未来の少女 キラシャの恋の物語

みなさんはどんな未来を創造しますか?

第15章 真実って? ⑤

2021-05-15 20:34:23 | 未来記

2009-07-11

5.闘いの始まり

 

タケルは、自分のMフォンがないことに気付いて、ニックに向かって叫んだ。

 

「オイ! オレのMフォン、どこへやったんだ!」

 

「バーカ! オマエのMフォンから足がついたら、警察が動くだろう。ホスピタルにおいて来たンダヨ!」

 

「あれがなきゃ、ヒロと話ができないじゃンか! アイツと話す必要がないなら、オレがここにいる必要もないだろ!」

 

「そうさ。オマエはオレの代わりにホスピタルへ戻れ! シーナは、オレが地球まで連れてってやる。オレは、そのあとで他の星を目指すンだ。

 

いいだろ? シーナ…」

 

シーナ、つまりウェンディは、あきれた顔をしてニックに言った。

 

「ニック。アンタにできるンなら、とっくに出発してるよ。アンタには、足りないモノがあるンだ…」

 

「何が足りないってンダヨ! 自信ならあるぜ、ゲームで鍛えたからな」

 

「つまんない自信なンかより、地球に行きたいって気持ちが必要なンだ。アンタには、それがない。だからタケルみたいな子を探してたンだ」

 

タケルは、それを否定するように、キララ…シーナでもありウェンディに向かって叫んだ。

 

「だから、言ったろ? オレは、まだ地球に帰るかどうか決めてないンだ。だいたい、子供だけで、どうやって地球へ行くって言うンだ。

 

無茶だよ! 冗談じゃない! 」

 

しかし、ウェンディは平然と言った。

 

「もう決めたことなンだ。準備ができ次第、出発するよ。早くしないと、奴らは入り口を爆発させて、この中に入ってくるつもりだ。アタシは、そうはさせないけどね…」

 

ウェンディは、子供達にそれぞれの役割を伝えると、すぐに4人の子供と一緒に消えた。

 

残された3人の子供達は、戦闘服に着替えると、ショック銃を持ち、入り口に作ってある窓から外を監視した。

 

しばらくすると、外の方で怒鳴り声が聞こえた。

 

「中にいるのは、わかってるンだ! オレ達の言うこと聞かないと、痛い目に遭うぞ! 助けて欲しかったら、おとなしく入り口を開けろ! 」

 

それに答えるように、子供の1人が叫んだ。

 

「オレ達は、銃を持ってるンだ! 近づいたら、遠慮なしに発砲するぞ!

 

いいか、ホンモノだぞ!」

 

「そんなこと、本気にするとでも思っているのか! ガキの癖に、生意気な口聞きやがって!

 

 大人をからかうンじゃないぞ! 本気で痛い目に遭わせてやるからな!」

 

テーブルに残されたニックとタケルは、何が始まるンだろうと、入り口の子供達を見守っていた。

 

子供達の頭の動きから、外の男達が近づいているのがわかる。

 

緊張した空気の中で、3人の子供は、目配せして銃の発射準備を整えた。

 

「よーい、発射!」

 

外でううっと、男のうめき声が聞こえた。

 

「この野郎! ナメたことしやがって! 殺されてぇのか? 

 

銃を捨てないと、宇宙船ごと爆発するぞ!」

 

しかし、子供達はひるまなかった。男達めがけて、銃を乱射した。何人かが、悲鳴をあげながら、ショック状態に陥って、倒れたようだ。

 

残った男達も、倒れた仲間を引きずって、銃の当たらない場所へと逃げて行ったらしい。

 

「ウェンディが帰って来るまで、絶対入り口に近づけないようにしなきゃ」

 

「でも、マジでビビッたよ。ゲームは慣れてるけど、ホンモノだもの。

 

やらなきゃ、やられるってわかっても、やっぱり怖いよな」

 

「そうだよな。…戦争って、こんなモンなのかな。

 

自分が殺されないために、相手を殺さなきゃいけないンだ…。

 

オレ、コズミック防衛軍に入りたかったンだ…」

 

子供達の会話を聞きながら、タケルは映画かゲームの仮想世界へ、入り込んでしまったように感じた。

 

しかも、これは夢ではなさそうだ。

 

ウェンディと他の子供達が、手にいっぱいモノを持って現れた。

 

「買い物は、これでおしまいだ。あとは出発準備だけだね。みんな、ご苦労さン。荷物をしまったらちょっと休憩して、見張りを交代してやりな」

 

荷物を抱えた子供達は、早速片付けに取り掛かった。

 

「オイ、タケル! アンタにプレゼントダヨ!」

 

ウェンディは、タケルのMフォンを見せた。

 

「ナンだ? ここがバレても、いいのかよ! もういい、わかった。オレは降りるぜ! シーナには、オレは必要なかったってことだな。あばよ!」

 

ニックは不機嫌そうに立ち上がった。

 

入り口の子供に向かって「どきな!」と大声で追い散らし、そのまま宇宙船から出て行った。

 

タケルのMフォンから、着信音が聞こえた。タケルには、音は聞こえづらくなっているが、大好きな宇宙戦艦ヤマトのテーマ曲だ。

 

ウェンディからMフォンを投げ渡され、タケルはあわててそれを受け取った。

 

「えっ? ひょっとして…」

 

タケルは、キラシャからのメールにも、この着信音を設定していた。

 

『タケル、元気? こっちもみんな元気だよ。

 

あたしもみんなも無事に進級できたみたい。

 

いつ、帰って来れるの?

 

タケル、早く会いたいよ! 

 

返事待ってるね…』

 

キラシャの笑顔が空中に浮かんで消えた。タケルは、もっと長く見ていたいと思った。

 

「会いたいだろ?

 

タケル、アンタは地球に帰るようになってンだ。

 

必ずここへ~帰ってくると~♪ ってね…」

 

「でもさ…」

 

それでも、タケルは不安を抱えていた。

 

「何とかなるって…。アタシだって、支えてやるよ。

 

アンタの好きなキラシャには、かなわないけどさ」

 

「でも、どうやって地球へ…」

 

「大丈夫だよ。操縦士やってくれる奴がいるンだ。

 

アンタは信じないだろうけど、アタシはアイツ等とは違うンだ。

 

この子達を悪い奴から守るためなンだ! 

 

じゃぁ、その操縦士を連れてくるよ…」

 

ウェンディは、そう言うとすぐに消えてしまった。


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