっていなかったことに気が付き、キラシャはあの出来事は夢だったのだ、と思うことにした。

 

『もういいンだ。

 

タケルのことは、忘れた方がいい。

 

ケンの方が、ずっとあたしのこと思ってくれてたンだ。

 

あんな危険な目に遭っても、あたしの手を握って、引っ張ってくれたンだもの。

 

神様は、きっとタケルを忘れさせるために、会わせてくれたンだ。

 

もう、タケルのことを思って、後ろ向きになるのはよそう。

 

ケンと一緒に、無事にMFiエリアに帰らなきゃ…』

 

その時、マイクのお腹が部屋中にギュルル~と鳴り響いて、部屋にいた4人は腹を抱えて笑った。

 

『マイクがいると、あ~生きてるンだなって、ホッとする…』

 

マイクは、いつものように自分のバッグからお菓子を取り出し、みんなに手渡しながら言った。

 

「キラシャモ ケンモ スナダラケ…

 

ナニシテタノ? 」

 

マイクの何気ない質問に、2人ともギクッとしたが、ケンが軽い感じで答えた。

 

「ちょっと、砂遊びしてたンだ。タケルが、引きこもりみたいになっちゃってさ。

 

話ができなかったから、砂で遊んでたンだ…」

 

ケンのとっさのウソだったが、マイクは「ヘェ~」とだけ言って、それ以上何も聞こうとはしなかった。

 

何となく、これ以上聞かない方がいいのかもと、マイク流の気を使ったのかもしれない。

 

キラシャとケンは、パールからウェット・ティッシュを受け取り、顔の汚れをふき取って、Mフォンで消滅させた。

 

転送前のマイクの寝姿をからかいながら、4人でお菓子をほおばっていると、急に部屋の外であわただしく人が行き来し始め、ドアを叩く音がした。

 

「君達も、すぐに支度をして荷物を持って、外に出なさい! 

 

このホテルを爆破するという予告があったそうだ。

 

いつ起こるかわからないから、一刻も早く逃げないと! 」

 

デビッドおじさんの声だ。

 

4人は、急いで身支度をして荷物をまとめ、薄暗い廊下に出ると、デビッドおじさんの後に続いた。


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