未来の少女 キラシャの恋の物語

みなさんはどんな未来を創造しますか?

第15章 真実って? ⑥

2021-05-13 20:36:34 | 未来記

2009-08-15

6.ナンで…

 

『ナンで…?』

 

タケルは、その姿を見て思わずそうつぶやいた。

 

しばらくして目の前に現れた キララ、つまりウェンディのそばに老人…

 

しかも、その老人は眠っているニックを抱えていた。

 

ウェンディは、子供達を呼び寄せ、老人を紹介した。

 

「このおじいさんが、アタシ達を地球へ連れて行ってくれるンだ。

 

名前は何て言ったっけ?」

 

「ん? 何でもいいが、アースにしとこうか。

 

お前さん達を地球まで連れて行けばいいんだろ? 

 

まぁ、キャプテンと呼んでくれたら、うれしいかのぅ」

 

「じゃぁ、アース・キャプテンだ。

 

みんなもアース・キャプテンの言うこと聞くんだよ!

 

ルール違反したら、すぐに秘密の空間に閉じ込めるからね」

 

タケル以外の子供達は、秘密の空間と聞いただけで、サーッと顔色を変えた。

 

「ウェンディ、ちゃんと言うこと聞くから、秘密の空間には閉じ込めないで!

 

あそこって、死ぬより怖いンだもン…」

 

小さい子が叫んだ。

 

「わかってるなら、いいさ。

 

ニックは、まだ寝てた方がいいだろ。

 

起きるとちょっと面倒かもしれないからね。」

 

タケルはまったく理解できなかった。

 

「何でニックは戻って来たンだ?

 

コイツは、一緒に行かないって言ってたンだ。

 

キララ、お前が連れ戻したのか?

 

…何でだよ!?」

 

「アンタには、わからなくていいンだよ。アタシは、ニックを助けたかっただけなンだ。

 

それより、アンタもアタシの言うこと聞かなかったら、秘密の空間に閉じ込めるからね!」

 

タケルには、秘密の空間がどんな所かわからなかったが、また宇宙ステーションの狭いボックスの中に閉じ込められるのかと思って、よけいなことは言わないことにした。

 

「アース・キャプテン、ニックをカプセルの中に入れたら、この船の修理が必要な所をチェックしてくれる?

 

急がないと、連中がまた来るンだ!」

 

アース・キャプテンと呼ばれた老人は、照れくさそうに鼻をいじりながら、ニックを抱えたまま、カプセルのある場所へと移動した。

 

子供達は、すぐに入り口で見張りをする子、 出発の準備を手伝う子に分かれて、それぞれ行動を始めた。

 

また、ひとり取り残されたタケルは、イスに座ったまま考え込んでしまった。

 

『ホントに、こいつら地球に行くつもりなのか? こんな勝手なことって許されるのか?

 

MFiだったら、すぐにパトロール隊が来て、あやしいって思うさ。

 

だって、子供ばっかりじゃないか。

 

あのじいさんだって、変だよ。

 

こんな子供ばっかりなのに、何にも言わないじゃないか。

 

何かたくらんでるンだ、きっと。

 

あ~オレって、よっぽど妙な運命がついて回ってるのかなぁ。

 

キラシャも変わった子だったけど、キララは悪魔だよ…

 

もし、このまま宇宙へ飛び出して行ったら、どうなるンだろ?

 

ホントに地球へ行っちゃうのか? 

 

でも…』

 

どうしたら良いのか途方にくれるタケルだったが、キララの魔術は続いていて、身体が思うように動かない。Mフォンはそばにあるのに、助けを求めることもできなかった。

 

「ウェンディ! また、奴らだ! 

 

なンか、おっかない武器を持ってるみたい。

 

こっちを狙ってる。どうしよう!?」

 

「わかった。あれじゃ、この入り口が吹っ飛びそうだ。

 

仕方ないから、少々故障があっても、出てから直そう。

 

キャプテン、出発してくれ!

 

みんなも位置について、ベルトで身体を固定するンだよ。」

 

入り口にいた子供達も、あわてて自分のイスに戻り、ベルトを締めた。

 

「忘れてた…タケル!

 

アンタもベルトしないと、ケガするよ。身体は自由にしてやるから、さっさとしな!」

 

タケルはムッとしながらも、周りの緊迫感と、キララの勢いに逆らえず、手が動くのを確認して、イスのベルトを探して締めた。

 

アース・キャプテンも、キララの命令口調に苦笑いしながら、操縦席に座り、ベルトを締めると、手慣れた様子でエンジンを始動し、管制塔と連絡を取り始めた。

 

管制塔からは、出発の理由を聞かれたようだが、アース・キャプテンがキララに目配せしながら、ゲーム設備の交換のためと答えると、すぐに許可が下りた。

 

出発方向の信号の色が変わるのを待って、ゆっくりと子供達の乗った宇宙船が動き出した。

 

タケルは、思わぬ展開に興奮していた。

 

『真実って…!?

 

何が真実だって言うンだ…。何を信じりゃ、いいンだ?

 

こいつらだって、家族の所に帰るのが本当だろ? 

 

いつまでキララの魔術にかかってりゃ、気が済むンだ。

 

そうだ、ヒロだ。ヒロにこのことを知らせなきゃ…』

 

タケルは、キララにわからないように、メールを打った。


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